オリジナルブレンド⑪
ロズミエルさんに頼んで無事に薔薇の小物入れを手に入れることができたので、さっそくイルネスさんにプレゼントしたいのだが……帰ってすぐに渡すのもなんというか味気がない気がする。かといって、都合よく渡すのに適したシチュエーションがあるわけでもないし、変なことは考えずに素直に渡すことにしよう。
自室でそんなことを考えてから、イルネスさんを探そうと思ったタイミングで扉がノックされ、偶然にもイルネスさんがやってきた。
「失礼しますぅ。カイト様~少しお時間を頂いてもよろしいでしょうかぁ?」
「ええ、大丈夫ですよ。なにかありました?」
「いえ~何か問題があったというわけではなく~お誘いですぅ」
「お誘い?」
イルネスさんの言い回しに首を傾げると、イルネスさんは穏やかに微笑みながら話を続ける。
「実は~私もカイト様と同じように~オリジナルブレンドの紅茶を作ってみましたぁ。それでぇ、カイト様さえ問題なければ私と一緒にお茶でもいかがでしょうかぁ?」
「イルネスさんと? ええ、もちろん喜んで、イルネスさんのオリジナルブレンドの紅茶も楽しみですし、イルネスさんとゆっくり話せるのも嬉しいです」
「くひひ、そう言ってもらえるとぉ、私も~嬉しいですぅ。それでは~今日はもう夕食時ですのでぇ、明日のお昼ごろでいかがでしょうかぁ?」
「はい。大丈夫です。楽しみにしてます」
そう言って軽く一礼したあとで部屋を出ていくイルネスさんを見送りつつ、俺の心にはワクワクとした気持ちが湧き上がってきていた。
単純に小物入れを渡すのにもいい機会であるというのもそうだが、イルネスさんとお茶というのもかなり楽しみだ。
過去にもイルネスさんがお茶や菓子を用意してくれて、俺が促した上で一緒に食べたりということはあるが、イルネスさんの方が誘ってくれるのは初めてかもしれないので単純に嬉しい。
イルネスさんが作ったというオリジナルブレンドも絶対美味しいと思うし、いまから明日が楽しみだ。
そんな風に考えつつ俺は部屋から出て家の庭、ネピュラの世界樹の元に移動する。日は沈みかけの状態ではあるが、家からの明かりもあって暗すぎるという感じではない。
世界樹の前に辿り着くと、すぐにネピュラが出てきてくれた。
「主様、妾に御用ですか?」
「うん。今回の紅茶ブランドとかオリジナルブレンドの茶葉とかで、ネピュラにはいろいろ助けてもらったから……これをお礼として持ってきたんだけど、どうかな?」
「ありがとうございます! 主様の気遣いがとても嬉しいです……これは、花の種ですかね?」
「そうそう、ほら、前にネピュラが花壇の色どりを増やしたいって言ってたから、いま家の花壇には無い花の種をいくつか貰って来たんだ」
イルネスさんだけでなくネピュラにもいろいろ手助けをしてもらったので、ネピュラにもお礼を用意してきていた。ただ、ネピュラへのお礼は実はけっこう難しい。
まずネピュラは凄く優しくてできた子なので、なにを渡したとしても喜んで受け取ってくれる。なんというか、品そのものよりそれを用意しようとしたこちらの気持ちを喜んでくれるというか、そういうタイプである。
だからこそ、どれを渡しても喜んでくれると分かっているからこそ、逆になにを贈るかが難しい。今回はたまたま以前に花壇の花の種類を増やしたいという話を聞いていたのと、ロズミエルさんの万花の園という数多の花がある場所に訪れていたこともあって花の種を贈ることに決めた。
うちの花壇を見たことがあるロズミエルさんの知恵もお借りして、俺の家の庭の雰囲気に合った珍しめの花の種をいくつか用意してきた。
「ええ、花壇にもう数種類ぐらいの花を増やしたいと思っていたので、とても嬉しいです! さっそく明日から育て始めてますね。咲いたら是非、主様も見に来てください」
「うん。そうするよ……ネピュラなら綺麗な花を咲かせてくれるだろうし、いまから楽しみだ」
「お任せください! 妾は、絶対者ですからね!」
「ふふふ、そっか」
口癖のようなセリフを告げて胸を張るネピュラを微笑ましく思いつつ、軽く手を伸ばしてその頭を撫でた。
シリアス先輩「いやな予感がする。これ、わざわざ次に回したということはサブタイトルも変えて①からになるんじゃ……」




