閑話・三人娘の慰安旅行②
異世界要素だらけといっていい温泉旅館で、室内にある色々なものを見てはみたが、用途の分からないものも多くリリアたちは首を傾げることが多かった。
「……う、う~ん。これは、分からないものには触れない方がよさそうですね」
「そうですね。その辺りは次回に、ミヤマ様やユズキ様やクスノキ様といった、異世界人の方を連れてきて教えてもらいましょう。マジックボックス内にある魔法具を使えばいいですし、用途の分かるものに関しては使ってみてもいいでしょうね」
困惑した表情で呟くリリアにルナマリアも同意する。部屋の中なので危険なものがある可能性は低いが、使い方を間違えて壊してしまう可能性はあり得る。異世界の神に下賜された品々であり、トリニィアでは見ないもの……価値も分からないものばかりなので、迂闊に触れないようにしようと結論付けた。
「なんというか、カイトさんたちがこちらの世界に来た時もこんな気持ちだったのかもしれませんね」
「確かに、見るものがなにもかも初めてというのは、なんとも不安になる感覚ですね。カイトさんたちが突然異世界に来て大変な思いをしていたというのは、頭では理解していたつもりでしたが、実際にこうして体験してみると認識が甘かったかもしれないと感じますね」
ジークリンデが未知の品だらけの室内を見渡しながら、異世界に召喚されたばかりのころの快人たちもこんな気持ちだったのかと呟くと、リリアもそれに同意してどこかしみじみとした表素で頷く。
とりあえず、分かるものは使用して分からないものは下手に触れずにあとで快人たちに聞こうと結論付けた三人は、ひとまずジークリンデが教えてくれた座布団の上に座る。
「とりあえずなにか飲みましょうか……これがお茶、ですよね? ジーク、これは分かりますか?」
「リョクチャというお茶だったと思います。父が友人に貰って来たことがあるので、ある程度は淹れ方が分かるので私が淹れましょう」
室内に備え付けられている品を見てルナマリアが問いかけると、ジークリンデが知っていたようでお茶を淹れる準備をし始める。
「……あれ? そういえば、リリ。このお茶などは、誰がどうやって用意しているのですか?」
「エデン様のお話では、自動で補充されるとか……あと、この世界を調整するディスプレイ? という機能で、いろいろ調整も……おや?」
ルナマリアに答えつつ空中にこの世界の所有者の権限でもある操作ディスプレイを表示させると、リリアはそこに表示されている項目の中に「温泉旅館」というものが増えているのに気づいた。
操作してみると、料理の用意や温泉の準備、室内の清掃などがディスプレイを操作するだけで行えるらしく、流石神が作り出した常識の範疇外の品だと感心したのも束の間、温泉旅館の項目の中に『魔法具の説明』というものを見つけて、目を輝かせた。
「ルナ! ジーク! 見てください。どうやらエデン様は、旅館内にある異世界の機械製品を模した魔法具の詳細な説明を用意してくださっているみたいです。つまりこれを見れば、謎の品々の使い方も分かりますよ!」
「おぉ、流石抜かりがないですね。では、この机の上にあるものは……ふむ…‥ああ、この中にお湯が入っているのですね。温度を保ったまま保存できる……マジックボックスのような品でしょうか?」
「お湯に限定したマジックボックスですかね? とりあえず、これを使ってお茶を淹れましょう」
室内の品の使い方が分かると、一気にできることが増えた。ジークリンデがポットを使ってお茶を淹れ始め、リリアは少し前にジークリンデが分からないといったテレビについて調べる。
「……ああ、なるほど、これがカイトさんたちが言っていたテレビという品なのですね。なんでも、映像魔法具に近いものらしいですが……」
「最近急速に発展している技術ですね。異世界ではすでに実用化されているということですか……」
「カイトさんの話では、このテレビという道具は大抵の家庭にひとつはあるらしいですよ」
「そうなのですか!? さすが異世界……リリ、せっかくですし使ってみましょう!」
リリアの説明を聞いてルナマリアも興味を持ったらしく、少ししてお茶を用意したジークリンデも加わって、三人で説明を見てテレビのリモコンを使って操作した。
「……これが、異世界の映像……カイトさんたちとは姿が違いますが、種族の違いでしょうか?」
「確か、実際に起こったことを記録しているんでしたよね? 異世界には魔物もいるんですね」
「あっ、海水浴に行った際にクロムエイナ様に少し聞いたことがあります。たしか、異世界にはニジゲンと呼ばれる別世界があって、そこはまた別の法則で成り立っているとか……」
たまたまつけたテレビに映ったのはアニメの映像であり、三人は非常に興味深そうな表情でそれを見つめる。後にこの二次元に関する誤解に関して、快人たちが説明に苦労することになるのだが……それはまた別の話である。
シリアス先輩「意外とちゃんとサポート体制がしっかりしてる」
マキナ「当たり前だよ、私を誰だと思ってるの?」
シリアス先輩「作中で一番ヤベェやつ……」




