頑張り屋に休息を⑤
今日は残業で遅くなったので、短めです。
アニマと一緒にコテージのキッチンに向かう。時間的には夕食になりそうだが、あまり本格的に作るわけではなくある程度手は抜きつつ簡単に作りたいとは思う。
以前アニマと釣りに行った際には魚料理だったので、今回は別のものにしようと考えマジックボックスにどんなものが入っているかを思い浮かべたところ、あるものを思い出した。
「そういえば、アニマは蕎麦って食べたことある?」
「蕎麦ですか? たしか、リグフォレシア産のものが有名とは聞きましたが、あまり一般的なものではないので食したことは無いですね」
「やっぱりそうか……パスタ以外の麺類ってあんま有名じゃないからなぁ」
この世界にもいちおうラーメンや蕎麦は存在する。ラーメンは六王祭で見たし、蕎麦に関してはフォルスさんが栽培していたり、アニマが言う通りリグフォレシアで多く栽培されている。
クロの丸ごと食べ歩きガイドを見ると、シンフォニア王国の首都にも蕎麦屋っぽい店があるのだが、場所が結構遠いので行ったことが無かった。いつか行きたいとは思っているのだが……。
「じゃあ、蕎麦にしようか……とりあえず、一口食べてみて味とかが苦手そうなら別のものを食べよう。無理はしなくていいからね」
「分かりました。しかし、ご主人様……蕎麦というものは、すぐに作れるものなのでしょうか?」
「ああ、実はフォルスさんに蕎麦粉をいっぱい貰ったから……前にアリスに麺にしてもらったものがマジックボックスに入ってるから、茹でるだけで大丈夫だよ」
フォルスさんが蕎麦粉……蕎麦の実かな? ともかく、蕎麦を栽培しており、以前六王祭で助けたお礼にと大量に蕎麦粉を貰った。
もちろん俺に麺をうつ技術は無いので、麺はアリスに作ってもらって茹でるだけで作れる状態にしてもらっている。茹で方もアリスのメモがあるので、大丈夫だ。
「蕎麦だけだとアレだし、あとは鶏肉でも軽く炒めよう。これを使って……」
「これは……ふむ? 爽やかで柑橘系の匂いですが……はて? なんの果実か分かりませんね」
「これは柚子胡椒だね。柚子ってのは俺の居た世界の果実で、鶏肉とは相性がいいんだよ」
「なるほど! さすが、ご主人様、そのような珍しいものまで所持しているとは!」
「あ、あはは、いや、これは香織さんに貰ったんだけど……まぁ、とにかく作ろうか、アニマは鶏肉を一口サイズに切ってくれるかな?」
「了解しました! お任せください!!」
アニマに鶏肉を切ってもらっている間に湯を沸かして、蕎麦を茹でる準備を行う。とりあえずアリスのメモ通りにやればいいので安心である。
ふむふむ、これは生麺だから……。
料理……とはいっても、蕎麦を茹でて鶏肉を柚子胡椒で炒めるだけなので、料理自体はすぐに終わった。とりあえずアニマが蕎麦が初めてということなので、一口だけ食べてもらう。
「……なるほど、香りがいいですね。ただ、少々味の薄さが気になるところではあります」
「ああ、これは麺つゆに付けて食べるんだよ。いまは、味見だからそのまま食べてもらったけどね」
「ふむ、なるほど……」
「アニマが問題なさそうなら、ざるに乗せて……よし、完成」
本当は天ぷらとかあればいいのだろうが、俺が天ぷらを揚げるのはちょっと難易度が高いなぁ……ジークさんにある程度料理は教わっているとはいえ、ジークさんのレパートリーに無いものは教わってないので、天ぷらはよく分からない。
アリスとかは余裕で知ってそうだし、香織さんも間違いなく作れるだろうから、簡単な作り方だけそのうちに教わってもいいかもしれないな。
シリアス先輩「よし、蕎麦ということは……あ~んとかそういうイチャラブ系はないな」
???「鶏肉がいけるのでは?」
シリアス先輩「…………」




