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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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相談すべき相手が分かったよ

 土の月1日目。朝食にはまだ少し早い朝の時間帯、俺はある事を考え……悩んでいた。

「……カイトくん?」

 ベビーカステラ(今日はクリーム入り)の袋を抱え、俺の膝の上に座っていたクロが俺の様子に気づいて尋ねてくる。
 そんなクロの視線を受け、俺はやや緊張しながらも口を開く。

「……実は、クロに言わないといけない事があるんだ」
「うん?」

 現在俺の頭に浮かんでいるのは……そう、アイシスさんの事だ。
 俺はアイシスさんから告白を受け、現在その返事を保留にしてもらっている。
 日本人としての俺の感覚では、クロと言う彼女が出来たのだから、アイシスさんの告白は断らなければいけないと思う……だけど、アレだけ一途に俺を想っているアイシスさんを拒絶は……したくない。

 そこで重要になってくるのがこの世界の常識。この世界は一夫多妻制が当り前であり、男性は複数の女性と結婚するものらしい。
 しかし、だからと言って、はいそうですかとそれに馴染む事は出来ず、今こうして悩んでいる訳だ。

 そして何より、仮に俺が一夫多妻制を受け入れ、アイシスさんの気持ちに応えたとしたら……クロは、どう思うのか、それが気がかりだった。
 話すのはかなり勇気がいる行為ではあるが、しかし話さないという選択肢はあり得ない。
 だから今こうして、クロと二人きりでいる間に、アイシスさんから告白を受けた事、その返事を保留にしている事、そして……アイシスさんにも惹かれ始めている自分の気持ち、それを包み隠さず話す事にした。

 かなり緊張しながら、たどたどしく説明をする俺に対し、クロは特に口を挟んだりせずに無言で聞き続けてくれた。
 そして経緯を全て話し終え、ゆっくりと息を吐く。

「……そういう訳なんだけど……えっと、クロは……その、どう、思う?」

 まるで判決を待つ被告のような気分で、絞り出すように尋ねると、クロは俺の方を向いたまま……明るい笑顔を浮かべた。

「良いじゃん! アイシスにそれだけ好かれるなんて、流石カイトくん!」
「……へ?」

 あれ? なんか、思ってたのと反応が違う。
 なんて言うかもっとこう、お前は不誠実だとか甲斐性なしだとか、叱られるとばかり思っていたが……むしろなんか喜んでない?

「く、クロは……それでいいのか?」
「え? なにが?」
「だ、だから、お、俺はクロと恋人同士なのに……アイシスさんの事も好きだなんて、不誠実に感じるんじゃ……」
「なんで? カイトくんとアイシスが恋人同士になったら、ボクも嬉し……あっ、そっか……そういえば……」

 心底不思議そうに首を傾げていたクロだが、途中で何かに思い当ったみたいで顎に手を当てて考え始める。
 そのまましばらく沈黙した後、クロは再び視線を俺に戻して口を開く。

「……確か、カイトくんの世界では結婚する相手は一人だけなのが普通なんだったっけ?」
「あ、ああ」

 勿論再婚とかって例もあるし、他の国であれば一夫多妻制がある所もあるのかもしれないが……少なくとも俺の生きてきた日本では一夫一妻が普通だった。
 俺が頷くのを確認したクロは、腕を組み首をひねる。

「う~ん……成程、それで悩んでたんだ……」
「……それで、クロの意見も聞いてみたいって思って」
「……ボクは、カイトくんの世界の事は、シロや過去の勇者役の子から聞いた程度だから、あまり詳しい訳じゃないんだけど……う~ん。難しいね。カイトくんは、この世界の男の子が複数の女の子と結婚するってのは知ってる?」
「ああ」
「ボクはずっとこの世界で生きてきたからね。どうしてもこの世界の常識で考えちゃうし、恋人自体カイトくんが初めてだから、あまり参考になる事は言えないと思う。ごめんね」

 クロは俺の世界の事についてもある程度は知っていて、俺の悩みが何なのかはすぐに察してくれたみたいだ。
 ただやはりクロはこの世界の住人だから、どうしてもこの世界寄りの考え方をしてしまうらしい。
 確かに俺も今現在、元の世界の常識に思考が引っ張られている感じだから、その気持ちはよく分かる……やっぱり、恋愛とか結婚とかの考え方自体が違うみたいだ。

「……仮にだけど……もし、俺がクロという恋人が居ながら、アイシスさんの事も好きになって付き合ったとしたら……いや、それ以上に沢山の人と結婚したりしたら……クロは、どう思う?」
「そりゃ、嬉しいよ」
「う、嬉しいの?」
「うん。だってほら、ボクの大好きなカイトくんが、それだけ沢山の子に好かれる素敵な男の子ってことでしょ?」
「……」

 やっぱり、考え方自体が大きく違うみたいだ。
 俺の感覚では複数の女性と付き合う事は不誠実って感じだったけど、この世界の人達にしてみれば、それはむしろステータスとでも言うべき要素らしく、嫉妬等の対象になったりはしないみたいだ。

 クロだけがそういう考えなのか、それとも他の人達もそうなのかまでは分からないし、これは少し色々な人に意見を聞いてみた方がよさそうだ。













「……っという訳なんですが……」
「え、えっと、カイトさん? いつの間に、冥王様と恋仲に?」
「……つい先日」
「そ、そうですか、それはおめでとうございます(やっぱり一番手は冥王様でしたか、まぁ、カイトさんの様子を見てて何となく想像はしていましたが……むぅ、やはりカイトさんはああ言った小柄な女性が好みなんでしょうか?)」

 現在、俺の目の前ではジークさんが、何やら戸惑ったような表情を浮かべている。
 クロ以外の人の意見も聞いてみようと思った俺は、クロが帰った後でジークさんの元を訪れ、かいつまんで事情を説明して意見を聞かせてもらおうと考えた。

「それで、もし良ければ、ジークさんの意見も聞かせてもらえたらと……」
「え、えっと……なぜ私に?(聞く相手間違えてませんか?)」
「えっと、ジークさんって、なんだか大人の女性って感じで、相談すれば良い答えを教えてもらえるかなぁって……」
「な、成程(ごめんなさい、無理です! 私、交際経験なんてないですから!)」

 流石に質問がいきなりすぎたのか、ジークさんは困ったような表情を浮かべる。
 勿論俺としても無理にあれこれ聞くつもりはないが、相談できる相手と考えて一番初めに思い浮かんだのは、ジークさんだった。

「勿論最終的には俺が自分で考えますが、出来れば少し相談というか……アドバイスを頂けたらと……」
「そ、そうですね。え~と(そんな期待を込めた目で見ないで下さい!? なにか、なにか言わないと……)」
「ジークさん?」
「い、いえ、え~と……カイトさんの世界との常識の違いですが、それはこの世界に女性が多い事もそうですが、私の種族のように長命種が多い事も要因の一つだと思います」

 成程、確かにこの世界にはエルフ族をはじめ、長命……或いは寿命の存在しない者も多く存在している。
 だからこそ人間だけの世界に比べ、時間の流れというものにおおらかなのかもしれない。
 多くの女性と結婚したとしても、長く話せてないとか、最近あまり会えてないとか、そう感じる感覚が広いのかもしれない。

「勿論例外も存在します。例えばうちの父は母としか結婚してません……ただやはり珍しいです。父は変わり者と呼ばれていましたからね」
「……成程」
「私も、男性は多くの女性と結婚するものという感覚が強いですね」

 やはりこの世界の人達にとって、それは当り前の感覚みたいだ。
 う~ん、気にせずアイシスさんの事も好きでいいのかな? いや、曖昧に決めてクロやアイシスさんに悲しい思いをさせたら本末転倒だし、怠けずしっかりと考える事にしよう。

「……参考までに聞いてみたいんですけど……」
「はい、なんでしょう?」
「もし、仮に……あくまで仮にですが、俺とジークさんが恋人同士だったとして……」
「ッ!?(か、カイトさんと恋人同士? ……う、嬉しい……じゃなくて!?)」

 クロにしたのと同じ質問を、ジークさんにもしてみる事にした。

「その上で俺が、他の女性に好意を向けられたり、俺自身がその女性に好意を持ってたりしたら、ジークさんはどう思います?」
「カイトさんが沢山の女性に好かれるのは、大変喜ばしい事だと思いますが……(というか、現時点でほぼその状況ですからね)」

 やっぱりそういう考えになるみたいだ。
 男性が多くの女性に好かれることは喜ばしいという考えは、クロだけのものでは無くジークさんも同様の考えを持ってるみたいだし、それを聞いて少しだけ楽になった気がした。

「ありがとうございます。参考になりました」
「いえいえ……ただ相談するなら、私ではなくカイトさんと同じ男性に相談した方が、より良い意見を聞けるかもしれませんよ?」
「成程! そうですね、ありがとうございました! やっぱり、ジークさんに相談して良かったです」
「このぐらい、お安いご用ですよ(ごめんなさい。話逸らして丸投げしました。私は卑怯者です……なので、そんなキラキラした目で見ないで下さい、いたたまれないです!?)」

 確かにこう言った悩みを相談するなら、同性の方が色々突っ込んだ話をしやすい。
 そしてその話を聞いた瞬間、相談するなら最適の人物が思い浮かんだ。

 そうだ。オーキッドに相談してみよう……オーキッドは既婚者だし、物腰柔らかで相談もしやすい。

 拝啓、母さん、父さん――保留にしていたアイシスさんへの返事を考え始めた訳なんだけど、やっぱり今まで馴染んできた常識を変えるのはなかなか難しく、結構迷ってる。だけど、ジークさんのお陰で――相談すべき相手が分かったよ。



アイシス編開始、ほら、シリアス先輩、出番だよ。

シリアス先輩「……どうみても、シリアスにならないよね……嫉妬? なにそれ? みたいな感じになってるよね……優しい世界だよね……」
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