船上パーティ⑮
六王への挨拶も残すところリリウッドさんのみとなり、界王陣営が固まっている場所……もといリリウッドさんがいる場所にやってきた。なぜ言い直したのかというと、リリウッドさんとリーリエさん以外は他の場所に行っているのか見当たらなかったからだ。
「こんにちは、リリウッドさん、リーリエさん。今日は来てくださってありがとうございます」
『こんにちは、カイトさん。こちらこそ、招待していただきありがとうございます』
「リリウッド様と同じ言葉を重ねる形になりますが、招待していただきありがとうございます」
俺が訪れるとリリウッドさんのリーリエさんが優しい微笑みを浮かべて挨拶を返してくれる。リリウッドさんはあまり飲食はせずに水だけという話だったので、給仕の方にはリリウッドさんの元には高級な水を届けてもらえるように伝えてあり、それが功を奏したのかリリウッドさんはワイン等ではなく水を飲んでいる様子だった。
「さすがに、開始から結構経ちましたし他の方はそれぞれ楽しんでいる感じですかね?」
『ええ、そうですね。カミリアとロズミエルはステージ前で美術品の紹介に集中しているようですし、ティルタニア、エリアル、ブロッサムの三人は食事に行きました』
「異世界の料理と聞いてブロッサムが興味津々でして、それにふたりが付いて行った形ですね」
「ああ、なるほど、ブロッサムさん異世界の文化が好きですしね」
確かに香織さんの協力を得たことで、食事コーナーの品は和食が多い。寿司などもあるし、結構和のテイストである……ちなみに寿司に関しては、香織さん曰く一部の地域では生魚を食べないところもあるみたいなので、通常の寿司と火を通した炙り系の寿司を用意して注意書きをしている。
この辺りはさすが友好都市で飲食店を経営しているだけあって、香織さんのアドバイスはかなり助かった。また今度改めてお礼がしたいものだが、どうしたものか……肌の艶がどうとか言っていたので、そっちの方向で力になれればとも思うが、スキンケア関連の話題を俺から振るのは下世話な気もして迷っている。
「……あれ? ジュティアさんは?」
『ジュティアは知り合いに挨拶に行きましたよ。彼女は社交的で他の六王幹部とも仲がいいので……そのあとでアインの元に向かうので、かなり長く話し込むかもしれないとも言っていましたね』
「どこから情報を得たのか、今回のパーティでオリジナルブレンドの茶葉が配られるという話を聞いてみたいで、それを気にしている様子でしたね。実際のところは……ああ、あるのですね。なるほど、イルネスという方とネピュラという方が共同で用意したと……ふむ、なるほど、ジュティアが気に入っている茶葉の製作者でもあるのですね」
こちらの表層意識を読み取って質問の答えを得て頷くリーリエさんを見て、俺は思わず苦笑を浮かべる。なんというか、前にも思ったがリーリエさんとの会話は細かな説明をしなくても読み取ってもらえるので楽だし誤解とかもないので助かる思いだ。
「……普通は心を読まれるのは嫌がると思うのですが……相も変わらず変わった感性の方ですね」
『花の色が濃くなっていますよ、リーリエ』
「……これは、お恥ずかしい。どうしても気分が高揚すると、そうなってしまいますね」
どうやらリーリエさんにとって心を読んだとしても嫌がることのない俺の態度は好意的に映るようで、少し気恥ずかし気にではあるが、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
まぁ、実際本当に心を読まれることに関しては気にしていない。というか、普段から常時シロさんに心を読まれているようなものなので、もはやいまさらといった感じである。
『カイトさんはこれからどちらに行かれる予定ですか?』
「この後は、人界の国王たちに挨拶をした後は、目に付いた人に挨拶をしていく感じになりそうです。実際挨拶してすぐ終わりというわけではなく、ある程度雑談も入るので、本当に挨拶回りしてるだけで終わりそうな感じですね」
「この規模のパーティの主催となると、どうしてもそうなってしまいますね。大変かとは思いますが、合間合間に少しでも休憩を入れつつ、焦らず回ってくださいね」
「ありがとうございます」
そのまま少しリリウッドさんとリーリエさんと雑談をしたのだが、優しく穏やかなふたりとの会話は心休まる感じで、なんだかんだでかなりリラックスできた気がした。
シリアス先輩「さすが、物語序盤で早々にプライバシーを失った男だ。面構えが違う」
???「実際、カイトさんってこういう面でもガチで強メンタルですよねぇ」