イルネスとのお茶会②
元々準備はある程度していたみたいで、イルネスさんはすぐに紅茶の一式が乗ったカートをおして戻ってきた。
「そういえば、イルネスさんってよくオリジナルブレンドの紅茶を作ったりするんですか?」
「難しい質問ですねぇ。例えば~お嬢様や~カイト様にぃ、紅茶をお出しする際には~それぞれの好みに合わせてぇ、調整などはしますぅ。ですが~果たしてそれをオリジナルブランドと呼ぶべきかはぁ、悩みますねぇ」
「あ~確かに、アレンジとの線引きは難しいですね」
どこまでがアレンジの範疇で、どこからがオリジナルブレンドになるかの線引きは確かに難しい。最初からオリジナルブレンドを作ろうと思って手を付けたなら、それはオリジナルブレンドでいいと思うが、好みの味に合わせて微調整とかのレベルになってくると、明確な線引きは難しい。
「普段自分で飲むときとかはどうですか?」
「あまり~市販の品から大きく変えることはありませんねぇ。紅茶は好きですがぁ、特別な拘りがあったりするわけではありませんしねぇ」
「ふむ。ちなみに、イルネスさんが自分で飲むときはどんな紅茶を?」
「貴族などの中には~俗っぽいと嫌う方もいらっしゃるのでぇ、屋敷などでは~あまりお出しすることはありませんがぁ。私は~フレーバーティーなども好きですねぇ」
「あ、俺もフルーツの香りがしたりする紅茶結構好きです。本格的な紅茶とはちょっと違うかもですけど、ああいうのもいいですよね」
フレーバーティーは紅茶に果実や花、スパイスなどで様々な香りや味を付けたもので、茶葉以外を使うことで本格的ではない邪道の紅茶と考える人もいるみたいだが、俺は結構好きだ。
アップルティーなどもフレーバーティーの一種だし、個人的にリンゴが好きということもあって出てくるとちょっと嬉しかったりする。
俺の知り合いの中でいうと、ロズミエルさんは特にフレーバーティーをよく飲んでいる。ロズミエルさんの場合は主に花を用いて香り付けした紅茶を好む感じで、出してくれる紅茶は毎回なにかしらの花の香りがする。対してジュティアさんとかは本格派かな? あまりフレーバーティーを飲んでいるのは見たことがない。
ああ、それにカミリアさんが淹れてくれる紅茶も独特の落ち着く香りがするので、アレもフレーバーティーなのかもしれない。機会があれば聞いてみよう。
「ちなみに~今回もぉ、フレーバーティーでご用意しましたぁ」
「ふむ、イルネスさんのイメージだと……やっぱり薔薇とかですかね?」
「おやぁ? 当てられてしまいましたねぇ。はいぃ。香り付け程度ですがぁ、僅かに~薔薇を使用していますぅ」
紅茶の用意をしつつ微笑むイルネスさんに、俺も自然と微笑み返した。イルネスさんがオリジナルブレンドの紅茶に薔薇の香りを付けるのは、本当にイメージ通りだが……それよりなにより、俺はあることが嬉しかった。
それは、今回のオリジナルブレンドの紅茶にちゃんと『イルネスさんの好み』が反映されていることである。イルネスさんの性格と技量なら、俺の好みにバッチリ合わせた紅茶も用意できたはずだが、少なくとも今回はそういうものではない感じがする。
なんといえばいいのか、改めて表現すると気恥ずかしさもあるのだが……なんか、こう……イルネスさんの好きなものを知れる機会というのが結構貴重なので、イルネスさんが好む紅茶の味がどんな感じなのか、本当に楽しみだ。
そんな風に考えていると、用意ができたみたいで目の前にティーカップが置かれた。
シリアス先輩「なんかこう、イルネス関連では前々からちょくちょく、快人の方もなんだかんだでイルネスのことを恋愛対象として意識してる感じがあるんだよなぁ。相手の好みを知れて喜んだり……なんか切っ掛けがあるとダダ甘になりそうで怖い……」




