シャローヴァナルとの建国記念祭夜⑩
今日は書籍版第14巻の発売日です!
温泉をゆっくり堪能したあとは部屋に戻ってきてのんびり……としたいところではあるが、俺は少々頭を悩ませていた。
その理由は建国記念祭で行ったひとつの勝負に関してだ。シロさんと射的を行った際に、明らかにシロさんが意図して負けたとはいえ俺が勝負に勝ち、シロさんに要望をひとつ聞いてもらう権利を得た。
そしてその後の会話で、今日中になにをしてもらうかを決めると話をして、その期限が迫っている形である。いやもちろん、待ってくれと言えば期限を延ばしてくれたりもするとは思うのだが、とりあえずなにかないだろうかと考えていた。
「快人さん、どうですか? 褒めてもいいですよ、褒めると私が喜びます」
「浴衣似合いますね。いや、シロさんは本当に何でも似合うんですけど、浴衣もまた違った魅力がありますね」
いつの間にか浴衣姿に変わったシロさんに素直に賞賛の言葉を伝える。旅館に備え付けられていた浴衣と、その上に羽織る……陣羽織だったっけ? それが非常によく似合っていて可愛らしい。
本当に何でも似合うというか、シロさん自身のスペックが高すぎるので洋服でも和服でもとにかく何を着ても似合っていて綺麗だし可愛いのは流石としか言いようがない。
実際浴衣姿のシロさんは見惚れてしまいそうなほどだし、同じ部屋で一緒に宿泊と思うとくすぐったいような、照れと一体化した嬉しさが込み上げてくる。
しかし、う~ん。シロさんにやってもらいたいことか……いざ考えるとなると結構難しいものだ。ただ浴衣姿を見て唐突に頭に思い浮かんだのは、膝枕というものだった。
和風の室内で風呂上がりのこの状態で膝枕とかをしてもらえたら、なんとも言えない心地良さがありそうだと、そんな風に思った。
そして、当然ではあるがそんな俺の思考をシロさんは読み取っており、興味深そうに視線を動かしたあと……。
「さて、快人さん。これからどうしましょう? そういえば、射的の勝利報酬に関しての要望がまだでしたね。もちろん急かすつもりはありませんが、なにかありますか?」
「……」
繰り返しになるが、シロさんは俺の心を読んでいる。いまも部屋にあった座布団の上になんとも膝枕がしやすそうな姿勢で座り、ポンポンと自分の腿を軽く叩きながら発言している。
間違いなく分かった上で、俺の方から切り出してくるのを待っているのだろう。
「えっと、シロさん……シロさんに、膝枕をしてもらえたらなぁと思うんですが、いいでしょうか?」
「ええ、もちろん勝者は快人さんなので、その快人さんが求めるというのであれば断る理由はありませんよ」
どこか楽し気に見える様子でそう告げたシロさんに軽くため息を吐きつつも、俺は既に万全の態勢で用意されているシロさんの膝枕に寝転がった。
やはりというべきか、本当に心地良い感触なのもそうだが、風呂上がりの良い匂いがして……なんというか、想像以上に心地よかった。
「……シロさん、嬉しそうですよね」
「はい。私としては快人さんにもっと甘えてもらいたいです。なかなか、快人さんは自分からは要望を口にしませんからね」
「まぁ、シロさんにうっかり要望しちゃうと何でも叶ってしまいそうで逆にってのはありますが……けど、そうですね」
たしかにその辺り若干遠慮気味なところはあったかもしれない。シロさんは俺の願いを拒否したりはしないだろうし、その力は全能といっていいレベルであり、なんでも叶えてくれそうというのが逆にブレーキがかかる要因となっていたのかもしれない。
実際、本当に願えば叶う状態なので、願う側の俺が自制する必要があるのは間違いない。ただ、それを恋愛関係にまで適応する必要は無いだろう。
俺だって、恋人であるシロさんとイチャイチャしたいという気持ちはあるわけだし……今後はその辺りもう少し積極的になるのもいいかもしれない。
「……シロさん」
「なんでしょう?」
「せっかく膝枕してもらって寝転がったばかりですけど、そのキスがしたくなったので少し顔を上げても大丈夫ですか?」
「ふふ、はい。膝枕は逃げませんので……私も、快人さんとキスをしたい気分だったので丁度いいですね」
胸の奥から込み上げてくる愛おしさに身を任せるように、シロさんの返答を聞いてすぐに顔を上げて、こちらを覗き込むようにしていたシロさんの唇に軽く触れるようなキスをした。
美しい金色の瞳を嬉しそうに細めてこちらを見るシロさんを見て、心地よくもいいムードの中でふたりきり……一度や二度のキスで収まりそうではなく、こちらを待つようなシロさんに対して、俺は再び顔を近づけた。
マキナ「ふふふ~ん、ふふふ~ん」
???「なに作ってるんすか?」
マキナ「カルメ焼きだよ! この素朴な感じがいいよね!! アリスも食べる?」
???「……砂糖菓子っすね。砂糖はどこから?」
マキナ「そこにあったよ?」
???「……そっすか……遠慮しときます」




