船上パーティ①
さて、いよいよパーティ開始時間が近付いてきた。とはいえ、基本的な進行はキャラウェイがスタッフの統括はイルネスさんとアニマが、その他の細かな事態にはイータとシータが対応する体制になっているし、世界メイド協会から派遣された優秀なメイドも多いので……正直言って俺がやることはほぼない。
最初の方に挨拶と、乾杯の音頭ぐらいで、あとはあちこちを回って知り合いに挨拶をしたり話をしたりする感じである。
ちなみに今回事前に招待状の方に、俺に対する挨拶に関しては不要……というか基本的に行わないようにと注意書きを加えることになった。
というのも今回の招待客はほぼ俺の知り合いであり、俺の元に集中しては大変だろうと考えたアニマが加えたもので、俺があちこちを回る形になるので基本的に俺が行くまで待っておいてほしいという感じの内容を、かなり遠回しに書いておいたので、基本的には俺の元にいきなり人が集まるということはないはずだ。
ちなみに「ほぼ」といったのは、一部の人は護衛や補佐などの同行者を連れてきているので、その中には初対面の人も居るからだ。
あと、俺が回る順番に関してもある程度は決まっている。まず最初は必ずシロさんの元へとアニマには念押しされている。
というのも、参加者をランク付けした場合、シロさんとマキナさんが最も位の高い存在……まぁ、どちらも世界創造の神なので当然だが、会場内で一番偉いのはこのふたりである。
シロさんとマキナさんに関しては基本同格の扱いではあるが、ここはシロさんの世界なのでシロさんの方が若干優先ということでまずはシロさんの元に向かう。
基本的に立場の高い順に回る形にはなるのだが、シロさん、マキナさん、六王及び最高神及び三国王……優先して回るべきはこの辺りであり、その先は比較的自由に目に付いた相手のところに向かえばいいという話なのでそうさせてもらうことにする。
せっかく参加してくれているので招待客全員と一度は会話をしたいとは思っているので、ひとりにかけられる時間はそれほど多くはないので、時間は意識して回らないといけないだろう。
「ご主人様、会場の準備は問題ありません。5分後に入り口を開けて入場可能にします」
「うん。俺は後から行く形でいいんだよね?」
「ええ、ご主人様は招待客が会場に入ってから舞台裏のドアから入っていただく形になります。先に入っておくのも問題はありませんが、壇上に出るのは招待客が揃ってからでお願いします」
「わかった」
パーティが行われる会場にはステージというか壇になっている場所があり、最初の挨拶やアリスの余興などはそちらで行うことになる。
知り合いばかりなので、ある程度は大丈夫とは言え……それでも壇上であいさつするのは、やっぱ結構緊張するなぁ……。
魔導船のパーティ会場となるホールには、参加者が続々と集まり始めており、早めに会場に来ていたリリアは集まってくる人たちを見ながら溜息を吐いた。
「……なんというか、こうして改めて見ると、カイトさんの交流の凄まじさを再確認しますね」
「創造神様に最高神様全員、六王様に幹部の大半……勇者祭でもここまでの面子は集まりませんね」
「なにが恐ろしいって、ミヤマ様はほんの1~2年でこの面子と知り合って、パーティに喜んで参加してくれるぐらいにまで気に入られてるんですよね。いやはや、不詳ルナマリア、戦慄を禁じえません」
リリアの呟きに同行していたジークリンデとルナマリアも同意する。これに近い面子が集まるといえば、真っ先に思い浮かぶのは勇者祭ではあるが、勇者祭は六王幹部の参加は各陣営に付き1~2人程度王に付きそう形で参加するだけであり、最高神に関してもクロノアがシャローヴァナルの補佐として赴くぐらいで、フェイトやライフが会場に現れるのは稀だ。
「まぁ、それでも今回私は特に関係ないので、気は楽ではありますけどね」
「……リリ、親友として忠告します。あまり楽観視しないほうがいいかと……」
「え? ジーク? いえ、流石に今回はカイトさんの方に集中するでしょうし……貴族の参加も少ないので、私はそれほどやることは……」
「私もジークに同意です。リリがそうやって楽観視するときは、だいたいなにか起こるんですよ。今回は私たちも傍にいるんですから、巻き込まないでいただきたいですね」
「ルナまで!?」
確かにリリアの言い分は筋は通っている。あくまでリリアは招待客のひとりであり、本来であれば公爵として立場の高い存在だが、ここに集まった面子の中ではむしろ立場的には低い方なので、挨拶が集中するという可能性も低い……というのが本人の予想である。
もちろん、ジークリンデやルナマリアが危惧している通り、パーティ開始数分でリリアの余裕の表情は崩れることになるのだった。
シリアス先輩「……早速ボディブロー決められそうなリリア」