新ブランドの立ち上げ⑦
ジュティアさんが淹れてくれた紅茶を飲み、合わせて出してくれた茶菓子を食べつつ雑談する。ジュティアさんにもアインさんと同じように紅茶の木とサトウキビをプレゼントした。ジュティアさんは非常に喜んでくれて、いまもかなり上機嫌な印象だ。
やはり今回の茶葉も紅茶好きのふたりにとってはかなりいいものみたいで、宣伝への協力も快諾してくれた。
「……そういえば、ジュティアさんの家も中央大森林にあるんですよね? 場所的にどの辺りなんですか?」
中央大森林は魔界で最大の森であり、滅茶苦茶に広大な森である。フラッと迷い込めば遭難はほぼ確実かもしれない……まぁ、道に迷った場合は精霊や妖精が手助けしてくれるらしいので、行方不明になったりする人は基本的に居ないとのことだ。
その大森林にはリリウッドさんが収める森林都市ユグフレシスがあるだけではなく、七姫の家もそれぞれ大森林に存在しているらしい。ロズミエルさんの万花の園もそのひとつだ。
「ここはね、ここはね、位置的には大森林の東で精霊樹が群生している地帯だぜぃ。ボクが精霊樹の大精霊ってこともあって、ここに家を構えているね」
「なるほど……えっと、不勉強ですみません。精霊と大精霊ってどう違うんですか?」
「特に違いは無いけど、一種の識別かな? 例えば、例えば、いま言った精霊樹を例に出すと……精霊樹は必ず精霊が宿る木だから、精霊樹の精霊ってのはいっぱいいあるんだぜぃ。その精霊樹の精霊の中で一番大きな力をもって代表的な立場にいるボクが、大精霊って呼ばれてる感じだね」
「ああ、なるほど、その精霊一派のトップみたいな感じなんですね。けど、七姫の方の中でも大精霊って付いてない人も結構いますよね?」
ジュティアさんの説明で、なんとなく大精霊という言葉の意味は理解できたが……俺が知っている中では、ジュティアさん以外の人が大精霊と呼ばれているのは聞いたことがない。
「うんうん、いい質問だね。それはね、それはね、複数の精霊が存在しているかどうかが重要なんだよ。例えば、精霊樹は少し特殊だけど基本的に木には精霊は宿りやすいんだよ。同じ種類の木に複数の精霊がいるのも珍しくない。だけどね、だけどね、花とかは木に比べてサイズの問題もあって自然の魔力が弱めで、精霊が宿りにくいんだよ。だからね、だからね、そもそも代表を名乗るほど同種の精霊がいないパターンが多いのさ」
「ふむふむ、リリウッドさんが大精霊じゃなくて世界樹の精霊って言ってるのも、ネピュラ以外に同種が居ないからってことですね」
「そうだね、そうだね。そもそも世界樹が世界に数本しかないし、ほとんどリリウッド様が処理して精霊が宿らないようにしてるからね。世界樹の持つ自然の魔力は強大だから、精霊が宿っちゃうと場合によっては周囲の自然のバランスを壊すこともあるからね」
そういえば俺の家の世界樹にネピュラが宿った時も、リリウッドさんは即座に飛んできてかなり念入りにいろいろ調べていたみたいなので、ジュティアさんの説明にも納得がいく。
「花は精霊が宿る前に、複数の花の魔力が集まって妖精になることも多いから本当に宿りにくいんだよ。宿るのは結構突然変異みたいな感じで……だからだね、だからね、そういうのに精霊が宿ると大きな力を持ってることが多いんだぜぃ。草なんてのはもっとずっと珍しくて、ボクもカミリア以外に草の精霊は知らないね」
「なるほど、いろいろ教えてくれてありがとうございます」
「いいよ、いいよ、気にしないで……むしろ、カイトが精霊に興味を持ってくれてとっても嬉しいぜぃ。他にも聞きたいことがあったら、遠慮なく言ってね」
そう言ってニッコリと笑うジュティアさんからは人の良さというか、優し気な空気が伝わってきてなんだか安心できる感じだった。
そんな雰囲気のおかげか、会話は弾みしばし俺たちは楽しく雑談を続けた。
シリアス先輩「つまり、複数のシリアスが存在した場合は、私もシリアスの大先輩に……」
???「単独ですらこの有様なのに、なに言ってんすかねぇ……」
シリアス先輩「夢ぐらい見てもいいじゃないか……」




