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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした  作者: 灯台


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閑話・王と救済者①



 それはいまからおよそ一万九千年前、アリスの手によって魔界に秩序ができはじめていたころの話。


 イルネスは魔界の各地をのんびりと回る旅をしていた。そうしようと思った理由は特になく、快人に話した通り、己の力の振るい方を客観的に考えた結果だった。

 各地でほどほどに人助けをしながら自己研鑽をしつつ旅をする。魔眼といえる特殊な目と共に生まれ持った病魔を操る力に関しては、ほぼ使う機会もなく、時折他者の治療に用いる程度だった。


 当ても無く旅を行い目についたものを救い、救済者などとの通り名を得つつも、イルネス本人の心にはなにも響くことは無く各地を転々としていた。

 それは、いつしか魔界でも上から数えた方が早い実力者へとなった彼女が旅の途中にとある森に立ち寄った際のことだった。


(……これはぁ、ワザと気配を漏らしてると思っていいでしょうねぇ。常に一定方向からぁ、一定の強さで放たれる気配ぃ……誘われてますねぇ)


 気配のする方に視線は向けず、あくまで気付かないといった様子で歩き続けるイルネスだが、その額には一筋の汗が流れていた。


(まいりましたねぇ。気配の方向はわかるのにぃ、発生源が感知でしません~。これはぁ、久方ぶりの格上とみていいでしょうねぇ)


 森の奥から感じる気配……イルネスを品定めするように探っているというのは理解できる。だが、具体的にどこから気配が漂ってきているのか分からない。

 魔界でも上位の実力者であるイルネスが『気配に気付きながらも見つけられない』……相手はイルネスの索敵能力を正確に把握したうえで、そのギリギリをあえて突いてきているようだった。まるで何かを試すように……。


 相手の目的はわからないが、このままでは事態は好転せず、また明確に格上と思われるこの相手から逃げるのは難しい。

 そう判断したイルネスは、静かに臨戦態勢を取り気配のする森の方向へ足を進めた。


 ほどなくして、イルネスの前に黒いローブで全身を隠した何者かが現れる。


(……強いのは間違いありませんがぁ、妙な気配ですねぇ)


 目の前の存在に違和感を覚えつつもイルネスが構えを取ると、直後に黒いローブの人物が凄まじい速度で接近し襲い掛かってきた。

 圧倒的なスピードで振るわれる拳、イルネスと言えどもまともに受ければダメージは免れない拳を流れるような動きで掌を添えて受け流し、そのままイルネスは反撃の掌底を打ち込む。


(硬い……相当強力な防御術式を纏っているように感じられますがぁ、しかし~この感触はぁ……)


 ダメージなどまるで無いように続けざまに放たれる拳の嵐を捌きながら、違和感を覚えたイルネスは目にグッと力を籠める。

 すると、イルネスの目が青白い雷光のような光を放つ。この状態になることで、イルネスは術式を通していない空気中の魔力粒子まで目視することができるようになり、その目で目の前の敵を見る。


 イルネスの目はあくまで魔力が見えるだけであり、魔力を解析したり数値化したりといった芸当ができるわけではない。だが、多くの戦闘経験を有するイルネスは、魔力の見え方や流動である程度の情報を読み取ることができる。


(……これは~生物ではありませんねぇ。魔導人形か~ゴーレムか~ともかく遠隔で操作していますねぇ。そういう戦い方をする相手でしょうかぁ?)


 いま己が戦っているのは生物ではなく、ゴーレムに近い何かであると察しつつもイルネスは驚愕していた。イルネスと互角に戦えるレベルのゴーレムを作り出すという時点で、術者の技量の凄まじさが伝わってきたからだ。

 だが、遠隔操作された人形かゴーレムであるというのは、イルネスにとって有利に働く要素だった。魔力で遠隔操作している性質上、魔力の流れを目視すれば次の行動を先読みすることができる。

 ゴーレムが一体だけとは限らない以上、できるだけ早急な対処が望ましいと、そう考えたイルネスは魔力の流れからゴーレムの動きを先読みして拳を回避すると同時に、両手の掌底をゴーレムの体を挟み込むように当てる。


「破砕掌」


 それぞれの掌底から放たれた特殊な魔力衝撃が相手の体内でぶつかり合い、強烈に反発してその威力を何倍にも増幅させながら体内で炸裂する内部破壊の技。

 いかに強力な防御術式があろうと、内部まで強固とは限らない。イルネスの攻撃によってゴーレムの体は内部から爆発するように砕け、周囲に破片が散らばった。


 イルネスは追撃に備えて臨戦態勢を維持したまま散らばった破片に視線を動かし、そして驚愕した様子で目を見開いた。


(……なんて……雑な術式ですかぁ……まるで~即興で組んだようなぁ、あまりにも適当な術式ですぅ。これでは~遠隔操作するにしてもぉ、相当のズレがあるはずですがぁ……こんな術式で~あれほどの精度で遠隔操作できる技量の持ち主ですかぁ……)


 ハッキリ言ってゴーレムの術式は適当極まりなく。これを遠隔で動かそうと思えば、最悪1秒近いズレが起こっても不思議ではないというレベルだった。

 つまり、このゴーレムの術者は先ほどまで1秒近くイルネスの動きを先読みした上でゴーレムを操作していたということになり、そこから導き出される答えは……相手がイルネスが想像していた以上に格上であるということだった。


(これはぁ、困りましたねぇ。想像以上に~格上ですねぇ。こんな~使い捨てレベルの術式でぇ、あそこまでの戦闘力……これは~勝ち目はないかもしれませんねぇ)


 想像以上の相手の力に戦慄しつつも、イルネスがジッと森の奥を見つめていると、乾いた拍手の音が聞こえてきた……『真横から』。


「お見事、やりますね~」

「ッ!?!?」


 思わず飛び退くように距離を取るイルネスの頬には、一筋の汗が流れていた。イルネスは油断など一切していなかった。むしろ極限まで集中して周囲に注意を払っていた……それなのに全く気付くことができなかった。


「自己紹介をしておきましょう。私の名前は……あ~まぁ、シャルティアってそう呼んでくれればOKですよ。さてさて……ちょっとお話させてもらっても、いいですかね?」


 そう言って微笑む金髪の女性……シャルティアを見て、イルネスは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。これが、彼女と王との初めての遭遇だった。




シリアス先輩「イルネスの過去閑話……書籍版とは若干出会い方が違うのか?」

???「ですね。まぁ、その辺はWEB版仕様ってことで……」

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― 新着の感想 ―
[一言] ……あっ、そうか前に言ってたのは書籍版第8巻の話だったのか。てっきり11巻の第三章の時かと思ってた。  あれ、ゴーレム?ナイフではないのはweb版仕様って事か。個人的にだけど、雑な術式の…
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