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ある意味いつも通り

※前日小説家になろうがメンテで更新が行えませんでした。なので2日分の更新の文字量に合うように『作中のマキナの台詞を増量しました』。



 ところで先ほどマキナさんが船上パーティの話を切り出した時には、正直少し焦った。というのも、「手伝う」とかそういうことを言い出さないかとひやひやしていたが、幸いアリスとの思い出話に移行してくれたのでこれなら安心……。


「あっ、そうだ! 愛しい我が子、私もパーティの準備を手伝ってあげるよ!」

「……」


 あ~なるほど……説得パートはここからか……さてどう答えるか、今回は身内で準備をして行うつもりと言ったとしても、「自分も母だから身内」と言い出しそうだし、変な断り方をして暴走スイッチが入っても厄介である。

 スーパーポジティブというべきか、大抵の説得の言葉はいい様に受け取ってしまい、その結果として俺に対する愛情や好感度が高まって暴走する……ゲームで必死に積みを回避する方法を探している気分である。


「……えっと、お気持ちはありがたいのですが、ほら俺は起きるとここでのことは忘れちゃうわけですし……」

「ふふ、その心配はいらないよ。あとで明かすつもりだったけど……シャローヴァナルとの契約を調整したからね! マキナとしての体もそっちの世界に持っていけるようになったし、愛しい我が子もここでのことを忘れなくて大丈夫だよ。嬉しい? 嬉しいよね? そうだよね、母のこと覚えておけて嬉しいよね。いや~そんなに喜ばれると、私も照れちゃうなぁ」


 おかしいな、俺が一言も返答していないのに……本人を前にして脳内のイマジナリー快人の反応を会話に組み込むのはやめていただきたい。

 いや、それはそれとして、この夢の中の記憶を引き継げないのを理由に断ろうと思ったのだが、どうやらその辺りの問題は解決したらしい。

 そういえば、そもそも記憶を忘れさせるのはシロさんに気付かれないようにということだったわけだし、シロさんに話が通っているならその時点で記憶を調整する必要は無いのだろう。


「それって、何度か来てた真名さんのことですか?」

「あ、ううん。それとは別に、私の本体に近い能力を持ってる端末かな……いやまぁ、その端末は力が大きすぎてしっかり準備して行かないと世界に影響与えちゃうから、高頻度で動かすわけにはいかないから、基本的にはいままで通り楽園(エデン)で行動するつもりだけどね。それでも、時々この姿でも会いに行けるよ!」

「な、なるほど……」


 ニッコニコと笑顔で話してくるマキナさんだが、対照的に俺の笑みは若干引きつっている。というのも、穏便に拒否れそうだった手札を失ってしまったので、どうやってマキナさんの手伝いを回避しようかと……。


「マキナさんの気持ちはとても嬉しいんですが、今回はできれば俺と俺の家に住んでいる人たちだけで主催側をしたいかなぁと思ってるんですけど……」

「……はっ!? そ、そうか、そういうことなんだね!!」


 とりあえず下手に話を拗らせないようにと正面からストレートに言ってみることにすると、一瞬キョトンとしていたマキナさんだったが、突然なにかを思いついたような表情を浮かべる。


「そっか、愛しい我が子は母に成長した姿を、自分だけでもできるってところを見せたいんだね! あ、浅はかだったよ……つい安直に手伝おうとしちゃったけど、なにもかもしてあげるのが母の役割じゃないよね。時には我が子の成長を見守るのも重要な役割……ああでも、これは凄く悩ましい問題だね。手伝うことと手伝わないことに対して、どちらもメリットが大きすぎる。手伝う場合のメリットとしては、やっぱり愛しい我が子と一緒に愛の共同作業ができるところだよね。愛しい我が子としても母と長く一緒にいれるのは嬉しい筈だし、母の方から手伝いを申し出ているというシチュエーションにおいては、普段は恥ずかしがって抑え気味な愛しい我が子も母に思いっきり甘えることができるはずだよ。そしてそれを私が優しく受け止める……いい。こっちの選択肢は言うならばラブラブ慈愛ルートだね。ラブリーキュートな我が子を堪能できそうで即決したいぐらいだけど、もうひとつの選択肢も負けず劣らずに魅力的なんだよね。子供っていうのは成長した姿を親に見せたくて少し背伸びしちゃうものなんだよね。だからこそ、愛しい我が子は母である私になにもかもしてもらうんじゃなくて、自分の力でやってその成果を最愛の母である私に見せたいという欲求がある。そうなれば、その思いを受け止めてあげるのは母としてあまりにも重要な役割。大人っぽっくなろうとして少し背伸びしたラブリーチャーミングな愛しい我が子はこっちのルートじゃないとみることができない! そう言った初々しさって慣れで薄れていっちゃうものだし、母のために誇らしげに背伸びをする少しマセた愛しい我が子はきっと滅茶苦茶可愛い。そして私は、そんな我が子の頑張りを褒めつつ優しく頭を撫でて、愛しい我が子の承認欲求を満たしてあげる。これぞまさに母の慈愛! そう思うとやっぱこっちのルートも……うあぁぁぁぁ!? ど、どうすれば、どっちの愛しい我が子もその瞬間にしか存在しない至高! 至高と至高をどっちがいいかなんて比較できるわけも無い! どっちも圧倒的に素晴らしいんだから!! でも、ああ、私は母としてどちらかを決断しなければならな……はっ!? い、いや、まて、落ち着くんだマキナ! 貴女は皆重要なことを見落としている。それは、そう! 愛しい我が子の気持ち!! 愛しい我が子の視点から考えれば、また見え方も違ってくるはず。前者のルートなら、愛しい我が子は溢れんばかりの母の愛を得て思いっきり甘えられる。愛しい我が子はまだ甘えたい年頃だし、普段は恥ずかしがっていても母の胸に飛び込んで身も心も預けたいって欲求は当然あるはず! ならばこちらのルートは、愛しい我が子が普段から内に秘めている思いを表に出させてあげられるルートということにもなる。対してもうひとつのルートでは、愛しい我が子は成長を母に見せることで大きな承認を得られる。愛しい我が子も男の子、いまは幼くとも成長して最愛の母である私の隣に並び立てるような素敵な男になりたいって思いはあるはずだよ。もちろん今の時点で愛しい我が子は至高なんだけど、本人にしてみればやっぱり成長を実感したい。いまは遠い存在である母に近付けているという実感が欲しい筈だよね。いや、もちろん既に愛しい我が子は私の隣に居て、手を伸ばさなくてもすぐにこっちから握り返してあげるぐらい身も心も魂も近くに在るわけなんだけど、それはどうしても本人の背天からだと見えにくくなっちゃうよね。だとしたらこのルートでは承認欲求を満たして、愛しい我が子の自己肯定感を上げつつ母である私の傍にいることを再認識……いや、子供としてだけではなく母を愛する一人の男としての強さを実感できる。つまり私を異性として強く認識できるルートってわけだね! こっ、これはまた悩ましいね……私の愛は無限だから、愛しい我が子のどんな望みにも応えてあげられるんだけど、やっぱり愛しい我が子も自分の手で得たって時間は欲しいだろうし……う~~~ん。となると、前者は私から与える部分が大きく、後者は愛しい我が子が自分の手で得る部分が大きい。そう考えると、愛しい我が子の後者がいいのかな……でもなぁ、前者も捨てがたいしなぁ。それもコレも愛しい我が子が、あまりにも可愛すぎるのが問題であって、どんなことしても至高の存在だから選ぶのが難しい。よし、もう少しじっくり考えてみよう。そもそも愛しい我が子と母である私、その二つだけに絞って考えるべきだろうか? もちろん最重要なのは愛しい我が子なわけで、その愛しい我が子の魅力に関して考えるのはなにも間違いではないんだけど、ここはメリットだけではなくデメリットにも目を向けるべきだと思う。いや、もちろん愛しい我が子と接することにデメリットなんて無いし、なんならデメリットもすべてメリットに変わるので問題ないと言えばないんだけど……とりあえず前者の場合はどの程度手伝うかによって、喋る肉塊と関わるシチュエーションが増えるのが懸念材料と言えばそうかもしれない。愛しい我が子の家に住む中で愛しい我が子の恋人であるアニマは大丈夫、ちゃんと優しくできると思うけど他に関して嫌悪感を出さずに行けるかなぁ? いや、もちろんちゃんと頑張るつもりなんだけど、不意な場面とか失敗しちゃう可能性もあるよね。そう考えると愛しい我が子に迷惑をかけちゃう可能性があるわけだし、それは明確にデメリットかなぁ。愛しい我が子と無関係の肉塊がどうなろうと知ったことじゃないんだけど、喋る肉塊でも愛しい我が子の友人とかだと愛しい我が子が悲しんじゃうから、私も母としてできるだけ寛容に接したいとは思うんだ。最近は愛しい我が子の恋人は実質的に義理の娘みたいなものだと認識できるようになったから、我ながら優しく接することができるようになってきてると思うんだけど、アリスいわくもうちょっと柔らかい態度の方がいいらしいし、そう考えると懸念材料にはなるかな? 後者に関して言えば、基本は待ちの姿勢になるわけで、愛しい我が子にもてなしてもらうような形になるわけだしそのデメリットが発生しないのは利点だね。ただ、後者の場合は逆に準備に全然関われないから頑張る愛しい我が子を間近で見ることができないという欠点もある。愛しい我が子にもてなしてもらうっていう言葉の響きは天上の蜜ぐらい甘美だけど、どっちかというと私は愛しい我が子をいっぱい甘やかしたいというか、可愛がりたいタイプだしもてなされるよりはもてなす方が……ああ、いや、でも、愛って一方的に与えるだけじゃ駄目だよね。与え合うことが重要なわけだし、そう考えると愛しい我が子としても私に対して愛を返したいはずだから、そういう機会はちゃんと尊重してあげないといけないよね。となるとやはりここは後者のルートが正解だろうか? いや、まだだ! メリットデメリットだけで結論を出すのは早い。ここはペロリティとかも考慮しなくちゃいけない! ペロペロポイント的な観点で言えば、前者のルートの方が高い気がするんだよなぁ。やっぱり準備段階から愛しい我が子と一緒に居られて、愛しい我が子の愛らしさをこれでもかというほど堪能できるという時点で相当の高ポイントだね。私の力なら準備の手伝いをしながら愛しい我が子の勇姿を魂に刻み付けるとか余裕なわけだし、近くで愛しい我が子を見つめ続けられるというのは最高の環境でもあるね。おっともちろん、なんでもかんでも手を出し過ぎちゃうつもりはないよ。あくまで主体は愛しい我が子で母は献身的にサポートする感じかな? もちろん愛しい我が子が願えば、準備から私生活までいつでもサポートするけど、いやむしろ今回の件に限らずいつでも言ってくれればいくらでもサポートしちゃうし、たっぷり母の愛情を感じさせてあげるつもりだよ! 幸いにして、この私本来の姿でも接することができるようになったし、いままで以上に私と愛しい我が子の心の距離は近くなっているといっても過言じゃないよね。愛しい我が子の準備を手伝いつつ、その勇姿をしっかり目に刻み付けて、準備がひと段落した休憩には愛しい我が子を抱きしめてよく頑張ったねって褒めてあげるんだ。そうしたら愛しい我が子も母に甘えてくるはずだし、愛し合うふたりで濃密な時間が過ごせるね! もちろん周囲の時間とかは操作するから、時間を気にせず母に甘えられるのは愛しい我が子にとって大きすぎるメリットだし、私にとっても思う存分愛しい我が子を愛でられると思うと、最高の時間といえるね。そう考えるとやっぱり前者のルートもいいなぁ……愛しい我が子とのラブラブ度という点ではこっちの方が圧倒的だよ! でも、もちろんだからって後者のルートがペロリティが低いわけでは無くて……」

「……」


 ……俺は、マキナさんって根は普通にいい人だと思うんだ。エデンさんの時に見てたらいつでも暴走しているイメージだったけど、実際は暴走を抑えようと努力もしてくれているし、俺に対する愛情は間違いなく本物ではあるんだ。

 こうやって夢の中で会う機会も増えて庶民的な趣味があったり、ポンコツ感があって微笑ましい部分もあったりするわけなんだけど……うん。どうしても最終的な結論としては「やっぱりヤバい人」ってなるんだよなぁ……。

 俺がそう考えつつ延々と独り言を繰り返すマキナさんを見ていると、しばらくしてマキナさんは自分の拳を握って己の顔に叩きつけた。

 その衝撃によりマキナさんの背後の景色が全て吹き飛び、空間も割れて一瞬宇宙みたいなのが見えた気がした。


「……あ、危ない……また、愛しい我が子への愛がスパーキングして暴走しちゃうところだった。ギリギリ踏みとどまれてよかった」

「……」


 いや、ガッツリ暴走してたような気が……いったいどの辺りを考慮して踏みとどまれたと認識したのか大変気になるが、なんか恐ろしいので聞きたくはない。

 なんというか、マキナさんはやはり安定のマキナさんだったと言うべきだろう……。




シリアス先輩「なんでそこを増やした!? というか、せっかくいろいろ好感度を上げてたのに最終的に『でもやっぱヤベェやつ』って結論に達するのが、本当にマキナらしい」

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― 新着の感想 ―
毎回思うけど、長〜
( ´ᾥ` )ウッ……頭痛がw
[一言] 失礼ながら軽く読み流す時もあるけど、マキナの台詞はじっくり読んでるので増えた感じがしません
2024/05/15 17:29 退会済み
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