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閑話・三人娘の慰安旅行③



 ある程度部屋で過ごしたあと、リリアたち三人は旅館内の食堂に居た。この旅館はマキナの力により、リリアがディスプレイを操作するだけで本格的な料理が出現するのだが……。


「……料理名を見ても、分からないんですよね」

「そうですね。変なものはないとは思いますが、ここはせっかくの機会ですし私たちで作りましょう」

「ですね。私とジークが居れば問題ないでしょう。リリは、その辺で見ていてください」

「……え?」


 そう、ほとんど日本料理の名前だったため、リリアたちはそれがどんな料理か分からなかったので、ディスプレイを用いて料理を用意することはやめ、三人で料理を行うことに決めた。

 料理が得意なジークリンデや、メイドとして料理の腕も確かなルナマリアが居る上、キッチンの器具の使い方もマキナが用意してくれた説明で分かり、食材もマジックボックス内にあるので問題ない。


「あ、あの、私も手伝いますよ? ほ、ほら、騎士団時代の野営でも私はほぼ料理することなかったですし……」

「そりゃ、リリは師団長でしたし、それを抜きにしても王女でしたからね」

「というか、騎士団以外にも料理の経験なんて無いでしょ? ミヤマ様と一緒に行った旅行の際には、中々凄惨な光景を披露したとか?」

「うぐっ……で、でも、その、せっかくの機会に私だけ除け者というのも……」


 事実としてリリアに料理の経験は皆無だ。快人と一緒に魔界旅行をした際に、少し経験したと言えなくも無いが……まな板ごと食材を叩き切ったりしたぐらいでもある。

 ただ親友ふたりが料理をする姿をただ見て待っているだけというのもバツが悪く、せめて何か協力できないかという期待の目を込めて見る。

 すると、ジークリンデとルナマリアは顔を見合わせ、少しして苦笑する。


「……ルナ、私たちが指導すれば大丈夫では? 特に力加減などを……」

「そうですね。完全に1から教えるのは骨が折れそうですが、簡単なことぐらいなら……」

「ルナ……ジーク……」


 リリアが調理に参加することを了承してくれたふたりを見て、リリアは感極まったような表情を浮かべる。そして三人で手分けして、食材や調理器具の準備を行って、リリアに料理の指導をしていたのだが……。


「……む、難しいですね」

「思った以上にダメな感じですね。いや、予想はしていましたし、ほぼ人生初の料理だとこんなもんだとは思いますが……」


 リリアは元王女であり、独立後も公爵家の当主……料理の経験など本当に皆無である。そうすると、いくらルナマリアとジークリンデが指導したとしても、すぐに上手く調理できるようになるはずもない。

 ルナマリアがそう考えていると、ふとジークリンデがなにかを思いついたような表情を浮かべて口を開く。


「……リリ、ちょっと提案なんですが……いまから……」









 ジークリンデがとある提案をしてから数十分後、リリアはまな板の上で熟練の職人かと思うような動きで包丁を使い、食材を綺麗に切る。そしてそのまま流れるような動きでフライパンに向かい、途中で軽くフランベを行いながら調理を進め……。


「……完成です! 白身魚のムニエルと季節の野菜のソテー……ふふ、少しコツが分かってきた気がしますね」

「……リリ」

「なんですか、ルナ?」

「一発ぶん殴っていいですか?」

「なんですか!? え? 駄目でした?」

「逆です逆、完璧すぎてなんかムカつきます……私があのレベルの包丁さばきや調理をできるようになるまでどれだけかかったか、それをちょっとコツを掴むだけでこの天才は……」


 そう、リリアの包丁さばきや調理の動きは熟練のルナマリアから見ても素晴らしいと表現するほかなく、料理を始めて1時間程度でそれをやられてしまうと、なんとなく釈然としないものがあった。


「い、いや、私はあくまで『ジークとルナの動きを模倣』しただけで、私ではなくふたりが凄いのだと思いますけど……」

「一回見ただけで、動きを完全に模倣できるのなんて貴女ぐらいなんですよ……本当に理不尽なレベルで天才ですね」

「う~ん。提案した私が言うのもなんですが、ここまでうまく行くとは……リリは器用ですし、力加減とかのコツさえ掴めば、他にも簡単に応用できるでしょうし、これを何度か繰り返せば普通に料理ができるようになりそうな気がしますね」


 そう、ジークリンデが行った提案とは、自分とルナマリアが調理する姿をリリアに見せ、その動きを寸分たがわずコピーするようにというものだった。

 普通ならそんなことはできないが、リリアは桁外れの天才であり、己の身体能力の限界を超えていたり、特殊な能力が必須だったりというわけでもなければ、一度見た動きを完璧に模倣することなど容易い。

 そして一度力加減などのコツを掴んでしまえば、上達スピードも桁違いであり、実際今日の料理の準備が全て終わるころには、手順の簡単な料理であれば熟練の料理人レベルに仕上げられるようになっていた。




シリアス先輩「ま、まぁ、確かにリリアの才能なら見本があればトレースするのは余裕か……ウルペクラも似たようなことできるんだよな……才能のチート」


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です!3話続けて読みました!今回からマキナさんから贈られた富士山と宿の回でしたがリリアさん達が快人さん達が馴染みあるものを触れる様子で戸惑う様子等が新鮮でした! そしてテレビのア…
[一言]  おっと、料理の話か。またリリアさんがまな板を切ってしまうのだろうか……いや、まぁ、2人がついてるから大惨事にはならなかったね。  なっ!まさかのリリアさん料理下手克服!? なるほど、今ま…
[良い点] リリアさんすごすぎる。まさかその領域の天才だったとは。メイドかおまけ
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