イルネスとのお茶会⑤
イルネスさんの詳細な年齢はわからないが、少なくとも2万年以上前にアリスが魔界に六王と爵位級という制度を作り出した以前から居たというのは、以前のフレアさんの話で確定している。
「カイト様は~単一種の魔族というものはぁ、ご存知ですかぁ?」
「え、ええ、聞いたことはあります。魔力から生まれる魔族で、アインさんとかみたいに同族が存在せず単体のみの種族? って感じですよね。とはいえ、それ以上はよく知りませんが……」
「はいぃ。その認識で問題ありませんよぉ。単一種の魔族は~似た能力を持つ存在は居たとしてもぉ、まったく同じ種族は存在しない存在ですぅ。とはいえ~単一種の魔族自体がぁ、まだまだ謎の多い存在なのでぇ、分かっていない部分も多いのですがねぇ」
「そうなんですか?」
それは結構意外だった。魔界には多数の種族が存在するが、単一種の魔族というのはアインさんがそうであるように相当昔から存在しているはずだ。しかし現代でもまだ謎が多いというのは、それだけ珍しいということなのだろうか?
「単一種の魔族はぁ、個体差が非常に大きいのですぅ。生まれた時から成体といっていい成長した姿で生まれるものも居ればぁ、幼子の姿で生まれて成長する者もいますぅ。魔力や身体能力に関しても~バラバラですねぇ。それだけではなく~生まれ持った知識に関してもバラバラでぇ、生まれた時から多くのことを知っている者も居ればぁ、最低限の知識しか持たないものも居ますぅ」
「なんというか、統一性がないですね」
「はいぃ。単一種の魔族と一括りにしていますがぁ、その性質はあまりにもバラバラなんですよぉ。最新の学会などでは~生まれる際に収束した魔力に宿る情報が関係しているのでは~などと言われていますがぁ、詳細はいまも分かっていませんねぇ」
「なるほど……」
そういえば、以前アリスにチラリと雑談の中で聞いたことがあるが、単一種の魔族の新種というのは最近はほぼ確認されておらず、過去の方が圧倒的に生まれる数が多かったとか……過去の魔界はあちこちで日夜戦いが繰り広げられており、地域ごとの魔力の状態も極めて不安定だったために、そういった特異な存在たちが生まれやすい環境だったのかもしれないというのがアリスの弁である。
「私も~単一種の魔族として生まれましたぁ。私は~比較的生まれた瞬間からぁ、多くの知識と~強い能力を持ち合わせていましたねぇ。姿も~生まれた際から変わっていませんねぇ。強いて言うならぁ、魔力量がやや少なかったですがぁ、それはあくまで同格と比較すればで~魔界全体で見れば極めて大きな魔力を持って生まれてきたと言えますねぇ」
「それはなんというか、俺には全然想像もできませんが、知識と大きな力を持った状態でいきなり生まれたら、戸惑いそうですね」
「そうですねぇ。もちろん戸惑いもありましたねぇ。とはいえ~私はあまり自問自答するようなタイプでもなかったのとぉ、多くの知識を生まれながらに持っていたのでぇ、すぐに落ち着きましたねぇ。落ち着いたあとで~最初に行ったのはぁ、己の能力の確認でしたぁ。私の~最古の記憶はぁ、己という存在の検証から始まっていますねぇ」
生まれた瞬間から一定の知識と力を持っているというのは、当人でなければどんな感じか詳しく知ることはできない。
アインさんはクロが育てたという話なので、幼少期などがあって成長した感じかもしれない。
「私は~目が少々特異でしたぁ。私の目は~術式を通していない空気中の魔力すら目視出来ましてぇ、任意で切り替えられるのですがぁ、魔力を見ないようにしても~異常なほどに動体視力なども高く魔眼と呼んでいいほどのものでしたぁ。ただ~少々見えすぎて疲れるのでぇ、普段は~目の焦点を外していますねぇ」
「ああ、なるほどだから普段は……」
イルネスさんの焦点の合っていない目は、目がよすぎて疲れてしまうからだったのか……。
「その目を使って~私は体の動かし方を学びましたぁ。当時の魔界では~あちこちで戦いが起こっていましたのでぇ、強者と思わしき方の動きや魔力流動を参考にしてぇ、鍛錬をしましたぁ。特に~強くなりたいなどという考えがあったわけではなくぅ、己の体の能力は十全に使いこなせるようにしておくべきなのがぁ、正しいのだろうと~そう思ってのことでしたねぇ」
「そういえば、イルネスさんって相手の力を利用した……俺の居た世界では合気とかって言われてましたけど、力を受け流したりコントロールしたりする感じの戦いをしてましたね」
「そうですねぇ。私は~その気になれば魔力を目視できるのでぇ、相手の魔力流動を読みやすいということもありましてぇ、自然とそう言った戦い方になりましたねぇ」
なるほど、言われてみれば術式を通さない空気中の魔力まで目視することができる目があるのなら、相手の動きを見切りやすいし、そういう戦い方は理にかなっているのかもしれない。
なんというか、いろいろいままで知らないイルネスさんのことを知れて、結構嬉しい。
シリアス先輩「……う~ん。これ、もしかして世界の真実に気付いたかもしれない。未だに謎が多く特異な能力を持ってることが多く、更には近年は全然新規に生まれていない単一種の魔族。前にマキナが言っていた。魔族に関しては、シロがアレコレと実験的な生物を作ったりしていたって発言……これはつまり、そういうことでは? マジでアイツ大抵のことの元凶じゃないか……」




