表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1803/2394

頑張り屋に休息を⑫



 アニマに背中を流してもらいながら少し考える。この場合は流し終えたあとはどうするのが正解だろうか? というか、果たしてアニマはどこまで想定しているのだろうか?

 自然な流れで言えば、背中を流してもらったのだから今度は俺が~という形だろうが、先ほどの発言を考えるにアニマは自分のタオルを状態保存で固定している。つまり、自分が背中を流してもらう場合のことを全く想定していないようにも感じられる。


 ここで重要なのは一般的にどうであるかではなく、アニマがどう考えているか……少し前のやり取りでアニマが気恥ずかしさなどを抑え込んでおり、不意を突かれると崩れてしまう可能性があるというのは分かったので、できるだけアニマの想定を外さないようにしたいものだ。


「それでは、流しますね」

「うん。ありがとう」


 背中を流してもらいつつ、自分で体の前も洗って最後にアニマがシャワーの魔法具で体の泡などを流してくれる。これで俺の背中を流すというのは完了したわけだが……さて、どう動く?

 こういう時に感応魔法は便利だが、それだけでは意味がないアニマの表情や目線の動きなども含めて、しっかりとその意図を読み取るんだ。


「そ、それでは、自分も体を洗いますね」


 自分で洗うという意味合いの言葉だが、チラリと一瞬こちらに動かした視線に感応魔法で僅かに感じる期待のような感情。アリスから妙な知識を教えられていることなども含めて、総合的に考えると……。


「アニマ、お返しに俺が背中を流すよ」

「え? あ、しかし、ご主人様にそのような……」

「主人としてじゃなく、恋人としてしてあげたいんだ」

「あっ……はい! それでは、その、よろしくお願いします」


 やはりというべきか、以前裸の付き合いがどうと口に出していたことも尽くめ、互いに背中を洗い合うという形を期待していたみたいだった。

 若干の遠慮は見せたものの、主人と従者の関係ではなく恋人としてという俺の意図を察してくれ、どこか嬉しそうな表情を浮かべて俺の前で椅子に座り、巻いていたタオルの固定を解いて体の前を隠すように抱える。


 白く綺麗なアニマの背中と臀部の尻尾が目の前に晒され、その美しさにドキッと胸が高鳴るが、ここで俺が慌てたり緊張すれば、それがアニマに伝染してしまうだろう。

 幸いというべきかなんというべきか、こうした混浴の経験は多いのでしっかりと意識を強く持っておけば、動揺することは……いや、若干は動揺しているが落ち着くことはできた。


「それじゃ、流すね」


 そう一言断りを入れて、先ほどアニマがしていたようにスポンジにボディソープを付けて背中を優しく擦る。まぁ、仮に俺が力いっぱい擦ったとしてもノーダメージだろうし、アニマと比べると力加減の難しさはない。


「力加減は大丈夫?」

「はい。心地よいです……あっ、いや、本来は従者として申し訳なく思うべきなのでしょうが、ご主人様の恋人としての私はその……幸せを感じておりまして、表情が緩んでしまう不敬をお許しください」

「あはは、むしろ幸せに思ってくれてる方が嬉しいよ。実際さっき俺がしてもらってた時も、アニマがいろいろこっちを気遣ってくれてるのが伝わってくるみたいで、なんだか幸せだったしね」

「それなら、よかったです」


 従者としてか、恋人としてか、アニマにとっては色々と悩むところではあるだろうが、悪い悩み方というわけではなく、なんだかんだで楽しみつつ自分の中で折り合いを付けれてきているような、そんな雰囲気があった。

 そんなことを考えながらアニマの背中を流していると、不意にアニマが小さな声で告げた。


「……ご主人様、その、どうかそのままこちらは見ずに聞いていただきたいのですが」

「うん?」

「えっと、面と向かうと自分は緊張して上手くは言えないでしょうし、かといって後回しにするのも気が進まないので、恐れ多くもご主人様に背中を流していただき、幸せな気持ちに浸っている中で言わせてください」


 そう前置きをしたあと、アニマは少しの間沈黙をして……ゆっくりと、一言一言に想いを込めるように言葉を紡ぐ。


「……お慕いしています。いえ、これでは、堅苦しいですね。そうではなく、もっとシンプルに……その、いつも優しいご主人様が……大好きです」

「アニマ……ありがとう。俺も、真面目で可愛いアニマが大好きだよ」

「嬉しいです。気恥ずかしくはありますが、それ以上に凄く……」


 ストレートに紡がれる好意の言葉はくすぐったくも心地よく、なんというか幸せな空気がふたりの間に流れているかのような……そんな気分を味わうことができた。




シリアス先輩「ぐぉ、くっ、ま、まだ……」

マキナ「……」

シリアス先輩「おいやめろ、なんだその串とフルーツは……期待した目でこっち見るんじゃない!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そろそろシリアス先輩がグラブジャムン(世界一甘いお菓子)を作り始めるんじゃないか?∩^ω^∩*\(^o^)/*
[一言]  やっぱり、今回の快人さんIntel入ってません?どこか妙に察しがいいというか……昔は鈍感難聴系主人公だったのに、最近はかなり鋭敏だよね。う〜ん、これまでの経験があるからだろうか?  アニ…
[良い点] アニマの言い直したのとてもいいね。 [一言] スタンバイしてるwシリアス先輩の運命やいかにというかマキナちゃん好きだからはよかわれや
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ