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より深い関係になれたらいいな

本日は二話更新です。これは二話目なのでご注意を。


 大変甘く、一方的に俺だけが羞恥プレイに晒される状況から脱出し、クロと共に食べ歩きを続ける。

 今日に対し色々デートプランは考えてきたのだが、やっぱりクロと行くなら堅苦しいレストランとかではなく、ワイワイ楽しめる露店街だろうと、一緒に食べ歩きを行っている。


「あっ、カイトくん。ほら『インパクトフルーツ』があるよ」

「なにその物騒な名前……」


 なんか触ると衝撃波が襲いかかってきそうな名前を聞き、クロの指差す方を見て見ると、そこには青色の綺麗な円状の果実が売られていた。

 そしてインパクトフルーツを売っている露店の周囲では、何やら客らしき人々が、インパクトフルーツに向けてハンマーを振り下ろしている……なにこれ、怖い。


「アレはすっごく固い実なんだけど、強い衝撃を与えれば与える程柔らかく美味しくなるんだよ」

「へぇ~成程。だから皆ハンマーとかで殴ってるのか」


 要するに『インパクト』を『与える』と食べられるようになる果物らしい。流石異世界というべきか、面白い食べ物だ。

 少し興味が沸いたので買ってみたが、本当に砲丸みたいに固く、とてもじゃないが食べられる物だとは思えなかった。


「えっと、これをハンマーで叩いたりすればいいのかな?」

「そんなのいらないよ」

「へ?」


 露店ではハンマーを貸し出してくれているらしく、俺も周囲の人達に倣ってハンマーを使ってインパクトフルーツを柔らかくしようと考えたが、クロが明るい笑顔を浮かべて俺の手から果実を取る。

 そしてクロは手に持った果実に向かって、デコピンの形になったもう一方の手を近付け……


「ほいっ」

「ッ!?」


 直後に銃撃かと思うような音が響く……え? 今のって、デコピン? 本来デコピンで聞こえる筈も無いレベルの衝撃音が聞こえたんだけど……

 そしてクロは驚く俺に、インパクトフルーツを差し出してくる。


「はい、これでたぶん手でちぎれるぐらいに柔らかくなったよ」

「す、すげぇ……てか、あまりに凄い音で……果実が粉々になるかと思ったよ」

「あはは、ちゃんと手加減したから大丈夫」


 あ、あの炸裂音でも、手加減してたんだ……凄いなクロ。

 そして、渡されたインパクトフルーツを手に取ってみると、確かに先程とは違い、プニプニと餅のように柔らかくなっている。

 そしてクロに促されるまま手でちぎって食べて見ると、食感的には餅やまんじゅうみたいな感じで、しかし味は梨のようなあっさりした果物の味……何となく梨の味がする餅を食べてる気分だが、新鮮な食感も相まって結構美味しい。


「確かに、ちょっと変わった感じだけど……美味い」

「でしょ、美味しいよね……あっ、カイトくん、ちょっと動かないで」

「へ?」


 餅のような食感ながらちゃんと果汁が染み出してくる新鮮な感覚を味わっていると、クロが何かに気付いた様子で俺に動かないように告げ、俺が首を傾げると……俺の肩に手を置いて背伸びをして、俺の頬をペロッと一舐めした。


「なっ!?」

「ほっぺに果汁ついてたよ」


 なにこの夢のようなシチュエーション。ちょちょ、ちょっと思考が追いつかないって言うか、舐められた感触が凄く鮮明に頬に残ってて、クロの顔がまともに見れない。

 な、なんか、今日は本当によく顔が沸騰している気がする。













 昼時になったが、わりと食べ歩きでお腹も膨れていたので、そのまま露店街で軽食を食べ、クロと一緒に広場のベンチに座って食休みをする。

 クロはごく自然な動きで俺の膝の上に座ってきた……それ自体は昨日も体験したけど、ここで重要な問題が一つある。


 現在のクロはいつものハーフパンツでは無くプリーツスカート、普段スカートを穿かない子がスカート穿くと、それはもう普段以上に可愛らしく見えるので素晴らしいのだが、こうして膝に座られると……薄いスカートの中にあるクロのお尻の感触がより鮮明に伝わって来て、それは本当に凄まじい破壊力だ。

 具体的には俺も完全に石になったように動けない、だって動くと体の一部が反応してしまいそうな気がするから、ひたすら動かず無心になる努力をしていた。


 食休みどころか、精神の限界に挑戦する耐久バトルの様相を呈してくる中、必死に耐える俺にクロが更なる追い打ちをしかけてくる。


「……今日、本当に楽しい。カイトくんが一緒だと、いつも見てるものでも、凄くキラキラして見える……幸せだよ」

「う、うん。俺も、クロと一緒で凄く楽しい」


 大変可愛らしい笑顔でそんな事を告げられては、か細い俺の理性の色が今にも引きちぎられてしまいそうだ。


「あっ、そういえば! カイトくん、シロから聞いたんだけど……」

「え? なんか凄い嫌な予感のするフレーズ……」


 シロさんから聞いた? しかもこのタイミングで告げてくる言葉? それもう完全にロクな内容じゃないよね?

 純粋なクロが、あの天然女神の言葉を鵜呑みにしてるパターンだよね……い、一体何を言うつもりなんだ? もう、俺の精神力は限界だから、あんまし危険な発言は……


「デートのゴールは『宿泊施設』なんだよね! だから、ちゃんとアインに『今日は泊まってくる』って伝えといたから!」

「なぁっ!?」


 ほら、やっぱりそう言う感じのやつだった!? てか、シロさん、前回俺がその認識は間違ってるってちゃんと言ったのに、なに改めるどころか広めてるんだよ!!


「く、くく、クロ!? そそ、それ、意味分かって言ってるの?」

「……へ? 意味って、カイトくんと一緒に泊まるだけなんじゃないの?」


 そして、恋愛面には疎いからもしかしたらと思ったけど、やっぱりクロは意味なんて分かって無かった。

 普通にお泊まり会みたいなのを想像している健全な思考……こ、これは早急に誤解を解かなくちゃ……


「えっと、クロ、その話の流れで言う所の宿泊施設ってのは……よよ、要するに連れ込み宿とかと同じ意味合いで……」

「ふぇっ!?」


 直接的な表現を避けて遠回しに伝えて見ると、流石にクロも恋愛面に疎いとはいえ長く生きている事もあって、すぐに意味を理解したのか、顔を赤く染める。

 そして恥ずかしそうにもじもじと体を動かし始め、膝に伝わるお尻のもその動きに合わせて甘美な感触を伝わらせてくる。


「……そ、そそ、そうなんだ……ぼぼ、ボク、全然知らなくて……」


 どうしよう、クロが可愛すぎる。

 普段なかなか見れない、恥ずかしそうにしているクロは、もう殺人的に可愛らしく、胸の前で人差し指をつき合わせる仕草なんて生唾もので、俺の理性は風前の灯だった。


 こ、このままこの話の流れを続けるのは、本当にヤバいと考え、何とか話を切り替えようと口を開きかけたが……クロは逃してくれなかった。


「……で、でも……その……ボクは……カイトくんとなら……カイトくんが、したいなら……い、いいよ?」

「~~!?」

「ひゃぅ!? か、カイトくん!?」


 死んだ。もう完全に殺された……その台詞は反則だろう。

 俺はもう耐えきれなくなり、後ろからクロを思いっきり抱きしめてしまった。

 クロはビクッと体を反応させたが、特に抵抗する様子はなく俺に抱きしめられていて、クロの柔らかな温もりが俺の全身を満たしてくれる。

 そのまま手を、クロの胸のふくらみに手を……いや、待て馬鹿野郎!!


 まだ初デートだぞ!? しかも真昼間で外!! いくらクロがこっちに好意を向けて、受け入れてくれてるからってここで欲望に身を任せてどうする!!

 耐えろ、残った精神力を総動員しろ……クロだって恋愛経験が無いんだぞ、俺が初めての恋人なんだ。現に今だって不安な筈だ。微かに体が震えてるし、ここは俺がしっかりしなくちゃいけないんだ!

 欲望のままにがっついたりせず、ちゃんとゆっくり関係を深めていかないと……


「く、クロ……クロの気持ちは本当に嬉しいし、クロの事もっと好きになった。だけどほら、ゆっくり二人で勉強していこうっていったし、その辺も焦らずにゆっくりいこう」

「カイトくん……うん。ありがとう。本当は、ボクも、ちょっとだけ、怖かったから……」

「大丈夫、俺はこれからもクロと一緒だから……」

「うん……カイトくん、大好き」


 抱きしめる俺の手にクロも手を重ね、強く俺の腕を抱きしめてくる。

 心が深く通じ合うような感覚と、幸せを感じながら……少しだけ、本当に少しだけ、先程クロが言った事が現実になる日を、待ち遠しく感じた。


 拝啓、母さん、父さん――恋人って言うのは色々手探りな部分もあるけど、クロと一緒なら大丈夫だと思った。こうして絆と愛を互いに深め合って、少しずつ、足並みを揃えて――より深い関係になれたらいいな。

 




快人の精神力=オリハルコン……コイツ、耐えやがった……


そしてゲロ甘展開が続いたクロとのデートの残す所一話です。

砂糖吐きまくった方々に、シリアス先輩、安心してください。


……【次はアイシス編】

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― 新着の感想 ―
[良い点] まじでカイトどんな精神力してるんだ……オリハルコンか、オリハルコンなのか!? [一言] 死屍累々
[一言] ア゜ー……_(┐「﹃゜。)_…
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