オリジナルブレンド⑧
突然の話にも拘らず快く了承してくれたロズミエルさんから薔薇の小物入れを受け取るため、合わせてお礼のために万花の園にあるロズミエルさんの家に遊びに来た。
ロズミエルさんには以前にネピュラとイルネスさんの作ったティーカップをプレゼントしているので、今回はお菓子用の小皿などを中心に持ってきてみた。
「いらっしゃい、カイトくん」
「こんにちは、ロズミエルさん。今回は、本当に急なお願いをしてしまって申し訳ありません」
「ううん。大丈夫だよ……それに、カイトくんがこうして遊びに来てくれて、私は嬉しいよ」
親しくない相手の前では強張った表情で固まるロズミエルさんではあるが、俺に対してはもうすっかり慣れているようで柔らかい微笑みを浮かべてくれた。
不思議なもので、強張っている時は派手めな外見も相まってキツめの印象を受けるロズミエルさんだが、こうして笑っているところを見ると凄く優しそうなお姉さんという雰囲気なので、表情による印象の影響って大きいなぁとそう感じる。
ロズミエルさんに招き入れられて家の中に入り、勧めてくれた席に座ると、ロズミエルさんはテーブルの上に綺麗に包装された箱を置いてくれた。
「えっと、贈り物にするって言ってたからいちおうラッピングもしてみたんだけど、大丈夫だったかな?」
「ええ、すごく綺麗ですね。ラッピングまでしてもらって、かなり手間だったんじゃ……」
「ううん。そんなことないよ。私、こういう小物とか彫刻とか得意だから、すぐにできるしね」
そういえば、ロズミエルさんは芸術に造詣の深い方だった。もしかすると家の中のあちこちにあるお洒落な家具やインテリアも、自作しているのかもしれない。
「あっ、そうだ。これ、今回のお礼になればと思って持って来ました。以前に渡したネピュラとイルネスさんが作った陶磁器で、皿とかを中心に持って来ました。あとこっちは、今度新しく立ち上げることになった紅茶ブランドの商品のセットです」
「そんな、お礼なんて別に良かったのに……でも、ありがとう。前のティーカップも凄くよくて愛用してるからとっても嬉しい。それと、こっちがカイトくんの紅茶ブランドの商品なんだね。かなり本格的だね……オリジナルブレンドとかもあるんだっけ?」
「はい。中に入ってる……ちょっと失礼しますね。これが、いちおう俺がネピュラやイルネスさんの協力を経て作ったオリジナルブレンドの茶葉です」
「へぇ……私もローズティーのブレンドを自分でしたりするけど、結構難しいんだよね。じゃあ、せっかくだしこのカイトくんのオリジナルブレンドの紅茶を淹れようか、カイトくんもこれでいいかな?」
「あ、はい」
「うん。じゃあ、ちょっと待っててね」
そう言って紅茶を淹れる準備をするロズミエルさんは、なんというか佇まいが凄く高貴な雰囲気である。その様子を見つつ、ふと俺は思い出したようにロズミエルさんに声をかけた。
「そういえば、ロズミエルさんってこういう商品とかを作って販売してたんですね」
「あ、うん。昔リアに……『人見知りを直す第一歩としてやってみませんか?』って言われて、少数だけど自作の小物とかを販売してるね」
「なるほど、でもそういう風に陣営外との関わりを持つってのは、確かに人見知りを直すにはいいかもしれませんね……ちなみに成果のほどは?」
「……これね。そういう小物を卸したりとか、始めたのね……『六千年ぐらい前』なんだ」
「……なるほど」
六千年を経た結果が現状であれば、たぶん全く改善はされてない感じだろう。
「というか、月に一度ぐらいしか発注を受けてないし、発注に来る人も……慣れて話せるようになる前に別の人に変わっちゃうし、未だロクに話せたことないよ」
「あっ、そっか、発注の時にしか会わないんじゃほとんど慣れる時間も無いですよね」
「う、うん。本当に……初対面の相手とか怖いし、あとほら、私緊張すると顔が固まっちゃって、それで相手にも怖がられちゃうから、お互いビクビクしてる状態で慣れるもなにも無いっていうか……難しいね」
たしかに、極度の人見知りで慣れて無い相手には表情がガチガチに固まる上に、怖がって自分から話しかけることは無いロズミエルさんに対し、六王幹部という相手を前にしつつ、更にその相手が不機嫌そうな表情で見てくる状態で畏縮しまくる取引相手……たしかに、難しい。
俺が割とすぐに打ち解けたので勘違いしてしまいそうになるが、ロズミエルさんは相手によってはそれこそ話せるまでに十年以上かかったりもするので、本当に難問である。
「……皆がカイトくんみたいに、話しやすい子だといいんだけどね」
そう言って苦笑するロズミエルさんの言葉を聞いて、こちらに対する信頼を感じられるその言葉がなんだか少しくすぐったくて、嬉しかった。
シリアス先輩「くっ、いちおう申し訳程度にオリジナルブレンド紅茶にも触れてるから、タイトル詐欺とは言えない……しかし、ロズミエルは相変わらずヒロイン力があってキツイ……だって、無自覚に『貴方は特別』とか言ってるみたいなもんじゃん……」




