エイプリルフール番外編・延長したエイプリルフール
前話が去年のと似ていたので一部修正しました
年に一回だけ扉が開くという謎の部屋から、本人すら謎の方法でやってくる自称シリアスの化身ことシリアス先輩……マジで謎だらけだなこの人。
テンションが独特ではあるが、決して悪い人では無いし親しみやすい雰囲気もある……まぁ、俺の知り合いにも変わった人が多いので、時々現れる変わった友人ぐらいの感覚である。
「シリアス先輩、なにか飲みます?」
「コーヒーを頼む」
「分かりました。砂糖やミルクはどうします?」
経緯はともかく現れたシリアス先輩をもてなすことにして、希望通りのコーヒーをマジックボックスから取り出す。少し飲みたいけどわざわざイルネスさんとかシータに頼んで淹れてもらうほどでもないという時のために、コーヒーポットに多めに淹れてもらってマジックボックスに入れてあるので、それを出すことにした。
余談だが、イータはコーヒー……紅茶もだが、調理系は苦手なのでイルネスさん以外に頼む場合はシータである。
マジックボックスのおかげで淹れたての状態なのだが……精神的なものなのか、やっぱりマジックボックスから取り出して飲むより、目の前で淹れてもらったほうが味は美味しいような気がする。
「……やれやれ、ブラックに決まってるだろう。快人、私はシリアスの化身、シリアスオブシリアス、私が選ぶ今年度最大のシリアス部門連覇中の存在……ブラックしかありえないだろう」
ツッコミどころはとても多いが、とりあえず一点『私が選ぶ』って……それ完全に自画自賛してるだけじゃないだろうか!?
「まぁ、ツッコミどころに関しては一旦置いておいて……先輩がシリアスの化身であることと、コーヒーがブラックなことにいったいなんの関係が?」
「おい、馬鹿やめろ、純粋な目でえぐる様な質問をしてくるんじゃない。いいかお前、それは言っちゃ駄目なやつだぞ……中二病のやつを論理的に説き伏せるようなやつだからな……シリアスにはブラック―コーヒー! これはもう、そういうものだって納得しとくんだ!! いいな、それ以上聞いてくるなよ! 答えられないからな!!」
「……はぁ、分かりました。じゃあ、とりあえずブラックコーヒーをどうぞ、茶菓子も甘くないやつがいいですかね……ビターチョコとかもあるので、どうぞ」
「やっ、優しい……ありがとう」
「情緒ジェットコースターですか……」
怒ったかと思えば感極まったような表情でお礼を言ってきたりと、相変わらずテンションの乱高下が凄まじい方である。
「ところで快人、次は誰を狙ってやがる……正直に言え」
「……あの、お願いですから話の筋をちゃんと……脈絡が無さ過ぎて、意味がサッパリなんですか……」
「次は誰を恋人にするつもりだって質問してるんだよ」
「……えっと、すみません。詳細聞いても意味が分かりませんでした……次は誰を恋人に? そんな予定はありませんが……」
「本命はやはり、イルネス辺りか……いや、ルナマリアとかがダークホースとして出てくる可能性も……」
「全然聞いてないよこの人……というか、イルネスさんやルナさんのことも知ってるんですね」
そういえば、アリスと知り合いだったしその辺の情報はしっかり持っているのかもしれない。だが、やはり考えてみても次の恋人に誰を狙ってやがるという質問の意図はサッパリだ。
いや、仮に俺に恋人が新しくできたとして、それがシリアス先輩にどう関係してくるんだろうか?
「……シリアス先輩、聞いてもいいですか? 恋人が増える云々はこの際気にしないこととして、仮に俺が新しく誰かを恋人にしようと考えていたとして、それが先輩にどんな影響が?」
「お前に恋人が増えると、私が砂糖化する頻度が上がるし、純粋にダメージを受ける回数も増えるから重要なんだ。ほら、たとえダメージは避けられなくても、やっぱり心構えというか……不意打ちよりは覚悟決めておいた方がいいってのはあるでしょ? つまり、そういうことだよ」
「……なるほど……俺ちょっといまからフィーア先生に連絡とるので、一緒に行きましょう。大丈夫です、俺が付いてますから!」
「精神異常者を見る目はやめろぉぉぉぉ!?」
だって、しっかり話を聞いたはずなのに「なに言ってんだコイツ?」以外の感想が出てこなかったし、やっぱ心の病的なやつじゃないかと思うのも当然の帰結である。
ただ本当に嘘行ってる感じでは無いし、感応魔法で伝わってくる感情も浮き沈みは激しいものの嘘をついていたりという感じではない。
「……先輩のことを深く考えすぎると頭痛くなってくるので、これ以上はあんま考えないことにして……とりあえず、なにか食べに行きますか? 昼時ですし」
「まっ、まさか私が狙い……舐めるなよ、若造! このシリアス先輩が、そうやすやすと落とされると思うな!! ……それはそうと、鶏肉がいいなスパイシーな感じのやつ。エスニック料理的な……」
「タンドリーチキンとかそんな感じですか?」
「そうそう! そういうのが食べたい!」
「分かりました、ちょっと探してみますね」
「うん! ありがとう、快人!!」
俺の直感だけど、シリアス先輩はたぶんだいぶチョロい方ではあると思う……。
シリアス先輩(攻略済み)「いや、延長の方がタイトル長いってどういうことだ!!」
???「……いや、名前の横……好感度蓄積は十分だから、告白したら成功するってことですかね?」