新ブランドの立ち上げ②
ネピュラが協力してくれることになり、本格的に紅茶ブランドの立ち上げの話が進みはじめた。お金周りとかの計算や手配などはアニマがやってくれるので、俺の出番があるかと言われれば……まぁ、別にない。
ただなんとなくそういう立ち上げでいろいろ考えたり案を出したりするのは楽しそうなので、企画に少し関わらせてもらうことにした。
とはいえ、俺は完全に素人なので変な案を出したりしたらちゃんと却下してくれるようにアニマによく言い聞かせておいた。
「ロゴは元々使ってたやつでいいんだよね?」
「そうですね。既にティーカップなどが出回っていますし、無理に変更するよりはそのままの方がいいと思います。カップ等の陶磁器を制作やネピュラが作った茶葉を栽培する場所や人員の手配も進んでいます」
「さすが、仕事が早い……いや、けど、この茶葉……凄いな。メモの通り淹れたら、俺でも結構本格的な紅茶が淹れられたし……」
「そうですね。高品質なのはもちろんですが、茶葉の量や蒸らす時間で味に差ができにくくなっているのが凄いですね。多少量や時間が大雑把でも美味しく淹れられますね」
そう、ネピュラは宣言通り翌日には茶葉を完成させてしまった。以前の茶葉が扱いが難しく上級者向けの茶葉ならば、今回作ったのは扱いやすい初心者向けの茶葉をいった感じで、アニマの言う通り割と雑に淹れても本格的で美味しい紅茶が淹れられる。
しかも、完全に初心者向けに振り切っているのかと言えばそうでもなく、この新しい茶葉はなんと前回の茶葉と組み合わせることでかなり幅広く味などを調整できるみたいで、上級者にとっても楽しめる茶葉になっているらしい。試飲に付き合ってくれたイルネスさんも興味深そうにいろいろな配分調整を試していた。
ちなみに余談ではあるが、ネピュラが最初に作った玄人向けの茶葉も新設するブランドで月に少量の限定販売を行う予定だ。こちらは玄人向けて扱いが難しいとしっかり説明した上での販売になる予定だ。
「……とはいえ、あの茶葉は本当に一流のメイドでなければ扱えないでしょうね。いかがでしょう、ここは世界メイド連合が協力しますので、一定の基準を満たしたものにのみ販売という形にするのは?」
「あ~たしかに、扱えない人が使っても味を壊しちゃうんでしたね。じゃあ、資格制にするのもいいか……も?」
「……アイン殿?」
あんまりにも自然に話に入ってきていた声に反応して視線を動かすと、ここにいるはずのない人物……アインさんが居た。しかもしれっと関係者ですみたいな顔してるし……。
本当に唐突に現れたのか、アニマも驚いた様子でアインさんを見ている。
「アインさん? なんでいるんですか?」
「やはり紅茶ブランドの立ち上げともなれば、一流のメイドのアドバイスは必要かと思いまして……あと……ネピュラ様の新作の茶葉があると聞いたので!!」
「絶対そっちが目的でしょ!? というか、どうやってその情報を……」
「メイドたるもの常に情報に敏感であり、シャルティアほどとはいかずとも強力な情報網を持つのはメイドとして当然の嗜みです」
そんなスパイみたいなメイドが当然でたまるか……というか、どこかのタイミングで嗅ぎつけてくるだろうとは思っていたし、欲しがるだろうなぁとも思っていたが……1日も経たずに来たよ。
ブランドを立ち上げるために、アニマがいろいろ伝手に話をして準備を進めていたりしたので、その辺りから情報を掴んで即来たのだとは思うが、とにかく早い。
「というわけで、その噂の茶葉はどちら――に?」
興奮気味に話していたアインさんだったが、その途中でポンとアインさんの肩に小さな手が置かれ、言葉が止まった。そこにはいつの間にか現れた、笑顔だがどことなく圧を放っているクロがいた。
「く、くく、クロム様!?」
「アイン? ボクはいっつも言ってるよね? メイドとかのことに拘りを持つのはいいけど、それで暴走して他所に迷惑をかけちゃ駄目だよって……」
「あ、いや……これはその……溢れ出るメイドスピリットが抑えきれずに……」
あのアインさんが珍しく青ざめてしどろもどろになってる。というか、クロの口振り的にこれ過去何度もやらかしてるな……。
「ほら、カイトくんたちに迷惑だからもう帰るよ」
「あっ、いやでも、せめて新作の茶葉を……絶対凄いやつなんです!」
「駄目。また今度貰ってあげるから、今回は我慢しなさい」
「うぅぅぅ……そんなぁ……」
「じゃ、カイトくん、アニマちゃん、邪魔してごめんね」
そう言って申し訳なさそうに謝罪するクロに文字通り引きずられて、アインさんは涙目で去っていった。うん、まぁ、本当にまだ全然準備できてないからアレだけど、茶葉とかも量産体制が整って準備できたらすぐにプレゼントしてあげようかな。
シリアス先輩「そういえば、前も快人の母親にメイドを激推ししたとかでクロに連行されて説教喰らってたな……」




