船上パーティの招待状⑤
昨日の日付で予約したつもりが、予約日を間違えてました……まぁ、仕方ないので予約投稿分を全て一日後ろにずらすことにします。
快人が送った招待状はもちろん各地へ届き各地に衝撃を与えていた。シンフォニア王国の国王であるライズもその招待状を見ながら呟く。
「……場所は魔界の海上か、人界の三国に配力してくれた形かな? ミヤマくんであれば、友好都市付近の海上であっても使用強化は出たと思うが……」
「確かに問題なく出るでしょうが、友好都市は観光地としても有名ですし、著名な方々が集まるのは少々心配な部分もありますので、魔界の海上にしたのでは?」
船上パーティが行われる場所が魔界の海上であることに思考を巡らせるライズに対し、彼の妻でもありメイド長でもあるベアトリーチェが紅茶を用意しつつ告げる。
今回はベアトリーチェにも快人の知り合いということで招待状が届いているため、予定の打ち合わせなども含めてふたりで話をしている状態だった。
「なるほど、魔界の海はエインガナ様の勢力圏ではあるが、ミヤマくんであれば問題なく許可はでるだろう……ただ、心配なのはミヤマくんもパーティの主催は初めてだろうし、いろいろ気苦労が無いといいが……いくら交友関係が凄くとも、彼自身はまだ若く経験も浅いわけだし変に心労を貯め込まないかは心配だな」
「大丈夫だとは思いますよ。イルネス先生や師匠など、ミヤマカイト様の周りには頼れる相手も多く、彼自身がひとりで頑張ってしまうことをよしとせず協力しようとする人が多いですから……」
「ふふ、なるほど……ミヤマくん自身がひとりで抱え込もうとしても、周りがそうはさせないわけか……羨ましく感じるほど、いい関係だね。それならミヤマくんに関して心配はいらないだろうし、自分の心配をするとしよう」
「そうですね。陛下も、ただパーティを楽しめばいいという立場ではありません。特に昨今は図らずもミヤマカイト様の恩恵を受け、シンフォニア王国はかなり躍進していますからね。いらぬ隙を作らぬように気を付けてください」
淡々と告げるベアトリーチェの言葉に、ライズは苦笑を浮かべて招待状を執務机の引き出し……特殊な魔法が込められ、ライズ以外では開けられない段にしまう。
「……まぁ、ああいう場に出るとラグナ陛下やクリス陛下との差は感じるね。いやはや、私にもアレぐらいの能力があればと思うことはあるね。おっと、こんなことを言っていては君に怒られてしまうかな?」
「弱気になった上での発言であれば叱咤しましたが……別にそうではないのでしょう?」
「ああ、私が国王としての能力で両者に劣るのは揺るぎのない事実だ。だが、王の能力だけで国の優劣が決まるわけではないさ。もう王の能力がイコール国の力であるなら、当の昔にハイドラ王国が人界の頂点になっているだろうさ。無論能力は高いに越したことは無いが、自分に足りない部分は周りを頼ればいい。国王ライズとして負けていようが、シンフォニア王国として勝てばいいと、そんな風には思っているよ」
「そうやって、他者と比較して劣る部分を認めることができるのは……間違いなく貴方の利点でしょうね」
ベアトリーチェは時にはライズを厳しく叱ることもあり、見る人によっては苛烈な性格とも思われているが、必要も無く怒ったりするわけではない。実際にいまのライズの発言を聞いて、どこか優し気な微笑みを浮かべていた。
「まぁ、私の場合はすぐ身近に人界史上最高の天才といっていい存在が居たからね。劣等感との付き合い方は、ある程度人より上手い自負はあるよ」
「……それでも、国王になったばかりの時はずいぶんと問題点も多かったですがね」
「あ、あはは……懐かしいな。その頃には君にほとんど毎日、これでもかというほど叱られていたね」
「私も別に叱りたくて叱ったわけではないのですが……」
「いやはや、面目ない」
苦笑を浮かべるライズに、ベアトリーチェも苦笑を返す。気心知れたもの同士の気安さというか、柔らかな空気が両者の間を流れていた。
「……国王としては及第点ではありますが、もう少し自信は持つべきですね。貴方は私が夫と認めた相手なのですから、しっかり胸を張って堂々としていてください」
「ああ、頑張るよ」
ベアトリーチェの言葉にライズは少し笑みを零したあと、しっかりとした表情で頷く。それを見て、ベアトリーチェもこれならば心配いらないだろうと笑みを零した。
その後も互いに時間の余裕があったため、しばし夫婦水入らずで楽しく会話を楽しんでいた。
シリアス先輩「そういえば夫婦だったこのふたり……」
???「ベアトリーチェさんは、国王になったばかりの頃のライズさんの補佐を務めていたので、そこから親睦を深めて~という感じですね。まぁ、ライズさんはかなり厳しく指導されたみたいですが、それだけ期待もされていたのでしょうね」