オリジナルブレンド⑦
エリーゼさんの店に行った帰り道、街中を歩いていてふとある店が目に留まった。といっても別になにか珍しい店というわけでもなく、普通の雑貨屋である。
気になったのはそこにあった商品で、薔薇のデザインの小物入れだった。それを見てパッと頭に思い浮かんだのは、そう、イルネスさんである。
今回オリジナルブレンドを作る際にアドバイスをしてくれて、いろいろ協力してくれたイルネスさんになにかお礼をしたいと思っていたので、これなんかいいんじゃないかと思った。
小物入れだがかなり上質な品なのは見てわかるし、イルネスさんはバラが好きなのでプレゼントには丁度いいと感じた。
そうと決まればさっそくと店内に入って、薔薇の小物入れが置いてある棚に近付いたのだが……。
『完全受注生産・金額金貨5枚』
……え? 高!? 完全受注生産なのにも驚きだが、金額も日本円にして500万円って……雑貨屋の小物入れとしてはあまりにも高すぎる印象だった。
驚いて固まっていると、それを察したのか店長らしき女性が声をかけてきた。
「お客様、そちらの小物入れをお求めでしょうか?」
「え? あ、はい。そのつもりだったんですが……完全受注生産なんですね」
「はい。それと申し上げにくいのですが、現在予約が溜まっておりまして、仮に今日ご注文いただいても数年はかかるかと……」
「数年!?」
数年待ちって、とんでもない人気商品じゃないか……なんか有名な逸品だったりするのかな?
「はい。こちらはかの薔薇姫ロズミエル様が作製している品なのですが、生産者が生産者のため月にひとつ限りの注文に限定させていただいています。ロズミエル様は大変気難しいお方でして、ご機嫌を損ねてしまっては大変ですから」
「……なるほど」
「あと、注文も私自身が行う必要がありまして……以前に別の店員に発注を任せた際には、凄まじく不機嫌な表情を浮かべていらっしゃいましたので、必ず店長である私が直接注文をするようにしており、その手間も相まって注文個数は限定させていただいております」
それ完全に、初対面の人を前にして緊張で顔が強張っていただけでは? 気難しいどころか、滅茶苦茶優しい方なのだが、とにかく人見知りなのと緊張で表情が強張ることも相まって世間的には、ロズミエルさんは気位が高く気難しい方という印象らしい。
けど、う~ん。これ、ロズミエルさんに直接交渉したら買えたりしないかな? 注文とかに関しては、変に気を使って月に1個限定にしてるっぽいし……もちろんロズミエルさんの都合もあるだろうし、無理にとは言えないが、いちおう尋ねてみよう。
雑貨屋から出て、ロズミエルさんにハミングバードを送る。あいにくと俺の魔力では詳しく事情を書ききるほどの文字数は不可能なので、複数回に分けて送った。
するとすぐに返事がきて「簡単に作れるものなので、欲しいならいくらでも用意する」とのことだったので、お礼の返事をかきつつ何度かやり取りをして、1日で用意できるということだったので明日に受け取りに行くことになった。
その際に合わせて紅茶ブランドの商品をいくつかと、オリジナルブレンドの茶葉を持っていくことにしよう。
シリアス先輩「待ってほしい! オリジナルブレンド関係なく、イルネスとお茶会していちゃいちゃする方向に進んでない!?」




