記憶の引継ぎ
ハイドラ王国の建国記念祭を二周したのち、家に帰ってひと眠りしたら本来の次元に戻っている……という話だったが、どっちの次元がどうとかは分からないのでたぶん戻っているのだろうという感じである。
なんだかんだで2度も建国記念祭に行って、楽しかったのはもちろん楽しかったが、それなりに疲労感……精神的なものだとは思うが疲れはあるので、今日は出掛けずにのんびり過ごすことにしよう。
「カイちゃぁぁぁぁん!!」
「うごっ!?」
そう思った直後、何の前触れもなく室内にフェイトさんが登場し、そのまますごい勢いで俺の胸に飛びついてきた。非力さに関してはそこそこ定評のある俺である。当然フェイトさんのタックルを受け止めきれるはずもなく、そのまま勢いに押されて後方に倒れ込んだ……起きたばかりで、後ろがベッドだったのは本当に幸いだった。
「……フェ、フェイトさん? ど、どうしたんですかいきなり?」
「カイちゃん、私頑張ったよ! 甘やかして~」
「う、うん?」
「ほら、私、カイちゃんとシャローヴァナル様のデートをしっかりサポートしたじゃん。それで疲れたからさ~カイちゃんに褒めてもらおうって思って来たんだよ」
「あ、あ~なるほど……確かに頑張って……うん?」
フェイトさんを含めた神族の皆さんが手厚いサポートをしてくれたり、様々な事態に即応してくれたのは俺もしっかり覚えているし、フェイトさんの頑張ったという発言が事実であるのも間違いないと思う。
だが、ひとつ気になる部分があった。
「あれ? フェイトさんは、シロさんと俺がデートした別次元のことを覚えているんですか?」
「うん? うん。覚えてるよ~。ちょっと苦労したけど、自力で記憶の引継ぎできたからね。私ができるんだから、シャルたんとかも冥王も普通にできると思うし、それ以外でもシャローヴァナル様が意図して記憶の引継ぎを行うと思った相手は、記憶の引継ぎがされてるはずだよ」
「ああ、なるほど、そういうこともできるんですね……ふむ。フェイトさん、もうひとつ質問なんですけど、俺の認識としては先に本来の次元があって、次に別の次元って感じだったんですがこの辺りの時間関係ってどうなってるんですか?」
「細かく説明するのはかなり複雑で面倒だし、上手く説明できる気もしないから……ざっくりとカイちゃんの場合は、本来の次元で過ごしたあと、別の次元に移動しつつ過去に戻ってるような認識でいいと思うよ」
「ふむふむ……それって例えば、別の次元の記憶を本来の次元に引き継ぐだけじゃなくて……先に会った次元の記憶を別次元に引き継ぐとかもできるんですか?」
「カイちゃんの記憶がそうやって引き継がれている以上、やろうと思えばできると思うよ。最低でも準全能級じゃないと無理だと思うけどね~」
「なるほど……ありがとうございます」
フェイトさんの話を聞いて、漠然と感じていた一つの疑問に答えがでた。それは、シロさんとデートしている時にアリスが一切姿を現さなかったことに関してだ。
いや、元々アリスは俺が恋人と一緒にいる時は、気を使って離れているのだが、シロさんとのデートの時はいろいろな事態が発生していたわけだしどこかで出てきてもおかしくなかった。
アリスの性格を考えてみれば、影ながらサポートしてくれていたというのは間違いないと思う。ただそれでも俺たちの前に一切姿を現さなかったのは……アイツ、前の次元の記憶を自力で引き継いでいたから、照れて顔を出さなかったのだろう。
「カイちゃん?」
「ああいえ、ちょっとした疑問に答えが出たので……それより、フェイトさんもお疲れさまでした。おかげで、楽しく過ごせました」
「まぁ、カイちゃんとシャローヴァナル様が楽しんでくれたなら、頑張ったかいもあるかな……それはそれとして甘やかして~」
「具体的にどんな感じで?」
「とりあえずこのままくっついた状態で頭撫でて~その後一緒にダラダラしよ~」
「……そうですね。俺も今日はのんびり過ごすつもりだったので、一緒にダラダラしましょうか」
「賛成~」
頭を撫でるのを催促するようにグリグリと頭を胸に押し付けてくるフェイトさんに苦笑し、要望通りに頭を撫でながら空いた手で軽くフェイトさんを抱きしめる。
まぁ、本当にそこそこ疲れもあるし、このままのんびり……なんなら二度寝でもするのもいいかもしれないなぁ……。
シリアス先輩「そういや、快人たちの前には全然姿見せなかったな……なるほど、一周目の記憶を引き継いでたから照れてたのか……」




