勇者と定食屋⑨
確定申告が忙しくて時間が無かったので短めです
香織さんがなんとも言えない表情で……なんというか、もういまさら引けないというような表情で協力を了承してくれたタイミングで、不意に香織さんの元にハミングバードが届く。
「あれ? 香織さん、ハミングバードの魔法具買ったんですか?」
「ふふ、えへへ……ほんの数日前だけど、ついに買っちゃったんだよね! 快人くんが茜さんやラズ様を紹介してくれたおかげで仕入れにかかるお金が減って、更に質が上がったから売り上げも増えて余裕ができたからね! 友好都市外の知り合いも増えたから、あると便利だし思い切って買っちゃったんだ。あとで、登録交換しようね!」
香織さんの切り替えの早さは流石というか、先ほどまでの妙な表情から一転してウキウキとした気持ちが伝わってくるような笑顔で告げてくる。
新しく買ったスマホを自慢しているような感じが微笑ましく、失礼ではあるが年上のはずなのに大人っぽさより可愛らしさが勝る方である。
「……う~ん。快人くん、オリビア様が挨拶に来たいらしいんだけど……いいかな?」
「ああ、オリビアさんからだったんですね。なんで俺が来てることを知って……あっ、友好都市内なら分かるのかな? ええ、俺は香織さんさえ問題ないのなら大丈夫ですよ」
一瞬なぜ俺が香織さんの店に来ていることが分かったのだろうかと思ったが、オリビアさんは友好都市内に居る時は最高神に匹敵する力を持ち、その能力は多岐にわたる。
特に友好都市に関することなら、ある程度なんでもできると言っていたので、誰が友好都市に来ているかを把握するのなどは簡単なことなのだろう。
そしてオリビアさんの性格上、俺が来ていたら挨拶に来たいと言い出すのは理解できるので、店主である香織さんが問題ないなら大丈夫と返しておいた。
「オリビア様ですか……会うのは久々ですね」
「知り合いなんですか?」
「ええ、最初にシャローヴァナル様がオリビア様を創造した際に顔合わせはしましたが、その後は会っていませんね……オリビア様は、ほら……基本的に友好都市から出ない方なので」
「ああ、なるほど、それはたしかに会わないかもしれないですね」
基本的に友好都市から外に出ることがないオリビアさんと、基本的に友好都市に近付くことがないノインさん……確かに会う要素がまったく無い。
ただオリビアさんは初代勇者であるノインさんの功績ともいえる友好条約の原文を保管して守っている立場なわけだし、ノインさんは結構重要な相手な気がする。
このふたりの会合はどんな風になるのか、少々気になるところである。
シリアス先輩「個人的な予想言っていい?」
???「どうぞ」
シリアス先輩「たぶんオリビア、ノインにまったく興味ないだろ……香織に送ったハミングバードも快人に挨拶したいってだけで、ノインに関して触れてなかったし……」