迷子の真相⑤
トーレさんと共に家を出て街に出る。とはいえ、15分後にはチェントさんとシエンさんも合流するので、それほど遠くまで行くことは無い。
「とりあえずは近場に行きましょうか、トーレさんは希望とかありますか?」
「なんか甘いもの食べたいよね。アイスとかないかな~」
「う~ん。この近辺は高級店が多い場所なので、少し歩いて大通りに出ればなにかありそうですが……」
「じゃ、そっち目指していこっか!」
大通りに行けばチェントさんとシエンさんと合流したあとに遊ぶにも適しているので丁度いいだろう。トーレさんが言う甘いものというのは、要は食べ歩きできるクレープとかアイスを指していると思うのだが、見つからなければカフェとかに入ってもいい。
さすがに俺もそれなりに長くシンフォニア王国首都に住んでいるだけあって、大通りの店は結構知っているので案内はできると思う。
「そういえば、カイトが初めてクロム様とデートしたのもこの首都なんだっけ?」
「ええ、よく知ってますね」
「クロム様が楽しそうに話してたからね~」
「あはは、なるほど……というか、そもそもあの時はまだシンフォニア王国首都から他の場所に行ったことは無かったですね。まだ、この世界に来て間もないころだったので……」
トーレさんが口にしたクロとのデートは、なんというか結構懐かしいという気持ちになる。あの時も大通りから、露店の多く並ぶエリアを経由してあちこち回ったっけ……。
「まったく知らない異世界に来たんだもんね。そりゃ大変だったよね……けど、見るもの全部が新鮮ってのも、それはそれで楽しそうだよね!」
「確かにそれはありますね。特に俺の居た世界には魔法とかなかったので、魔法文化には圧倒されましたよ」
「私も話を聞いたことはあるけど、魔法の無い文化とか想像できないよ。前にあの、なんだっけ? VRだったっけ? アレで見た機械製品も凄かったね。世界が違うと文化が違うと思い知った気分だったよ」
「アレはちょっと特殊ですけど、確かにいろいろこの世界の人にとっては珍しいものもありますね。一概にどっちが便利とも言えませんが……」
この世界の魔法具や魔法は非常に便利で、機械製品を大きく上回る性能のものも多い。しかし、以前アリスも言っていたがどちらが上というわけではなく、魔法には魔法の機会には機械の優れている部分がある。
例えば、この世界にはパソコンとかスマホみたいなものは無いし、魔法具は基本的にひとつに付き一つの機能といった感じで、多機能のものは少ないし値段も高い。
そういう違いをこうして思い浮かべられるのは面白いかもしれない。
「へ~面白そうだなぁ。ねね、どうせ移動の間暇だしさ、カイトの居た世界のこと教えてよ」
「いいですよ。なにから話しましょうか……」
のんびりと道を歩きながらトーレさんと他愛のない話をする。トーレさんが聞き上手であり、俺の話のひとつひとつに大袈裟に反応してくれるので楽しく話は弾んだ。
そのまま会話をしつつ移動し、高級店街を抜けて大通りに差し掛かったあたりでチェントさんとシエンさんが姿を現した。
「お、チェントにシエン。無事合流出来たね」
「はい。本当にアッサリとトーレ姉様を探知できました。これなら今後も安心ですね」
「トーレ姉様とカイトさんは、どちらに向かう予定だったんですか?」
「なにか甘いものを食べに行こうって大通りに向かっているところです。アイスとかクレープの屋台があればそこで食べて、無ければカフェにでも行こうかと……」
シロさんの渡したアクセサリーのおかげで、無事に今回はトーレさんを探知できたらしくチェントさんとシエンさんが合流して四人で行動することになった。
「そういえばシエンは甘いもの苦手じゃなかったっけ?」
「いえ、そこまでは、生クリームが少し苦手な程度です。甘すぎなければ問題ないですよ」
「そうなんですね。チェントさんは?」
「あっ、私は……むしろ甘党です」
そのままワイワイと四人で話をしながら移動をする。トーレさんとふたりでの会話も楽しかったが、こうして四人で賑やかにというのも楽しいものだ。
シリアス先輩「おかずクレープは許す。普通のは許さない」
???「甘いからっすか? 私的にはツナマヨとかのクレープは邪道感がありますね。いや、美味しいんですけどね。やっぱクレープは甘いのがいいっすね」