船上パーティ③
さてパーティの開始に先立ち、キャラウェイが簡単な説明と案内を行っている。というのも、今回のパーティの料理は俺の出身ということもあって異世界料理……というか日本食が中心であり、正直言ってあまり立食形式に適しているとは言えない料理も多い。
なので、会場の一部に座って食べられるテーブルも用意しているので、そちらで食事をしつつ歓談というのも問題ないという形式にしている。
あとは事前に招待状に記載はしているが、基本的に俺が挨拶に伺うので俺の元に集まったりはしないように的な注意、そして余興などの予定時刻の連絡を終え、いよいよ俺が挨拶を行うことになった。
『今回は突然の思いつきにも拘らず、俺が主催したパーティに参加してくださりありがとうございます』
というわけでキャラウェイに促される形でステージに上がり、拡声魔法具を使って挨拶を行う。参加者はほぼ知り合いなのである程度気は楽だが、それでもこれだけの人数の前で挨拶というのはなかなか緊張する。
まぁ、挨拶の文面は俺が考えたものをアニマとかイルネスさんが修正してくれているので、噛んだりしなければ大丈夫だとは思う。
『……というわけで、本日は時間の許す限り楽しんでいただけたら幸いです。簡単ですがこれで挨拶を終わり、開始の合図として乾杯をさせていただきます』
必ずしもパーティで乾杯をする必要はないのだが、今回は俺が主催ということもあって……なんか、俺が想像する立食パーティ像を元に企画が進んでいるので、最初に乾杯も行う。
『今回の乾杯に合図に関しては……本人のたっての希望ということもあり、この世界の神であるシロさんに行ってもらうことになりました。というわけで、シロさん、どうぞ』
そう、実は今回の乾杯の合図は俺ではない。いや、最初は俺がやる予定だったのだが、シロさんがやりたがったのでお願いすることにした。ちなみになぜやりたがったのかという理由は、その後にクロに対して「クロは会場である船を提供しましたが、私は快人さんの手伝いをして乾杯の合図をするので勝負は互角です」と言っていた言葉から察することができた。
なおクロの方は「……いや、互角もなにも……別になにも勝負してないんだけど……」と、至極真っ当なことを言っていたのが印象的だった。
まぁ、ともあれシロさんが乾杯をするとなれば文句を言う人なんていないので、ある意味では全く問題ないともいえる。
そして俺に促されてステージ上にきたシロさんは、グラスを軽く掲げ……。
『では、乾杯』
『待ってください、早い早い!?』
相変わらずの天然を発揮して、他の参加者がグラスを構える間もなく前置きゼロで乾杯の合図をした。何が恐ろしいって、仮に俺が文句を言わない場合だとシロさんの乾杯の合図は問題ないどころか「反応できなかったやつらが不敬」となっても可笑しくないところである。
まぁ、シロさんならなんか天然かますだろうとは予想していたので、その辺は俺がフォローするしかない。
『……失礼しました。では皆さんグラスを手に持ってください。そして、シロさんの合図に続いて乾杯の発声をしていただけたらと思います』
俺がそう告げて仕切りなおす形になり、改めてグラスを掲げてシロさんの言葉と共に乾杯が行われてパーティが開始した。
あとは皆思い思いに過ごしてもらえれば大丈夫なのだが……目下気になるのは、ステージ上から降りる気配のないシロさんである。
「……シロさん? 乾杯の合図は終わりましたよ?」
「はい。ですが、快人さんは最初に私の元に挨拶に来るのですよね? 私が、一番最初……私が一番というわけです」
「えっと、ええ、そうですね」
「では別にいまから一緒に居てもいいのでは?」
「……まぁ……別にダメではないですが……じゃ、とりあえずクロノアさんたちのところに一緒に行きましょうか」
「分かりました」
シロさんの言い分は分かった。やたら一番を強調していたが、まぁ、その辺も気にしないことにする。だが、このままステージ上でシロさんと歓談というわけにはいかないので、とりあえず最高神の三人のいる場所に向かうことにした。
「ところで、快人さん」
「はい?」
「私への挨拶は何番目ですか?」
「え? いや、だから最初です」
「ふむ、つまり順番で言うと私が?」
「……一番ですね」
「なるほど、そうですか、そうですか」
俺の言葉を聞いたシロさんはなんというか大変満足そうに頷いていた。お願いだから、あとでクロに変なマウントを取りにいかないでほしい……喧嘩が始まりそうなので……。
シリアス先輩「まぁ、確かに事実上シロに文句を言えるのは、会場内でクロか快人ぐらい……マキナもギリ行けるか?」
マキナ「立場的にはいけるけど、行きたくはない。私はシャローヴァナルに若干トラウマがあるから……愛しい我が子絡み以外で対立的なことしたくない、怖い」
シリアス先輩「……新築パーティの時は超下らない理由で喧嘩してたのに……いや、まぁ、アレは快人絡みだけど……」