新ブランドとそれぞれ反応⑤
王であるアイシスがお茶会の用意をしているという状況を見て、ラサルとウルペクラは明らかに慌てた様子だった。
「あ、アイシス様!? お茶の用意なんて私たちがやりますよ!?」
「えエ、アイシス様のお手を煩わせる必要ハ……」
「……ううん……たまには私が……皆が来る前は……自分で淹れてたから……紅茶を淹れるのは結構得意……あと……ケーキも……焼いてる」
優し気な笑顔でそう告げるアイシスを見て、ラサルとウルペクラは顔を見合わせたあとで苦笑する。
「アイシス様がそう仰るなラ、異を唱えるつもりはありませんガ……たタ、このまま全てお任せするのも気が引けてしまいまのデ、我々にもお手伝いをさせていただけたらと思いまス」
「ラサルの言う通りっす! 是非、私たちにも何か仕事を……」
「……そう? ……ありがとう……それじゃあ……デコレーションとか手伝ってくれるかな?」
アイシスが自分たちのために紅茶を用意して、ケーキまで焼いてくれているというのはラサルにとってもウルペクラにとっても嬉しいことではあるが、王たるアイシスを働かせてしまって自分たちがなにもしないというのは罪悪感に耐えられないので、手伝いを申し出た。
するとアイシスは嬉しそうな笑みを浮かべて、ふたりの申し出を了承した。
そして、それだけでは終わらない。ラサルとウルペクラに続いて、イリスとポラリスが、更に少ししてシリウスとスピカがキッチンにやってきて、同様にアイシスへの手伝いを申し出たため最終的には全員でお茶会の準備をする形となった。
「それじゃ、シリウスと! スピカは、私と一緒にテーブルの準備などをしよう。ここに全員固まっていても人員の無駄だからね」
「はいな~せっかくやし~飾りつけもしたいな。ちょぉ、花でも飾ってみようか~」
「……いま、私の名前だけやたら強調してなかったか?」
全員でキッチンに居ても仕方ないので半分に分かれることに決め、ポラリス、シリウス、スピカの三人はテーブルなどのセッティングに向かうことになった。
そして残ったメンバーはアイシスと一緒に、紅茶と菓子の準備をする。
「それにしても、カイト様のオリジナルブレンド、楽しみですね!」
「……うん……カイトが選んだんだから……絶対……美味しい」
「間違いないっすね!」
笑顔で話すアイシスに、ウルペクラもどこか嬉しそうな様子で同意をする。
「紅茶ブランドに関しても、抽選も相当の倍率と聞くしスタート段階から注目の高さがうかがえるな」
「確かニ、今回のケースのように事前の注目度が高い場合ハ、立ち上げの時期がもっとも賑わうだろうガ、それを考慮してもこの注目度の高さは流石というべきだろウ」
ケーキのデコレーションを行いながらイリスとラサルも快人の紅茶ブランドについての話題を話す。元々アイシスがある程度準備していたこともあって、お茶会の用意にはそれほど時間がかからず、ケーキが綺麗に完成したタイミングでアイシスを含めた四人は城の中で景色のいい部屋に向かった。
そこにはポラリスたちが既にテーブルのセッティングを終えており、それぞれ席についてお茶会はスタートした。
「あ、美味しいっすね! 甘くて優しい味わいが、カイト様らしくていい感じっす!」
「せやね~。上手にブレンドしてるなぁ、やっぱり紅茶ブランド創るぐらいやから~紅茶に関しても詳しいんかなぁ?」
「どうっすかね? 今度聞いてみるっす」
アイシスの配下たちはなんだかんだで皆仲が良く、性格的な相性がいいのかこういった場では話が弾むことが多い。
「なるほど、素晴らしい味わいだ。甘めの味が私好みだな……」
「以外だナ。舌先まで筋肉繊維で構築されているような虫女に味の良し悪しが分かるとハ……」
「隣に死肉くさい女さえ居なければ、香りも楽しめたのだが、惜しいな」
「……ハ?」
「……あ?」
「貴様ら、ここで喧嘩を始めたら城外に吹き飛ばすからな、覚悟しておけよ」
例によって睨み合うシリウスとラサルに、額に青筋を浮かべたイリスが注意するのも見慣れた光景だ。
「……ふふ」
「アイシス様、楽しそうですね?」
「……うん……こうやって……当たり前のようにいろんなことに付き合ってくれる……優しい家族が出来て……凄く嬉しい」
「それは、なんとも光栄なお言葉です」
ポラリスの質問に答えるアイシスの表情はとても幸せそうだった。こうした些細な行事の準備であっても、声をかけたりする必要も無く自然と協力し合い、なんだかんだで仲良く同じテーブルを囲んで笑い合えるよう者たちが己の配下になってくれて本当によかったと、そんな幸せな気持ちを噛みしめていた。
「そういえばふと考えたが、我らも六人とそれなりの人数になったことだし、他の陣営に倣って通称のようなものがあってもいいと思う」
「幹部の呼称みたいな感じかい? 筆頭殿は意外とそういう肩書みたいなのが好きだよね」
「面白そうっすけど、私も幹部のカウントでいいすかね? 皆に比べて、まだまだだいぶ弱っちいっすけど……」
「別にええんやない? 強さで決めるんやろうのうて~初期メンバーみたいな感じでええと思うなぁ。それに、ウルやったらすぐにウチらに負けへんぐらいに強おなると思うよ~」
「通称というと、戦王五将や七姫といったものか……そういえば、冥王様の陣営にはそういうものはないのだろうか?」
「あそこは色々特殊だからナ」
こうしてひとりが話題を投げかければ、自然と全員が加わっていくようなそんな雰囲気は、アイシスが心から求めていたものであり、そうした様子を見ているだけでも本当に幸せだった。
「……じゃあ……皆で考えてみようか」
「「「「「「はい!」」」」」」
こうして、今日も魔界最北端の極寒の地にある居城には、温かな笑い声が響いていた。
シリアス先輩「基本的にこの陣営は仲が良くてワイワイしてるんだよな」
???「おかしいっすね? ウチ……こほん。アリスちゃんのところとなにが違うんすかね?」
シリアス先輩「……王の腹黒さ……かな」




