頑張り屋に休息を②
海上コテージというとなんとなく南国のイメージがある。あとはなんかインドネシアの方の島が沢山あるところなんかにも、そういうリゾートみたいな場所があると聞いたことがある様な気がする。
まぁ、それはともかくとしてハイドラ王国は人界の中でも一年を通して温かな気候であるため、海のリゾートにはかなり適した環境といえる。
実際以前の海水浴の際のビーチに今回の海上コテージと海に関する観光地が豊富である。
そして転移魔法で目的の場所に到着すると、イメージしていた通りの海の上に木造りの家がある形の海上コテージが見えた。
海も物凄く綺麗だし、この周辺はプライベートビーチだと聞いているので……たぶん相当広い。流石は富裕層をターゲットにしたリゾートというだけはあって、スケールがでかい。
「この辺は全部プライベートビーチなんだよね?」
「おそらくは……遠方に結界魔法があるので、あの位置までが範囲では無いでしょうか?」
「……なるほど」
アニマは当たり前のように言うが、俺は結界魔法の探知とかはできないのでよく分からない。いや、正しくはできることはできるのだが範囲が狭いので、アニマが言っている結界魔法に関しては範囲外で分からないというべきだ。
これが、魔力を持った人とかの位置を……というのであれば、感応魔法のおかげでもう少し広いのだが……まぁ、それでも熟練の人に比べれば感知範囲は狭いと言って差し支えない。
「じゃあ、アニマさっそく中に入ろうか」
「はい! ご主人様の身の回りのお世話はお任せください!!」
そう言ってグッと拳を握ってやる気をアピールするアニマは、本来何の目的で来たのかを忘れているよう……ああ、いや、具体的になにをするとは言ってないか。となると、アニマ的には仕事から離れている現状で、既に休憩できているつもりなのだろう。
「とりあえず最初はひと眠りかな?」
「仮眠を取られるということでしょうか?」
「うん。俺じゃなくてアニマがね」
「え? じ、自分ですか!? しかし自分は元気で……」
「なんか、数日寝てない子がいるらしくて……ね?」
「あぅ…‥そ、そそ、それは……はぃ」
俺が笑顔で告げると、アニマは「しまった、そうだった」と言いたげな表情で視線を泳がせる。どうやら、俺とのデートということでテンションが上がった結果、自分が休んでないということを忘れていたらしい。
そういうところである。本当に、そういうところ……まぁ、とりあえず最初はしっかりアニマを休ませよう。とはいえ、アニマをひとり寝室に向かわせて休むように言ってもしっかり寝るとは思えないので、その辺りも策を考えてある。
コテージに入ると広いリビングが出迎えてくれ、大きなソファーなどがあったので俺が考えていることを実行するには問題なさそうだ。
「じゃあ、アニマ、さっそく仮眠を取ってもらうわけなんだけど……目を離すを心配だから、ソファー寝てもらおうと思うんだけど、大丈夫?」
「はっ! 問題ありません。自分はむしろ床でも……」
「……よし、この位置がいいかな?」
「……あの、ご主人様? その、なぜソファーに座っているのでしょうか? あ、いえ、座るのはまったく問題ないのですが……なぜそんな端に?」
ソファーの端に座った俺を見て、アニマが不思議そうに首を傾げる。それに苦笑しつつ俺は軽く手で腿を払って告げる。
「うん。アニマには、俺の膝枕で眠ってもらおうかと思って」
「…………は? あ、え? じ、自分がご主人様を膝枕するのではなく……じ、自分が、ご主人様に膝枕をしてもらって眠るということでしょうか?」
「その通り。ああ、もちろん嫌なら無理にとは言わないけど……」
「い、いえ!? 決して嫌ではなく、むしろ嬉しいですが……あっ、でも、その、不敬が過ぎるのでは?」
「いや、そんなことはまったく無い。というか俺の方から提案してるわけだしね」
俺の膝枕の寝心地がどうかはわからないが、よく寝っ転がるフェイトさんは快適だとか言ってたので、ある程度は問題ないのではないかなぁと思う。
これならアニマがしっかり寝ているかを近くで見つつ、ついでに恋人っぽいこともできるといういい作戦だと思う。
そして、思ったよりも好感触っぽい。もっと強硬に遠慮とかするかと思ったのだが、アニマは戸惑うような表情は浮かべているものの、チラチラと俺の腿を見ており耳もピクピクと動いているので、嬉しい気持ちを抑えようとしている感じがする。
「というわけで、ほら、アニマ……おいで」
「は、はぃ……そ、その、失礼します」
微笑みながら告げると、アニマは顔を赤くしつつも頷き、帽子とマントを脱いでテーブルの上において、少し緊張した面持ちで俺の腿の上に頭を乗せた。
「ご、ご主人様!? 重くないでしょうか?」
「大丈夫、全然重くないよ。アニマの方は、どうかな? ちゃんと寝れそう?」
「あっ、その……幸せ過ぎて頭がおかしくなりそうといいますか……その……凄く安心はできるので……眠るのはまったく問題なく……はい」
「そっか、それならよかった。じゃあ、さっそく少し休もうか……おやすみ、アニマ」
「……おやすみなさい。ご主人様」
膝枕をしたままでアニマの頭を軽く撫でると、アニマは目を細め心地よさそうな表情を浮かべたあとで、俺の言葉に従って目を閉じた。
なんだかんだで疲労は溜まっていたのか、そのまま少しすると小さく寝息が聞こえ始めてきた。
シリアス先輩「ぐぁっ、く、くそっ……アニマに対しては、快人側の方がグイグイリードするから、いつもとは雰囲気の違う感じが……」
???「私……アリスちゃんとか、アニマさんに関しては強いんですよねぇ……」
シリアス先輩「いや、アリスに関しては、アリスが雑魚すぎるだけのような……自分で言ってるぐらいだし……」




