船上パーティの招待状④
船上パーティに関して正式な日程なども決まり、招待状も完成したので招待する人たちに送付も完了した。
香織さん主導で料理なども決まり、食材の仕入れなども問題なしということで、ほぼほぼ準備は完了といっていい。
残る問題は当日の給仕の手伝い……世界メイド協会の依頼に関してだ。
「ご主人様、世界メイド協会に人員を依頼するのはよいのですが、やはりアイン殿の説得が難しいのでは?」
「うん。まぁ、そこは悩みどころだったけど……いい対策を思いついたから、その手を使うことにする」
「…‥いい対策、ですか?」
アインさんは前の新築記念パーティの時もしれっと主催側に加わっていたという前科もある。もちろん能力は凄まじく高いのだが、今回はあくまで招待客として来てもらうつもりだ。
ただそれをアインさんに納得させるにはそこそこの労力が必要である。アインさんはああ見えて結構頑固というか、アリスもメイド関連に関しては説得を諦めるレベルである。
俺が根気強く頼めば最終的には折れてくれると思うのだが、それ以上に確実な方法があるので、その手を使うことにした。
魔界にあるクロムエイナの居城では、アインがなんとも言えない表情を浮かべて目の前の居るクロムエイナを見ていた。
「……というわけで、カイトくんが主催するパーティに関して世界メイド協会から人員を雇いたいってことらしいんだ。給金とかの打ち合わせもあるだろうし、できれば早めに……『アイン以外のメイド』を必要な数紹介してあげてね」
「……もちろん、カイト様の依頼とあれば世界メイド協会は全力で支援しますし、実際にメイドアドバイザーでもあるカイト様主催のパーティの給仕をなれば希望者も非常に多いでしょう。で、ですがやはり、その際には指揮をとれる人員も必要で……」
「うんうん。そうだね。たしかに全体を統括する役割の子は必要だね。アイン以外の子で、いい子を見繕っておいてね。もちろん、世界メイド協会は人材も豊富だし、全体の指揮ができる子も居るよね?」
「……うぐっ」
そう、快人がアイン対策として講じた手段はシンプルである。それは、クロムエイナに事情を話してクロムエイナ経由で依頼を伝えてもらうこと……。
メイド関連に関しては変に頑固なところのあるアインだが、基本的にクロムエイナ相手には頭が上がらない。現在もなんとか、自分も手伝いをする方向に出来ないかと考えてはいるが……当然クロムエイナもそれは分かっており、徹底的に潰してきていた。
「アインは今回は招待される側だから、紹介以外は特に準備とかにも加わる必要は無いからね。カイトくんからも、その辺は万全だって聞いてるし心配は無いよ……ね?」
「…‥う、で、ですが……カイト様が初めて主催するパーティ……新築記念パーティもありましたが、あの準備にはカイト様はほとんど関わっていないので、ある意味初めての……」
「うん。そうだね。どこかの困った子たちが頼んでも無いのに手伝い始めてほとんどやっちゃったらしいからね」
「ふぐっ……そ、それは……あの……」
「だからこそ、今回はアインとかの手は借りずにカイトくんたちで準備したいんだってさ……もちろん、アインならそういうカイトくんの思いも汲んで、大人しくできるよね? ね?」
クロムエイナは笑顔である。笑顔ではあるのだが、有無を言わせぬ迫力がある。というよりも、普段からメイド関連だと暴走しがちなアインを叱っているのは当然クロムエイナなので、この状態のクロムエイナに対してアインはほぼ逆らうことはできない。
「……あ、あの、少しだけ……とか」
「駄目」
「た、多少のアドバイスくらいなら……」
「駄目……あんまりワガママを言うようだと、パーティ当日のメイド服を禁止して、ドレス着させるよ?」
「あぅぅ……そ、それだけは……はい。分かりました。今回は、手伝うのは諦めます」
なんとか少しの抵抗を試みるアインだったが、それもアッサリと潰され最終的に人員の紹介以外でパーティの準備には関わらないということに納得した。
シリアス先輩「なるほど、アイン関連だと……確かにそこに抑えてもらうのが一番確実だ」