新ブランドとそれぞれ反応①
いろいろとあったが、無事にオリジナルブランドの立ち上げの日となったわけだが……別に俺がなにかをするわけでもない。
ついでに言えば店舗をオープンしたりするわけでもなく、ほぼ委託の形なので記念キャンペーンとかそんなのがあるわけでもない。
宣伝こそある程度協力してもらったので、しっかりできているとは思うがどのぐらいの売り上げになるかは不明である。
商品の安定供給の体勢も整ったとのことだし、アニマが言うには最初は一日の販売数を制限して、店舗によっては抽選での販売にするらしい。
新ブランドのスタートで数日間商品を入荷待ちすることになったりしないように、日の販売数に制限をかけることで対策するとのことだ。
アニマやキャラウェイは今回の立ち上げに関していろいろ頑張ってくれていたし、いい感じに売れてくれるといいんだが……さて、どうなるんだろうか?
俺の知り合いで有名な人たちには試供品を配ったし、購入も俺やアニマを通すように頼んであるのでそういった方向で騒ぎになったりすることは無いだろう。
快人がそんな風に考えていた時、移動商会である三雲商会の本部にてメイドのフラウなんとも不満そうな表情を浮かべており、茜は対照的に呆れたような表情になっていた。
「どうして仕入れてくれないんですか? 会長のコネで優先して回してもらえるのでは? そうすれば私も身内得点で購入の優先権が貰えるかもと期待したんですが……」
「いや、ウチの客層と全然違う委託商品仕入れてどないすんねん……貴族の客層なんて増やしても、他の商品の売り上げに繋がりにくいし手間かかるだけやろ」
「メイドの客を増やせばいいじゃないですか、今やこの新ブランドはメイド界で再注目……仕入れれば、ウチの商会もメイドたちから一目置かれますよ」
「いややわ!? なんで、貴族以上に関わりとうないメイド界に注目されなあかんねん!?」
フラウが不満そうな理由は単純で、快人が立ち上げる紅茶の新ブランドの商品に関して、三雲商会では取り扱わないということが決まっており、それが残念だった様子だった。
たしかに茜は快人と個人的な付き合いがあり、優先的に商品を回してもらおと思えばできただろう。だが、今回の快人の紅茶ブランドは貴族や富裕層向けの高級志向の品であり、機動力と安さを武器とする三雲商会の客層とは全く被っていない。
「それにウチは、快人のところから竜王様の鱗のアクセサリーをほぼ独占契約で卸してもらえとるんやから、ここでさらに新ブランドの品まで回してもろうたら、変なやっかみ受けるだけやろ。出る杭は打たれるっちゅう言葉があってな。なんでもかんでも手を伸ばせばええんとちゃうんや」
「……変な格好してるくせに、こういう時だけド正論で返すのはズルくないですか?」
「変な恰好てなんやねん!? これは由緒正しき大阪のおばちゃん風ファッションで、分かる人が見たら大ウケ間違いなしの……」
「いままで知り合った異世界人の誰にもウケてなかったじゃないですか……」
「やめろやお前、正論で黙らされたからって別角度から人が気にしてるとこえぐってくるんやない」
不満そうに告げるフラウに、呆れた表情のままで返す茜。知らないものが見れば口論しているようにも見えるが、そもそもこのふたりにとってこの程度のやり取りはいつもの事であり、フラウの方も茜が一度却下した以上強硬に主張したりはしておらず、なんだかんだで会長としての茜の判断を支持している。
それはそれとして不満はあるので、茜がコッソリ気にしている部分を弄るのだが……。
「というか、普通に自分の金で買ってくればええやろ?」
「無理ですよ。倍率どれだけきついと思ってるんですか……抽選落ちました」
「あ~まぁ、そうなるわな。全然関係ないうちの商会にも何件か問い合わせくるぐらいやし、発売前からかなりの騒ぎやな……まぁ、アニマさんならこの話題性をええ感じに利用して、上手いことやるやろうけどな」
そこまで話したところで、茜はマジックボックスを取り出してその中から箱を取り出して、フラウの前に置いた。
「……ほれ、コレやるから、ワガママ言わんと我慢しい」
「こ、これは……ニフティのカップではないですか!? な、なぜ、お洒落とは無縁で紅茶が死ぬほど似合わない見た目の会長が、これを……」
「おいこら、喧嘩売ってんのかお前……いや、これは今回のブランド立ち上げ前……アルクレシア帝国の建国記念祭前後あたりやったか、その辺に快人からもろうたやつやな。ウチは使わんし、お前にやるわ」
「初期型じゃないですか!? さすが、会長! センスのある方の元には、センスのある品が集まるものなんですね!! 素敵です、私はいい主に仕えられて幸せですよ!」
「……お前、ホンマにええ性格してんな……」
ちょっと前に散々貶したことなど忘れたと言わんばかりに掌を返してはしゃぐフラウを見て、茜は呆れたようなため息とともに苦笑した。
シリアス先輩「胃痛を回避したメンバーか……いや、今回はネピュラの手腕もあって、リリアも胃痛になってないし、ある意味安心か?」
???「胃痛さんのことリリアって呼ぶのはやめてあげてくださいよ」
シリアス先輩「逆! 逆だから!?」




