オリジナルブレンド②
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
イルネスさんが淹れてくれた紅茶で試飲して、味の調整をしたり他のブレンドを試してみたりしながら俺のオリジナルブレンドを考えていく。
イルネスさんとネピュラのおかげで、どれも美味しく出来上がっているので悩むところではあったが、最終的に俺の自身の好みでひとつのブレンドに絞った。
紅茶の味は濃い目で、ほんのり甘くホッと落ち着くような味に仕上がったと思う。
「いい感じに~仕上がりましたねぇ」
「はい。イルネスさんとネピュラのおかげです。ありがとうございました」
「妾たちは少し手助けをした程度ですが、主様のお礼の言葉はありがたく頂戴します。さて、これで完成でもいいのですが……せっかくの主様のオリジナルブレンドですし、少し魔法をかけることにしましょう」
「魔法?」
明るい笑顔で告げるネピュラに聞き返すと、ネピュラはどこからともなく乾燥した葉っぱを取り出した。
「はい。とはいっても本当に魔法を用いるわけではなく、最後にひと工夫と言ったところですね。こちらは世界樹の葉を乾燥させたものです」
「世界樹の葉は~治癒の魔力が宿っているのでぇ、様々な薬に使われますねぇ。とはいえ~果実などと比べればぁ、本当に微弱なのでぇ、強い効果があるわけでもありませんし~普通に流通している品ですねぇ」
軽くイルネスさんが補足を入れてくれるが、そういえば世界樹の葉はリリウッドさんが収めるユグフレシスで販売されているとかって聞いたことがある。煎じてポーションなど一部の薬に加えると、治癒効果を高めてくれるとかで冒険者がよく利用していると、葵ちゃんと陽菜ちゃんから教えてもらった覚えがある。
「この葉は妾の世界樹の葉なので、多少は違うかもしれませんが基本的には同じです。この葉そのものに大きな効果はありませんが、これを加えることで微弱な治癒の魔力がリラックス効果を与えてくれます。1枚丸々使うのは多すぎるので、八分の一程の量を細かくして混ぜれ……はい、これで完成です!」
「リラックス効果があるのはいいな。ありがとう、ネピュラ」
「主様のお役に立てたのなら、妾も嬉しいです!」
ネピュラが一工夫してくれたおかげでより良くなって、俺のオリジナルブレンドは完成だ。とりあえず俺の名前をそのまま使うのはアレなので、イニシャルとかそういうのでぼかす感じで、紅茶ブランドの品と一緒に販売してもらえるようにアニマに頼んでみよう。
「……主様、ひとつ提案をしてよろしいでしょうか?」
「うん? なにかな?」
「主様のオリジナルブレンドとなると、主様のご友人方も当然ですが欲しがるかと思います。ですが、主様のご友人には立場の高い方も多いので、委託先の商店や商会に求めにいっては騒ぎになる可能性もあるでしょう。なので少し手間ではありますが、ご友人方の分はいま作って発送するのはいかがでしょう? 使いで欲しい場合は、商会等ではなく主様かアニマさん宛てに手紙を送るように一文添えると、なおいいかと思います」
「なるほど、確かに言われてみれば騒ぎになったりしても大変だし……うん。じゃあ、知り合いの分は作って送ることにするよ」
言われてみればその通りで、名前をぼかしたとしても気付く人は気付くだろうし、卸先に買いに行ったりしても大変だし、場合によってはこっちではなくリリアさんとかに問い合わせが行く可能性もあるので、そうならないように一筆添えてオリジナルブレンドを贈ることにしよう。
「一杯分ずつ~個包装するのはいかがでしょうかぁ?」
「あ、贈りやすくてよさそうですし、使う時とかにブレンドのバランスが崩れないのはいいですね。でも、缶とかと比べると日持ちはしないですよね?」
「大丈夫ですよぉ。魔力紙を用いて状態保存の魔法を使えばいいと思いますよぉ。開封したら~切れるようにしておけますのでぇ」
「なるほど、いいですね」
ランダムボックスとかに用いられる魔力紙を使って、包装するというのは本当にいい手だ。クロがインスタント食品を作ったりしていたし、食材でも問題ないのは分かっている。
もちろん俺にはできない処理なので、イルネスさんの力を借りることになってしまうが……せっせと魔力紙を用意しつつチラリをこちらを見て微笑むイルネスさんの表情からは、気にしなくていいというような優しい気遣いが伝わってきていた。
ここは素直に厚意に甘えつつ、あとでなにかお礼をすることにしよう。
絶対者「ステイ、座ってろ」
胃痛フラグ「あっ、はい……」




