オリジナルブレンド③
時間が取れずにやや短めです
知り合いに贈る用のオリジナルブレンを包装する。とはいっても、俺が作ったのと同じ茶葉のブレンドをネピュラが用意してくれて、イルネスさんが魔力紙で作った袋を用意してくれたので、俺は詰めて封をするだけではあるが……それでもいろいろな模様の魔力紙の中からどんなものを選ぶかなどを考えたりで、結構楽しい。
そして俺が最初に選んだのは薔薇が描かれたものと、星空が描かれたものだ。それぞれに茶葉を入れて封をして、紙に軽く魔力を流せば使い捨てマジックボックスと同じ原理で中が保存される。
「これでよしと……じゃあ、最初に作ったこのふたつはそれぞれネピュラとイルネスさんに……いや、一緒に作ってるんだからプレゼントもなにも無いんですが、せっかくなので……」
「主様の気遣い、ありがたくいだきますね」
「それで~薔薇と星空なんですねぇ。カイト様~ありがとうございますぅ」
薔薇は言わずもがなイルネスさんのイメージで、星空はネピュラの髪の色が夜の星空のように見えるからなんとなくイメージで選んだ。
感謝を伝える意味も込めて即興でふたりにプレゼントをしたが、喜んでくれたみたいなのでよかった。
「さて、続けて作っていきましょう。知り合い全員となると結構な数になりますしね」
「そうですねぇ。ただ~根を詰め過ぎてもいけませんのでぇ、合間に軽く食べられるお菓子などを用意してきますよぉ」
「ありがとうございます」
やることは単純でもそこそこ時間はかかりそうだったので、イルネスさんがおやつを用意してくれると言って一度部屋を出ていく。
イルネスさんが用意して戻ってきたら一休みをするとして、それまではできるだけ作業を進めておこう。
カイトやネピュラと作業を行っていた部屋から出て廊下を歩きながら、イルネスは手に持った小さな包みを見る。
先ほど快人から渡されたオリジナルブレンドの茶葉が入った袋、言ってしまえばただそれだけのものである。
少しの間袋を見つめたあと、イルネスは懐から愛用している懐中時計を取り出した。薔薇の模様が入った懐中時計の後ろ、裏蓋にイルネスが魔力を注ぐと裏蓋がスライドし小さなものを収納できるスペースが現れる。そこにまるで宝物を扱うかのように、強力な状態保存をかけた小包を入れて蓋を閉じ、再び封印した。
「……どうにもぉ、落ち着きませんねぇ。こんなに難しかったですかねぇ……冷静でいることはぁ……」
小さく呟いて歩き出すイルネスの言葉は、少しの困惑に満ちていた。先ほど快人から紅茶の包みを渡された時に感じた、フワフワとした気持ちの正体……それがなにかは、イルネスはすぐに理解することができた。
「……本当に~どんどんワガママに~なってしまいますねぇ」
苦笑するようにそう呟いて懐中時計をしまうイルネス。その懐中時計の裏蓋に微かに映った顔には、頬に赤みが差しているように見えた。
シリアス先輩「……イルネスの場合は恋心は自覚してるのか、ぐっ……」




