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魔導船の試運転


 魔界の大海原を巨大な魔導船が進む、デッキで柵にもたれかかる俺の頬を風が撫で、心地よさに少し目を細める。海を進む船の上とはなんとも絵になる場所であり、こうしてたたずむ俺も少しはカッコよく見えるのでは? とか、そんな風に考えてしまう……まぁ、気のせいだろうが……。


 さて、現在は船上パーティの日……ではなく、まだしばらく前だ。ではなぜ魔導船で魔界の海を航行しているのかというと、簡単に言えば試運転である。

 当たり前といえば当たり前ではあるのだが、さすがにぶっつけ本番で海上でパーティというのは難しい。特に今回は人も雇うわけだし、いろいろ連携や連絡等も含めて事前に確認しておくべきことは多い。


 クロからもらった魔導船は、本当に超豪華客船という感じで、サイズは350mオーバーであり、その気になれば5000人以上が乗船できる規模の船で、部屋数も半端じゃない。

 とりあえず招待客には着替えとか休憩とか用で一部屋ずつ貸す予定なので、その辺りのチェックや準備も必要だ。

 そして、そんな試運転の中で俺が現在なにをしているかというの……なにもしていない。


 ……うん。やることが無いのである。派遣されるメイドたちとの打ち合わせや会場の確認はイルネスさんが取り仕切り、客室の確認などはイータとシータ、費用や必要物資、航路の確認などはアニマとキャラウェイ、そして現在乗船はしていないが料理関係は俺の家でネピュラと香織さんを中心としたメンバーが行っている。

 というわけで、特にやれることが無い俺はなんとも言えない気分でデッキに出て、海を見ながらぼーっとしていた。


 仕方ない。仕方ないんだ……メイドたちの指導なんて分野に関われるわけがないし、もろもろの確認作業はアニマたちが忙しく行っており、よくわからない俺が参加しても邪魔になるだけ……こうして暇を潰しているのが、俺にとっては最善なのだ……海がきれいだなぁ。


「……恐れ入ります。ミヤマカイト様、少々お時間をよろしいでしょうか?」

「うぉっ!? グ、グラトニーさん?」

「はい。事前の連絡もなく突然の来訪となり驚かせてしまったことを謝罪いたします」


 唐突に声が聞こえて振り返ると、そこには人形……グラトニーさんの本体を抱いたナターシャさんがいつの間にか現れており、例によっていつも通りグラトニーさんの言葉をナターシャさんが喋って伝えてくれる。

 まぁ、それはそれとして、どうしたんだろうか?


「いえ、大丈夫ですよ。それより、なにか俺に用事ですか?」

「はっ、差し出がましいお話かと思うのですが、ミヤマカイト様がパーティを開催するにあたり参加者の移動面などで、私にお手伝いをさせていただけたらと思いまして、声をかけさせていただきました」

「参加者の移動……っていうと、転移魔法で協力してくれるってことですか?」

「はい。シャルティア様より伺ったのですが、現状の予定では船が停泊可能な港に近い転移ゲートを利用する予定と聞いています」

「ええ、その予定でしたが……」


 当たり前だが招待客は転移魔法が使える人ばかりではないので、魔界に来るには転移ゲートを利用する想定だった。

 なので、招待状をキーにして転移ゲートで提示することで港付近の転移ゲートに無料で転移できるような感じで、転移ゲートの管理をしているところ……まぁ、アリスの配下なんだけど、そこに手配する予定だった。


「しかし、それではどうしても巨大魔導船が停泊可能な規模の港となる関係上、参加者のランクを考えてもかなりの注目を集めることになってしまうかと推測します。しかし私であれば、船上に参加者を転移させるということもたやすいため、転移ゲート付近に仮の受付を設置し、そこで招待状の確認を行った後、私の転移魔法で船上に移動という方法はいかがでしょうか? それならば、巨大魔導船が海上に出た状態で問題なく、注目を集める心配もないと思うのですが……?」

「な、なるほど、それは確かに物凄く助かるんですが……大丈夫ですか? グラトニーさんの負担になったりしません?」

「いえ、数百人程度の転移であれば欠片も消耗することなどありません。それにこの身にとっては、ミヤマカイト様のお役に立てることこそ至福であります……あと、恐らくですが先々の未来まで見通す慧眼を持つ、偉大なるシャルティア様が私に現状の予定を話したのは、こういった展開になることを予想した上でのことと思いますので、ミヤマカイト様への補助はシャルティア様の意志でもあると推察できます」

「ふむ……」


 確かにアリスならそれぐらいは予想しそうだし、こうしてさりげなく遠回しにフォローしてくれるのも本当にアリスらしい。


「……分かりました。グラトニーさんさえよろしければ、協力してください。アニマたちとも相談する必要があるので、中に入って話しましょう」

「はっ、ご期待に応える働きを約束いたします」


 こうしてグラトニーさんが協力してくれることになり、移動面での心配はなくなって、あとはもう本当に細かな部分を詰めていって本番を待つばかりだ。




???「いや~さすがはできる超絶美少女アリスちゃんのフォローは素敵ですね! こういうさりげなさが、カイトさんの愛をがっちりつかむ秘訣なんでしょうね!!」

シリアス先輩「……恋愛関連はポンコツだけど、本当にそれ以外は超有能なのは事実なんだよなぁ」

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― 新着の感想 ―
[一言]  350mオーバーか……地球にある世界一大きい豪華客船に届くぐらい船を個人で所有するのは、流石。それは使わないと勿体ないね。  まぁ、快人さんの本番での仕事?は招待客の接待みたいな感じで、…
[良い点] 主催者はただ必要になった時に話を聞いて対応を提案するくらいでいいのでは?と思ったカイトくんの現状。凶信者ってだけでかなり有能なグラトニーさんのお手伝いは普通にありがたそう。ゲートでの騒ぎも…
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