アニマとの海水浴⑩
船上パーティについていろいろ話し合いつつ休憩をしたあとは、海でもうひと遊びしてからコテージに戻った。それぞれシャワーを浴びて海水を流してからラフな格好でコテージのリビングに集合する。
「結構遊んだからか、程よい疲労感があるね。いま寝たりしたら気持ちよさそうだ」
「確かにそうかもしれませんが、ひと眠りするには少々時間が遅いかもしれませんね」
アニマの言う通りいまは昼の3時ぐらいであり、いまから昼寝するのはちょっと遅い気もする。それに、夜には家に帰るつもりなので、ラグナさんに一声かけて帰ろうと思うと夕方ぐらいにはここを出たいところだ。となると、あと数時間ってところだろうか?
「アニマはなにかやりたいことはある?」
「そうですね。具体的になにかをというわけではないのですが、ご主人様と……その、ゆっくり過ごしたいですね」
「なるほど、のんびりするのはいいね。元々慰労が目的だったし、丁度いいかもね」
まぁ、結構海でガッツリ遊んだので休むどころかある程度遊び疲れているのだが……それでも、俺はともかくアニマはまったく疲労している感じはしない。このあたりはまぁ、基礎体力の違いもあるだろう。
それはともかくとして、アニマがいまゆっくり過ごしたいという話だったが、どうもその際に若干言いよどんだのが気になった。
「アニマ、今少し言い淀んだみたいだけど……」
「うっ、あ、いえそれは……しょ、少々お待ちください。ご主人様の言わんとすることは分かりますので、少しお待ちを……気持ちを落ち着かせますので」
う~ん。この感じは、たぶんだけどなにかしら恋人らしいこと的なことをしたいという思いがあるのだろう。最初は遠慮して口にしなかったが、俺がそれを指摘したことで俺が出来れば遠慮せずに要望を伝えてほしいと思っているのを察したのだろう。
そして、あくまで俺の推測ではあるが、アニマはこの一泊の間はある程度素直になろうと思っている感じがあるので、なので覚悟を決めて要望を伝えてくれるのだろう。
そう考えつつ待っていると、アニマは少し深呼吸をしたあとで落ち着いた表情で俺の方を見て口を開く。
「……ご主人様を、膝枕させてはいただけないでしょうか?」
「えっと、昨日したみたいに俺が膝枕するんじゃなく、その逆ってこと?」
「はい。昨日のお返しというのは変な言い方かもしれませんが、その、自分もご主人様になにかをしたいという気持ちが強くて……いかがでしょうか?」
「それはまったく問題ないというか、俺としても嬉しい提案だけど……いま膝枕されると寝ちゃいそうな気もするなぁ」
「問題ありません。少ししたら起こしますので……むしろゆっくり休んでいただけると、自分としても嬉しいです」
なんともアニマらしい要望というべきか、こういう要求も可愛らしくて微笑ましさを感じる。
「じゃあ、せっかくだしお願いしようかな」
「はい!」
俺の返答を聞いて嬉しそうに笑うアニマに微笑み返し、その腿の上に寝転がらせてもらう。いまのアニマはいつもの軍服風の服ではなく、もう少しラフな格好をしておりズボンも薄めの生地のものを使っているからか、太腿の柔らかさを感じられて心地よい。
俺が寝転がると、アニマは本当に嬉しそうにニコニコしており、尻尾を千切れんばかりに振る子犬の姿が幻想できた。
「どうでしょうか、ご主人様? 寝心地は悪くないでしょうか?」
「うん。むしろ、心地よいというか、本当にすぐ寝ちゃいそうな気がするよ」
「よかったです。どうぞ、気にせずにお休みください。頃合いを見て起こしますので……」
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
海で遊んだ疲れもあり、心地よくリラックスできるシチュエーションも相まってすぐに眠気が出てきた。アニマの勧めに従って目を閉じると、そのタイミングでそっとアニマの手が俺の目を覆うように置かれた。
「ご主人様、今回は自分のためにいろいろとありがとうございました。本来は自分の体調管理不足であり猛省すべきですが、同時にご主人様にこうして大切に思っていただけているのが、どうしようもなく嬉しく思います。ほんの少しでもご主人様を想う自分の気持ちも返せれたらと……おやすみなさい、ご主人様。お慕いしております」
優しい声が聞こえたあとで、唇に柔らかな感触があった。心から俺を愛していると伝わってくるような、そんな気持ちが籠ったアニマのキスは、とても心地がよく幸せだった。
ただ、いま目を開けては気恥ずかしいという気持ちもあるし、アニマも俺の目を覆ったのは気恥ずかしさがあるからだろう。なので、俺は返事をしたりすることは無く、その幸福感を噛みしめつつゆっくりと眠りに落ちていった。
???「おや、シリアス先輩はまたチョコっすか……というか、なんすかこのコタツ」
マキナ「もうチョコレートは一杯食べたし、今回は戻るまで放置でいいかなぁって、コタツはなんとなく気分で出したね。コタツはいいよね~あっ、ミカンもあるよ、食べる?」
???「じゃ、いただきますかね」
マキナ「私も食べたいから、私の分も皮剥いて」
???「……面倒臭いっすねぇ。まぁ、コタツとミカンを用意した功績の報酬として、その程度のワガママは聞いてあげますか……」
マキナ「あっ、白い筋は取ってね」
???「……いちいち注文が細かいですね。ほら、取れましたよ」
マキナ「あ~ん」
???「……」
マキナ「あ~~~~~ん」
???「……やれやれ」
マキナ「うん。美味しい!」