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船上パーティ⑬



 船上パーティのステージのすぐ前あたりでは、招待客のひとりである香織がなんとも落ち着きなく視線を動かしていた。


(どうしよう、お偉いさんって感じの雰囲気の人を避けてたら、いつの間にかステージ前まで来ちゃった。ここ、目立つよね? 早めに移動しないと……うぅ、茜さんが商会関連でお世話になった人に挨拶に行くとかで、一時別れることになっちゃって不安で仕方ないよ。重さんやハンナさんも見つからないし……い、いま、凄い人に声をかけられたと思うと……うぅ、お腹痛い)


 少し前まで行動を共にしていた茜は、商会長ということもあって香織に比べればある程度参加者の中にも知り合いがおり、クロムエイナやセーディッチ魔法具商会の関係者などの取引のある知り合いもあるため、そちらに軽く挨拶をして回ってくるとのことで香織とは別行動になっていた。


 残された香織は、右を見ても左を見ても明らかに立場の高そうな人が多い会場でどうしていいか分からず、右往左往している形だった。

 いちおうクリスなどの知り合いのもとを訪ねるという手もあるが、皇帝であるクリスは確実に偉い方と挨拶や会話をしているだろうし、そこを訪れるのは気が引けた。そのため重信やハンナといった一般人の知り合いを探していたのだが、広い会場内ではなかなか見つけることができない状態だった。


 するとそのタイミングでステージ上にキャラウェイが上がり、余興についての案内を始めた。


(あっ、余興とかあるんだ。じゃ、じゃあ、丁度いいかな? 茜さんが戻るまで余興とか見ておけば……幸いこの位置ならステージ上がよく見え……る……し?)


 余興が始まることで一先ずこの言いようのない落ち着かない状態からは脱せると心の中で安堵した香織だったが、直後にすぐ傍に気配を感じて振り向くと……そこには、いつの間にかロズミエルが現れており、鋭い眼光でステージ上を見ていた。


(あばばばば、ば、薔薇姫ロズミエル様!? な、なな、なんで!? いつの間に……う、うわぁ、近くで見ると滅茶苦茶綺麗……さすが孤高の薔薇って言われるだけあって、凄い凛としたカッコいい大人の女性の雰囲気……で、でも……怖ぁ……も、もの凄い眼光でステージを見てるよ)


 唐突に表れたロズミエルに香織が内心で慌てていると、ロズミエルも近くにいる香織に気付いたのか一度顔を向けて……鋭い眼光で睨みつけてきた。

 もちろん、ロズミエルは香織を睨んでいるわけではなく、すぐ近くに初対面の相手が居たことで緊張して顔が強張っているだけなのだが、香織がそれを知る術はない。


(ひぃぃ、に、睨まれてる……あっ、こ、ここ、邪魔だったかな!? ど、どけないと……)


 ロズミエルの鋭い目に完全に気圧された香織は、大量の汗を流しながら軽く会釈をしてそのままゆっくりと後退していった。

 失礼があってはいけないとロズミエルの方を見たまま、後ろ歩きの要領でその場から離れていくが……それはすなわち後ろを見れていないという状態である。

 案の定というべきか、ロズミエルからある程度離れた場所で香織は誰かに背中からぶつかってしまった。


「あっ、ご、ごめんなさい大丈夫で……す……あっ、あひぃ……」

「……」


 謝罪しながら振り返ると、そこには礼服を着た牛頭の怪物……ミノタウロスと思われる存在が居て、そのあまりの風貌に香織の顔から一気に血の気が引く。


「いえ、お嬢さんの方こそお怪我はありませんか?」

「あ? え? だ、大丈夫です」


 そんな香織に対してミノタウロス……十魔モロクの補佐を務める魔族は、丁寧な口調で声をかける。


(え? 声……女性? 始めてみるけどなんて種族の人なんだろうか? ……と、とりあえず見た目ほど怖い人じゃないっぽくてよかった)


 少しだけ安堵した香織は、改めてミノタウロスに謝罪をした後でその場から早足に離れていった。


(うぅ、誰かぁ、知り合い……知り合いきてぇ……)


 連続してトラブルがあったことで不安な気持ちがかなり大きくなってきた香織だったが、そこで彼女にとって救いとなる声が聞こえてきた。


「ああ、ここにいましたかミズハラカオリ。申し訳ないですが、向こうの料理に関して初めてで食べ方の分からないものがあって、助言を貰えればと……」

「オ、オリビア様ぁ……」

「うん? どうしたのですか?」

「い、いえ、ようやく知り合いに会えてホッとしました。あっ、えっと料理に関してですね。じゃあ、教えるので一緒に行きましょうか」

「手間をかけて申し訳ありません。助かります」


 オリビアは香織にとっては普段から高頻度で店を訪れる常連であり、最初はともかくいまとなってはよく知る相手である。

 そして立場的な面でもオリビアは神教のトップであり友好都市の代表……極めて地位の高い人物であり、オリビアと一緒にいれば不意に権力者と遭遇してもある程度は安心というのもあり、香織は心の底から安堵した表情を浮かべていた。


「……そういえば、オリビア様。快人くんをデートに誘う計画って進んでるんですか?」

「進展自体はしていますが、まだプランが固まりきっていません。現状では計画書が『186ページ』ほどしかない状態で、まだまだ未完成と言ってよく……」

「いやいや!? 多い、多いですって!? デートするのに、なんで186ページの計画書ができるんですか……というか、それを実行するとしたら何日かかるんですか……」

「現状のプランでは15日ですね」

「……それはもう、デートって呼ぶべきじゃない気が……」


 オリビアと会えたことで肩の力が抜けて調子を取り戻した香織は、なんだかんだで楽し気にオリビアと話しながら移動していった。




シリアス先輩「⑬……だと!?」

???「執筆用のパソコン変えて、⑫以上のやつも使えるようになったみたいです」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました!アリスさんが描いた絵を公表する内容であると同時にまだマキナさんと一緒にいた時の世界での様子の一部を描いたものを見せる! アリスさんとマキナさんのルーツを少…
[一言] ⑭! まだまったりパーティー
2024/05/17 22:43 退会済み
管理
[良い点] 作者が進化しよった!?これからはデート回が20とか行くの期待してええんか!? [一言] オリビアが癒しになってるの凄いわ。帰ってきた茜の方が胃が痛くなりそうな...
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