金色の出会い②
街中で偶然出会い道案内をすることになったアリアさんと一緒に、目的の場所である西区画の通りを目指してまずは王城前広場に向かう。
けど、なんだろう? アリアさんなんだが……どうにもどこかで会ったことがある気がする。ただすぐには思い浮かばないので、会っていたとしても本当に一言二言言葉を交わして程度じゃないかな?
う~ん、声に関してはこれと言って思い当たる方がいない。もしかすると話したことは無くて、どこかで見たけただけという可能性もあるな……顔がもっとハッキリ見えれば分かるかもしれないが、前髪で顔の半分ほどが隠れているためよく分からない。
「アリアさんは、首都にはあまり来ないという話でしたが他の都市から来たんですか?」
「ああいえ、私はアルクレシア帝国に住んでおりまして、シンフォニア王国にはあまり来たことがないのです。いえ、何度か訪れてはいるのですが地図を見てすぐに場所が分かるほど明るくはないと、そういった感じですね」
「なるほど、アルクレシア帝国の方でしたか」
「はい。たまにこうして市井で……んん、ああいえ、小旅行をするのが趣味でして」
やっぱお忍びの貴族っぽい感じがするんだよなぁ。パッと市井って言葉が出てくるのも貴族っぽいし、歩いてる姿もどこか服装と合わない上品さがある。
けど、う~ん……俺って名が知られてる割には、貴族の知り合いは少ない。貴族が集まったりする場を避けているということもあって、パーティとかに参加した時に軽く挨拶した相手ぐらいだし、特にアルクレシア帝国となるとさらにその数は減るというか……ほぼ知り合いはいないと言える。
アリアさんに会ったことがある気がしたのは、気のせいだったかな?
元々根拠のないなんとなくという直感だし、変装とか変身とかの魔法で姿を変えられていたらさらに分からない。俺にはシロさんの祝福があるので、触れればそういった魔法は解除できるが、逆に触れなければ見破ったりできない。
女性にいきなり触れたりするわけにもいかないし、そもそも俺の知り合いであるなら姿を変えている理由も分からない。やっぱり、どこかでたまたま見かけただけとかそういう感じかもしれない。
というか、仮に俺の知り合いでかつ姿や名前を偽っているのなら、それはなにかしらの事情があるのだろうし深く突っ込むべきでもないだろう。
うん。よし、気にしないことにしよう。
「そういえば、お尋ねするのが遅くなって申し訳ありません。なんとお呼びすればよいでしょうか? お名前の感じから異世界出身の方でしょうし名前と家名とどちらで呼ぶべきでしょうか?」
「あっ、快人って名前の方で呼んでもらって大丈夫ですよ」
「それでは、カイト様と呼ばせていただきますね。それにしても、カイト様にお声がけをしていただいて助かりました。地区を間違っていたとなると、カイト様に助けていただかなければ長く迷うことになったでしょう」
「いえいえ、たまたま見かけただけですし、困った時はお互い様ですから」
「そうですか、カイト様はお優しい方なのですね」
やっぱり、言葉や仕草の節々に上品な感じがするので高貴な方で間違いはないと思う。ただ、道に迷ってこそいたものの、こうして大通りとかに来る機会も多いのか落ち着いているし、前から人が歩いてきた時なんかもサッと自然な流れで避けているので、人混みを歩きなれている感じはする。
「そういえば、聞いちゃダメだったらすみません。この地図の店ってなんの店ですか?」
「飲食店ですね。高級店や珍しいものというわけではなく、フライドポテトなどの揚げ物類をだす飲食店ですね」
「へ~フライドポテトですか、美味しそうですね」
「ええ、シンプルながらああいった揚げ物は魅力的です……いや、本当に、普段はイメージとかあってなかなか……大好物なのに……」
「うん?」
「ああ、いえ、なんでもありません。あっ、そうです! もしよろしければ、カイト様もご一緒に食事をしませんか? 道案内していただいたお礼に是非ご馳走させてください……いえ、高価なものでなくて申し訳ないですが」
「ありがとうございます。それじゃあ、せっかくなのでありがたく……フライドポテトとかは久しぶりに食べるので、楽しみですね」
アリアさんは安いお礼で申し訳ない的なことを言っていたが、むしろこちらとしては変に高級料理をお礼にとか言われるより気楽で受け取りやすい。
少し距離があるとはいえ、本当にただ道案内しているだけなので過度なお礼を貰ってはこちらの方が申し訳ない。
シリアス先輩「①アルクレシア帝国在住、②感応魔法持ちの快人がどこかで見かけた気がしているが、声に聞き覚えはない(話したことは無い?)、③節々から感じられる貴族感のある上品さ、④最初に言いかけた名前『アレ……』……スーパーメイドじゃね?」