金色の出会い⑦
今日は時間が無くてやや短めです
強盗が警備隊に連れていかれるのを見たあと、気を取り直してアリアさんと一緒に紅茶用品の店を目指して移動する。
「そういえば、カイト様はニフティの立ち上げを行ったんですよね。私も運よく抽選に当選しまして、カップを購入させていただきましたがとても素晴らしい品ですね」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると俺も嬉しいです。というかニフティのことをご存知なんですね」
「もちろんです。紅茶に関わるもので知らぬ者はいないでしょうね。陶磁器も茶葉も本当に素晴らしいです。いまは人気過ぎて商品を手に入れるのが難しいのが難点ですが、もう少し立てば落ち着いてくるでしょうし、そうなったら他の品もいろいろと買ってみたいですね」
「アリアさんは紅茶にもかなり詳しそうですね」
「ええ、私もメイドとして紅茶にはかなり拘りがある方ですし、紅茶の腕は一流を名乗っても問題ないレベルと自負している程度には自信があります」
「なるほど、アリアさんは紅茶が好きなんですね」
その俺の問いかけに対して、アリアさんは軽く顎に手を当てたあと、片手の人差し指を立て「し~」という感じの仕草で口を開いた。
「……これは、内緒にしていただきたいのですが……」
「うん?」
「……実はココアの方が好きです」
「え? そ、そうなんですか?」
てっきりアインさんやジュティアさんのように紅茶が好きなのかと思ったら、アリアさんは少し悪戯っぽい笑みを浮かべながらココアの方が好きだと告げた。
「いえ、もちろん紅茶も好きですよ。ですが、自分が飲む好みでいうなら、紅茶よりココアの方が好きですし、ケーキやスコーンより蒸しパンが好きですね。メイドとしての仕事の上で必要な技量として、紅茶関連には高い感度と技術を持って臨んでいますが……私は甘党でして、甘い飲み物の方が好みなのですよ。ですが、紅茶にあまり砂糖やシロップを入れては味を殺してしまいますので……」
「なるほど……」
紅茶は好きで、仕事上必要なことと凝り性な性格も相まってかなり詳しく腕も自信があるレベルではあるが、個人の好みとしてはココアが好き……なんとなくだが、アリアさんはONとOFFをしっかり切り替えるタイプっぽい。
「蒸しパンが好きってことは、ベビーカステラなんかも?」
「ええ、好物ですね。ベビーカステラに関しては、冥王様が好んでいらっしゃることもあって、メイド協会の会長であるアイン様も『メイドの必修菓子のひとつ』と定めていますので、メイドを名乗るものであればベビーカステラを焼くことはできますね」
「……そ、そうなんですね」
ベビーカステラがメイドに必須の菓子かどうかは知らないが、アインさんはまぁ間違いなく必須だというだろう。なにせクロが狂気じみて好んでいるものであり、クロに仕えるメイドであることを誇りとしているアインさんにとっては非常に重要な菓子だ。
「カイト様はなにか好きな菓子などはありますか?」
「俺は、リプルパイとかが好きですね」
「いいですね、リプルパイ。果物系のパイは、私もかなり好んでいます。リプルがお好きなようでしたら、シャインベリーのパイも好みに合うかもしれません」
「シャインベリーのパイですか、それは初めて聞きましたね。けど、なんか響きから美味しそうな感じですね」
「比較的味わいはリプルに似ているのですが、ベリーなので粒が小さく食感などがかなり違いますので、リプルパイとはまた違った美味しさがありますよ」
「へぇ~それは是非食べてみたいですね。今度探してみます」
リンゴっぽい味わいのベリーを使ったパイか……それは本当に美味しそうというか、是非食べてみたい。クロの食べ歩きガイドとか見たら乗ってると思うので、今度探して食べに行ってみよう。
シリアス先輩「仕事の上で必要で、一番知識があって扱いが得意なものと、一番好みのものは別って感じか……まぁ、イメージの問題とかあってコッソリ楽しんでそうだけど……」