新ブランドとそれぞれ反応④
魔界最北端にある死の大地。死王アイシスの居城では配下のひとりであるラサルが、同じく配下……というよりは現状アイシスのペットのような立場であるウルペクラに渡された用紙を見ていた。
ラサルはいままでもいろいろとウルペクラに魔法に関して教えており、実質的にウルペクラの魔法の師といっていいポジションにある。そして、ウルペクラは人化ではなく体を作り変えることにより、獣人型の魔族になることを目標としており、そのための術式の素案を考えたので見て欲しいと持ってきた。
しばらく真剣な表情でかなり複雑な術式の書かれた紙を見ていたラサルは、軽くため息を吐く。
「……呆れるほどに天才だなお前ハ、よくもまァ、魔法を覚えて1年も経たぬ間にこのレベルの術式を組んだものダ。無論、粗はまだ多いガ、これを元に詰めていけば50年ほどあれバ、お前の願いは実現するだろうナ」
「え~50年もかかるんすか……」
「適当なところで妥協するならもっと早いガ、お前が求めるような完全変異に関してハ、かなり細かく微調整を行わなければ意味がなイ。例えバ、人族から同型の魔族にといった具合ニ、元の体のままで性質だけを変えるだけというのであれバ、それほど難しくは無いのだがナ……」
「それじゃ意味ないっすよ! 私は、アイシス様とカイト様の性質を両方併せ持った獣人型魔族になりたいんすから!」
「……いわば人間族並みの成長速度を持った魔族になりたいというわけだろウ? それは本当に簡単なことではないというカ、通常であればまず不可能だガ……お前の中にアイシス様とカイト様の魔力が混ざり合った状態で存在しているが故ニ、上手くやればできてしまいそうなのが恐ろしいナ。だガ、前例がないのは間違いないのだかラ、慎重にやるべきダ。お前とて失敗はしたくないだろウ?」
「うぐっ、そうっすね……はぁ、やっぱり時間かけてゆっくりやるしかないっすか……もどかしいっすねぇ」
ガックリと肩を落としつつも、ある程度は予想通りだったのかウルペクラは納得した様子で頷く。それを見ながら、ラサルはどこか呆れたような表情を浮かべていた。
(本来なら数千年カ、あるいは数万年単位でかかりそうなテーマなんだがナ……私が持つ知識と経験ニ、過去の研修の副産物などに加エ、アイシス様の保有する禁書も含めたあらゆる参考資料、そしてウルペクラの天才的な発想とセンス……正直10年あれば完成しそうな気はするガ、ガキらしくこらえ性の無い部分があるからナ、完成予想はわざと長めに伝えてじっくりやらせた方がいいだろウ。まァ、50年でも早すぎるレベルなのは呆れる話だがナ……)
呆れるほどに天才という言葉がよく似合う弟子を見て、呆れたような……それでいて微笑ましそうな表情を浮かべていたラサルだが、ふとあることに気付いて壁にかけられた時計に目を向けた。
「そろそろ茶会の準備をしたほうがよさそうだナ」
「あっ、そうっすね! カイト様の紅茶を飲むんすよね!! カイト様のオリジナルブランドなんすから、美味しいのは当然っすけど、せっかくだからブランド立ち上げ日に皆で飲もうって決めたせいで、だいぶ待ち遠しかったっすよ!」
今日はアイシスを含めた死王陣営全員で、快人のオリジナルブレンドの紅茶を飲みつつお茶会を行う予定になっており、ウルペクラは嬉しそうに尻尾を振る。
まだお茶会の予定時間には早いが、そろそろ準備はしておくべきタイミングである。
「イリスとかがもう準備始めてるかもしれないっすね」
「そうだナ……とりあえず、シリウスの馬鹿は絶対にキッチンに入れないようにすべきだナ」
「お茶会前に喧嘩とかはやめて欲しいっす。まぁ、シリウスをキッチンに入れるべきじゃないってのは同感っすけどね」
部屋から出て雑談をしながらキッチンへ向かう。ふたりが口にしたようにシリウスは料理がかなり下手……虫人型魔族の味覚の性質上、やたらめったらなんでも甘く味付けする上に大雑把な性格なので、料理の腕は酷いものである。
そんな風にふたりが話しながらキッチンに辿り着くと……。
「……あっ……ウルにラサル……ふたりも……来たんだ」
「「アイシス様ぁ!?」」
そこには、エプロンを付けて笑顔でケーキらしきものを作っているアイシスの姿があった。
シリアス先輩「アニマとのイチャイチャはタイトル詐欺……な、なに? ……ち、違う……だと?」
???「あ~これはアレっすかね。それぞれの反応~が終わった後で、アニマさんとの話は別にあるパターンっすかね」
シリアス先輩「それはむしろ、私にとって状況が悪化したのでは?」




