勇者と定食屋①
時間が無くて短めです。
アニマの慰安での一泊の際にふと話に上がったクロから貰った魔導船を有効活用し、俺主催で船上パーティを開催しようという話に関して、俺自身が結構乗り気であることも合わせて本格的に動き出すことにした。
そして、料理の監修というかメニューの相談のために香織さんの元を訪れようと思ったのだが、その前にあることを思いついてとある人に連絡して、その人に会うために魔界……クロの居城にやってきた。
「こんにちは、快人さん。今日はどうされたんですか?」
「実はノインさんに提案というかお誘いというか……」
そう、俺はノインさんに用事があって尋ねてきた。いや、用事といっても特になにかをお願いしたりというわけではなく、以前から考えていたことを提案しに来た感じだ。
「……えっと、ちょっと俺と一緒に友好都市に行きませんか?」
「……あ、あの……私はなにか快人さんを怒らせるようなことを……?」
「あ、ああいえ、そうじゃなくて……すみません。説明の順番を間違えました」
ノインさんにとって友好都市は世界で一番訪れたくない場所であり、いまの俺の言葉を聞いただけで世界が終わったかのような絶望の表情を浮かべていた。
いや、もちろん俺もノインさんに嫌がらせをしたいわけではなく、むしろノインさんにとっても悪くはない話だと思うのだが……説明の順番を本当に間違えてしまった。
「えっと、実は友好都市に俺たちと同じ異世界人の……過去の勇者役の方が店を開いているんですけど、知ってますか?」
「いえ、友好都市の情報はまったく耳に入れてないので……しかしそうですか、移住者の方ですね。それはなんとも喜ばしくもありますが、気軽に会いに行くのも難しいといいますか、複雑ですね。ところで、お店というのはなんの店を?」
「えっと、和食を中心とした定食屋でして……」
「!?」
ここまでまったくもって乗り気ではないというか、本当に嫌そうな顔をしていたノインさんだったが、俺の一言を聞いて明らかに表情が変わった。
ノインさんは和食等に結構拘りが強いので、異世界人が経営する定食屋というのには興味が強いのだろう。
「それで、そこの店の前を転送魔法具に保存してあるので、ほぼ友好都市内を見ることは無い筈なんですが・……どうでしょう?」
「う、しょ、正直興味があります……和食、定食……食べたいです」
どうやらノインさんも乗り気の様子なので、問題なさそうだ。ただ食事をするとなるとノインさんの正体がバレるのは確実なので、その辺りはしっかりと確認しておくことにしよう。
シリアス先輩「香織への胃痛フラグが……」