金色の出会い④
カウンターでポテトとナゲットとコーラを受け取って席に座る。佇まいや動作に上品さを感じるアリアさんだが、口元に笑みを浮かべて席に座る姿にあまり違和感はなく、ファーストフード店にもそれなりに通い慣れてる雰囲気があった。
「……あ、美味しいですね。揚げたてなんでしょうか?」
「タイミングがよかったかもしれませんね。この手の小規模店にはマジックボックスなどはほぼ導入してないので、揚げたてが食べられるかはタイミング次第です」
「なるほど、運がよかったですね」
細長い形状のフライドポテトを摘まんで食べてみると、程よい塩気とホクホクした食感が素晴らしい。なんというか、こういうのでいいんだよって感じである。シンプルながらにフライドポテトというのは素晴らしいものだ。
アリアさんもポテトを摘まんで上品な仕草で口に運んで、幸せそうに笑みを浮かべている。顔が見えていたら表情を綻ばせていそうだ。
ナゲットもケチャップとマスタードの二つのソースが用意してあり、それに付けて食べる感じだがこちらも非常に美味しい。鶏肉のアッサリした味わいとケチャップやマスタードがマッチしていて非常に美味しい。
もちろんコーラも大切だ。味的にはダイエットコーラっぽい感じの味わいだが、炭酸もしっかり効いており久しぶりに飲むと滅茶苦茶美味しい。
……ところでこれ、炭酸ってどうやって維持してるんだろ? 専用の魔法具みたいなのがあるのかな?
「……カイト様」
「はい?」
「ポテトをナゲットのソースにつける行為は、はしたないと思いますか?」
「いや、美味しそうでいいと思います」
「そうですか、安心しました!」
アリアさんは俺の言葉に嬉しそうな声で返したあと、ポテトにケチャップを付けて食べた。なんというか、顔が半分隠れているのに美味しそうに食べている感じが伝わってくる。
「アリアさんは、フライドポテトが好きなんですか?」
「ええ、私が生まれ育った場所にはこれに近い料理があったんですよ。とはいっても、このように細長く洗練された形ではなく、ぶつ切りにした芋を揚げて塩を振るだけのシンプルなものでしたが……その頃から好物ですね」
「なるほど、思い出の味なんですね。でも、ちょっと意外でした。アリアさんはなんというか、仕草とか上品な感じで……もしかしたら貴族の令嬢がお忍びでとか思ってたので……」
「ふふふ、上品と言っていただけるのは光栄ですが、私は生まれも育ちも庶民ですよ……ええ、本当に……成り行きで国のトップに立ってたのがそもそもおかしいというか……」
アレキサンドラさんとは別人だったとしても、貴族かなぁと思ったがそんなわけでもないらしい。服とかかなり上質だし、動きにも気品とかがあるので絶対貴族だと思ったんだけど……。
「うん? すみません、後半の声が小さくて聞こえなかったんですが……」
「あっ、いえ! 仕草などが上品に感じるのは、私がメイドとして働いているからだと思います。貴族の方々と接する機会も多く、特にアルクレシア帝国は貴族の力が強い国なので、自然とそう言った仕草が身についているのかと……」
「なるほど……」
メイド? あれ? じゃあ、やっぱりアレキサンドラさんなのでは?
「ちなみに、アリアさんの故郷もアルクレシア帝国に?」
「ああいえ、私は単一種の魔族なので生まれも育ちも魔界ですね。とはいえ、もう人界に移り住んで長い年月が経つので、そろそろ魔界に住んでいた期間と人界に住んでいる期間が同じぐらいになりますので、アルクレシア帝国も第二の故郷と言ってもおかしくはないかもしれませんね」
単一種の魔族? あ~じゃあ、やっぱりアレキサンドラさんではないのか、フラウさんとかの話だとアレキサンドラさんは確かハーフだったはずだし、声も違うからやっぱり顔が似てるだけの別人かな。
「なんか質問ばかりで申し訳ないですが、ということは結構昔にアルクレシア帝国に移住してきたんですね」
「いえ、構いませんよ。そうですね、もうかなり長いですね。ただ、私が人界に来たのは時空の歪みという極めて珍しい事故によるものだったので、最初は自分の意思で来たわけではないのです」
「あっ、そうなんですね。響きからのイメージですけど、時空の異常かなんかで魔界から人界に転移してしまう感じですかね?」
「ええ、その認識で問題ありません」
「それは、なんというか……大変でしたね」
どうやらアリアさんは事故で魔界から人界にやってきたらしい。それは本当に大変だったと思う。俺も突然異世界に召喚されたわけだけど、過去の勇者召喚である程度この世界の人たちにもノウハウがあったおかげで不自由なく過ごせたが、それでも突然別の環境にというのは大変だ。
「異世界に召喚されたカイト様ほどでは無いかもしれませんが、確かにとても驚きましたし戸惑いましたね。当時はまだアルクレシア帝国という国も無く、そもそも人界の存在自体が魔界でも一種のおとぎ話のようなものだったので、困惑したのを覚えています」
そう言ってアリアさんは、どこか懐かしむような表情で当時の思い出を語り始めた。
シリアス先輩「ああ、そうか……あとがきで???が補足してたけど、快人が得てる情報的にはアレキサンドラはハーフってことになるから、純粋な魔族なら別人と思ってしまうのも無理はないか……」