オリジナルブレンド④
イルネスさんとネピュラの協力を得てオリジナルブレンドの紅茶を用意して、知り合いの分も個別に包装して手紙と一緒に送る準備も終えた。
アニマやキャラウェイにも話を通して、俺のオリジナルブレンドは『MKブレンド』という名称で発売されることになった。名前の由来はそのまんま俺の名前のイニシャルで、ファミリーネームを先にしていないのもKMよりはMKの方が響きがいいからという理由である。
あまりにも安直ではあるが……そもそもアルファベット自体が、トリニィアの人たちには異世界の言語なので物珍しさから興味を引きやすい割といい名前である。
リリアさんやジークさんにも試飲してもらって結構好評だったので、大人気とまではいかずともそこそこの人気になってくれたらいいなぁとは思う。
紅茶を試飲してもらいながら、そんな話をリリアさんにすると、リリアさんは少し考えるような表情を浮かべて口を開いた。
「……いえ、購入に制限を付けなければ争奪戦になる可能性が高いかと思います」
「え? でも、クロとか俺の知り合いの権力者には別口で渡すんだけど……」
「確かに、それは非常にいい対応だと思います。私としても胃痛の種が減るので、本当にありがたいです。ただ、それはそれとしてカイトさんの名前は貴族の間では有名ですし、当然ですが異世界人ということも知られています」
「あっ、そっか……異世界の文字を使ってるってことが、そのままヒントになっちゃうんですね」
言われてみれば、直接言わなくとも異世界の文字を使っていれば異世界人が関わっていると考えて当然だろうし、そうなれば俺のオリジナルブレンドということにも気付きそうだ。
いや、もちろんある程度は売れて販売の手助けになって欲しいとは思っているので、気付かれることも想定済みではあるが……。
「ええ、そしてカイトさんのオリジナルブレンドであれば、六王様や最高神様も飲んでいるのではという考えにも至るでしょうし、貴族というのは見栄や箔を重視しますので、そのオリジナルブレンドの茶葉は一種のステータスになるかと思います。特に最初は話題性も高く、貴族としても手を出しやすく話題にも上げやすい紅茶関連となると、かなりの人気が予想されますね」
「そういえば、アニマが最初は購入点数に制限を付けたり、購入する権利事態を抽選にしたりするつもりって言ってました」
「ええ、それが最善だと思いますし、カイトさんのブランドということで貴族にとっては圧力をかけて融通してもらったりという手段も取れないでしょうし、ある程度強気の戦略で問題ないと思いますね。カイトさんのオリジナルブレンドに関しては、購入する権利を抽選式にしてある程度平等にしたほうがいいと思います」
「なるほど、分かりました。アニマにもそういう風に話してみます」
まぁ、実際アニマならいまリリアさんが言ったことも織り込み済みで、最初から抽選式で販売するように勧めているかもしれないが……。
「専用の店舗は作らないんですか?」
「それも案としては出たんですが、どこに作るかって問題もありますし、土地とかも持ってないので一旦保留という形になりました」
「なるほど、まぁ、確かに店舗を作るとなると……間違いなく、各国の王が動きますね。是非自分の国に作ってほしいと、土地を用意して訪ねてくるかと……」
「ええ、アニマやキャラウェイも出すなら三国同時に出すとか、そういう方法をとった方がいいと……まぁ、そうなると手間も増えるので、やっぱり追々ですね」
実際にリリアさんの言う通り店舗を作るという話は出ていたのだが、いきなり最初から三店スタートというのも大変だし、アニマも基本的に投資がメインで店舗展開はあまり行っていなかったため、店舗を作るとしたらしっかり準備を行ってからという感じで一時保留になった。
「まぁ、なのでいくつかの商会や紅茶専門店とかに商品を置かせてもらう感じになるみたいです」
「そうですね。アレもコレもと手を出すのは失敗の元ですね。私もいくつか店舗も持っていますし、ブランド出資などもしているので、相談に乗れる部分もあるかと思うので、なにかあれば気軽に聞いてくださいね」
「ありがとうございます、困ったら相談させてもらいますね」
優しく微笑みながら告げるリリアさんに俺も微笑み返してお礼を言ったあと、そこで一旦紅茶ブランドの話は区切りとなり、その先はしばし楽しく雑談を続けた。
シリアス先輩「絶対者が胃痛フラグを折ったおかげで、久々に平和そうなリリア……楽観視してるわけではないし、フラグの心配もないか。建国記念祭二連発で胃痛山盛りだったし……」
???「まぁ、今回ばかりは胃痛戦士も小休止かもしれませんね」
シリアス先輩「小休止って言葉が可哀そう過ぎる……」




