船上パーティ⑭
六王に順に挨拶をしている間に余興が始まったみたいで、ステージ上では順にアリスから提供された秘蔵の品々が公開されている。
その光景を横目に見つつ、俺は次はマグナウェルさんの元に挨拶に来ていた。マグナウェルさんは例の特殊な分体で来ており、シックなスーツ風の礼服を着こなす老紳士といった風貌でなんとも渋カッコいい。
「こんにちは、マグナウェルさん、フレアさん、エインガナさん、ファフニルさん、今回は来ていただいてありがとうございます」
「うむ。わざわざ足を運ばせてすまんな、ミヤマカイト。こちらこそ、此度の招待には感謝している。会場の雰囲気も実に良い」
「そういってもらえるとありがたいです。けど、グランディレアスさんが来れるような環境じゃなかったのは、申し訳ないです」
「いや、こればかりは仕方あるまい。以前のワシと同じく、グランディレアスも体躯の問題がある。今回は間に合わなんだが、そのうちワシの方でシャルティアに交渉してワシのものと同じような分体を譲ってもらえるように頼んでみるつもりじゃ」
今回は残念ながらグランディレアスさんは不参加である。というか、サイズが大きすぎて人化できないグランディレアスさんは、流石にこの巨大魔導船でも乗船は不可能であり参加が事実上不可能という感じだ。
「なるほど、それならまた次の機会があれば参加してもらえるのを楽しみにしていますね」
「ああ、グランディレアスにもそう伝えておこう」
たぶんだけど、マグナウェルさんの分体を作ったのはマキナさんだろう。白神祭の時点では、マキナさんに関する記憶は夢の中だけしか維持できていなかったので気付かなかったが、夢の記憶を持ち越せるようになったいまなら、制作者がマキナさんであるということにはすぐ気づいた。
なので、あとでさりげなく俺の方からもアリス伝いにそういった依頼が来たら分体を作ってもらえるようにお願いしておくつもりだ。
次にまたこういったパーティを企画するかどうかはわからないが、その時にはぜひグランディレアスさんにも参加してもらいたいものだ。
「戦友は疲れてはいないか? あちこち回っているのだろう?」
「大丈夫ですよ。まだ始まったばかりで、それほど多くは回ってませんしね。あっ、それとフレアさん、そのドレス素敵ですね。赤とオレンジのコントラストが炎みたいで、フレアさんのイメージに合ってる気がします」
「あまりこういった格好には慣れぬ部分もあるが、戦友がそう言ってくれるのであればくすぐったくも嬉しいな。戦友も礼服がよく似合っていて、凛々しさが際立っているように感じるぞ」
「ありがとうございます」
マグナウェルさんとの挨拶がひと段落したのを確認してから、フレアさんが穏やかに微笑みながら声をかけてきてくれた。
フレアさんは赤とオレンジのドレスを着ており、普段の番長っぽい雰囲気とはまた違った魅力があった。
そしてそのまま、その場にいるエインガナさんとファフニルさんとも簡単に言葉を交わす。
「エインガナさん、今回は会場の件でいろいろありがとうございました」
「いえ、魔界の海は私の領分ですからね。お役に立てたようなら嬉しいですよ。ところで、少し疑問なのですが、いま始まっている余興には……音楽関連の催しもあるのでしょうか?」
「ええ、アリス……幻王が演奏してくれるって話になってます」
「なんとっ、あのシャルティア様が……それは、なんとしても最前列で鑑賞しなければなりませんね」
エインガナさんはハーモニックシンフォニーの件で分かっているが、かなりの音楽好きであり、アリスの演奏はかなり楽しみな様子だった。
まぁ、実際にアリスの演奏の腕はとんでもないし、エインガナさんの期待にも応えてくれると思う。
「……そういえば音楽で思い出しましたが、ファフニルさん……前、バンドみたいなことやってませんでした?」
「お恥ずかしながら、ニーズベルトとエインガナに流されてあんな状態になってしまいました。しかも、下手に人気も出てしまったので、いまさら辞めるというのも難しく……今後も時折活動することになりそうです」
「な、なるほど、お疲れ様です。俺も少し聞きましたがかなりカッコよかったと思います。大変だとは思いますが、頑張ってください」
「ええ、ありがとうございます」
なんとなくそんな気はしていたが、やっぱりファフニルさんは巻き込まれた側だったか……まぁ、根がかなり真面目な方なので、一度関わったことには責任を持つタイプというか、今後もバンド活動は続けていくみたいである。
シリアス先輩「というか、流れるようにドレス褒める辺り、すっかりプレイボーイじゃないか……さすが恋愛経験が違う」
???「いや、まぁ、実際恋人も複数いるわけですし、わた……アリスちゃんと比べて、恋愛つよつよ勢なのは間違いないですね」
シリアス先輩「いや、そこと比較したら大抵のやつは恋愛強者だと思う……」