イルネスとのお茶会④
まだ万全ではないためやや短めです
イルネスさんとのお茶会は、当然ではあるが雑談に移行していった。俺とイルネスさんが話す際には基本的にイルネスさんが聞き手側に回ることが多く、今回も俺がアレコレ話をしてイルネスさんがそれを楽しそうに聞くという形だ。
「なるほどぉ、ティーパックですかぁ。それは~なかなか面白い品ですねぇ。素人でも~簡単に紅茶が淹れられるのはぁ、便利ですねぇ」
「ええ……まぁ、もちろん上手な人が淹れる紅茶には敵いませんけどね」
今回の話は、イルネスさんが俺の居た世界に興味があったようなのでその辺りの話をしつつ、紅茶の話題になるついでにティーパックなどを紹介した。
そういえばこの世界では紅茶のティーパックというのはない気がする。俺が知らないだけで、どこかに存在している可能性もあるが、少なくとも俺は見たことがない。
というか、今回のネピュラが作った技術の低いものでも美味しく淹れられる紅茶は、かなり新しい感じでみんな驚いたり感心していた。
よくよく考えてみれば、それをさらに一般向けに簡単にしたものがティーパックなわけだし、今後そういったものが開発される可能性はある。というか作れるのかどうか知らないが、そういうのを提案してみてもいいとは思う。
まぁ、作るとしたら今回俺が立ち上げるブランドは富裕層向けなので、クロとかに話して一般向けの販売にって感じになりそうだが……。
「そういえば、前にフレアさんからイルネスさんは昔魔界を旅していたって聞いたんですけど……」
「ええ、そうですねぇ。かなり~昔の話ではありますがぁ、あちこちを旅していたことがありますねぇ」
これまでは俺の話だったが、よく考えれば俺はイルネスさんのことをあまり知らない気がしてきた。普段話すときはイルネスさんが基本的に聞き手であり、あまり自分のことを話したりはしない。
特に王城でメイドをする以前の話に関しては、まったくといっていいほど知らないので、興味がある。もちろんイルネスさんが嫌がるのであれば、無理に聞くつもりはまったく無いが……。
「えっと、イルネスさん。もし嫌だったら遠慮なく断ってもらって大丈夫なんですけど、イルネスさんの昔の話とか聞かせてもらっては……駄目ですか?」
「私の昔の話ですかぁ? それは~構いませんがぁ、特に劇的な出来事があったわけでもありませんしぃ、面白い話は無いかもしれませんよぉ」
「はい。それでも、大丈夫です。なんて言ったらいいか、イルネスさんのことをもっと知りたいというか……そういう感じなので、別にいつの話でもいいんですよ。王城とかでメイドする前とかでもいいですし、魔界を旅してた頃の話でもいいですし……」
そう言って俺が告げた言葉を聞いて、イルネスさんはどこか優し気な笑みを浮かべた。
「くひひ、そうですねぇ。そんな風に言われてしまってはぁ、嫌とは言えませんねぇ。それではぁ、面白い話ではありませんがぁ、昔の魔界で私が旅していた頃のぉ……そうですねぇ。旅を始めたきっかけも含めてぇ、お話しますぅ」
どうやら特に過去を語るのが嫌というわけではない様子で、イルネスさんは穏やかな口調で昔の話を始めた。
シリアス先輩「そういえば、イルネスの過去をイルネス自身が語るのってほぼ無かった気がする」




