新ブランドとそれぞれ反応③
正直言って、その情報がキャラウェイからもたらされた時は……「ああ、やっぱりか」という感じだった。新ブランドの立ち上げに関しては、アニマは精力的に働いてくれていたのだが、どうにもやる気がみなぎり過ぎているという感じはあった。
理由もなんとなくわかる。今回の新ブランド立ち上げに関しては、普段と仕事と違って多少ではあるが俺も参加して関わっていたので、俺のためになにかをしたいという気持ちが強いアニマが張り切るのも考えてみれば必然である。
特に実際に立ち上げ日とか、その辺りのタイミングではやる気が空回りするのではないかと心配はしており、キャラウェイに事前にコッソリとアニマの様子に問題がありそうだったら教えてほしいと言っておいた。
だいぶ精神的に成長しているとはいえ、猪突猛進というか突っ走るところがあるの相変わらずなので、どこかで暴走気味になるだあろうと予想していたら……案の定である。
アニマの方にもやってしまったという自覚はあるのか、俺の部屋に連行するとシュンとした様子で地面に正座していた。
いや、もちろんアニマが俺のために頑張ってくれたというのは分かっているのだが、それはそれとして無茶を許すと、本当に不眠不休で働こうとするので困りものだ。
「……それで、アニマ?」
「うっ、あっ、はい……そ、その、ここしばらく眠っていません」
「休憩は?」
「…‥ひ、日に三度……程度……その……」
「十分だけ?」
「……はぃ」
さらに困った要素として、アニマ自身が伯爵級レベルまで成長したことで、以前よりさらに無茶が利くようになってしまっているという点だ。
かつてのイータとシータと初遭遇した際には、数日不眠不休で活動していれば明らかに本調子ではなくなっていたのだが、いまは同じぐらい活動していても平気そうにしているので傍目には気付きにくい。
ただ、アニマは元々がブラックベアーということもあって、一部の高位魔族とは違って普通に睡眠も食事も必要だ。まぁ、それでも本人が言う通り数ヶ月不眠不休の飲まず食わずでも問題ないぐらいのポテンシャルはあるが、それは眠くならないわけでもお腹が空かないわけでもない。
「アニマ、眠気とかは?」
「まったく問題ありません」
「……アニマ?」
「あ、その……気を抜いたりすると、少し眠たくなったりとか……そ、そういうことはあります……はい」
実際のところはやる気が溢れすぎて眠気や空腹を無視していた状態というのが適切ではあるが、ともかく分かったからにはそれを見過ごす気はない。
「アニマが俺のために頑張ろうとしてくれてるのは嬉しいし、俺もいろいろ頼りにしちゃってて仕事が増えてるってのもあるかもしれない。けど、睡眠や休憩に関しては……いままでも、何度も言ったよね?」
「………はぃ。も、申し訳ありません」
いや、別にアニマも俺が言ったことを無視しようとしたりというわけでは無いのだろうが、やる気が溢れると頭から抜け落ちてしまうのはあるのだろう。なに過去に何度かやっているので……本当に、真面目で頑張り屋過ぎるのも考えものである。
その後も少し小言を言って、アニマはシュンとした様子で聞いていたが……とりあえず俺はアニマが心配なのが一番なので、長々説教したりはせずに適当なところで切り上げる。
「……とりあえず、まずはしっかり休まないとね」
「はっ、はい!」
「けど、ちょっと目を離すとまたなにか気になって仕事しそうな気もするし……」
「うぐっ……あぅ……」
「とりあえず一旦物理的に仕事から離して休憩させることにしたから……それじゃ、行くよ」
「はぇ? 行く? ど、どちらにでしょう?」
これ以上説教をする気はないが、このままアニマを放置する気も無い。新ブランドは今日から立ち上げだし、推移とかが気になってゆっくり休めないという可能性も十分あり得る。
「とりあえず、監視してないと心配だし、家に居ると仕事が気になるだろうから……出かけるよ。アリスに転移門に目的地を入力してもらってるから、すぐに着くし……とりあえず着いたら、まずはひと眠りすること、いいね?」
「……は、はい。あ、えっと……ご主人様も一緒に……ということでしょうか?」
「うん。とりあえず、アニマがしっかり休めるように見ておくつもりだけど……まぁ、そうは言いつつも一種のデートみたいなものかな?」
「ッ!?」
俺の言葉を聞いたアニマは伏せていた顔を上げて、パァッと明るい表情に変わった。嬉しそうに耳がピクピク動いているのが可愛らしく、尻尾を振る子犬を幻視した。
まぁ、俺の方もそんなに忙しくなかったとはいえあちこち動いてたし、休憩も兼ねてふたりでのんびり過ごすことにしよう。
シリアス先輩「……は? デート? 待て、待て待て!? 砂糖は、砂糖はひとまず終わったって、そう言ったじゃないですかぁぁぁぁ!!」
???「言ってねぇっすよ、誰も……勝手に先輩が一段落したと思ってただけでは?」




