シャローヴァナルとの建国記念祭夜⑨
活動報告に14巻キャララフの第四弾を掲載しました。
書籍版14巻の発売日は明日19日です! 電子書籍版も同日発売となります。
そもそもの話ではあるが、温泉でハプニングが起こるとなると大体パターンは決まっている。そして、それらは比較的湯船に浸かっている際には発生しにくいものだ。
のんびりと温泉に浸かって、景色を楽しんでいる分には変なハプニングが起こるはずがない……ごく一部、アリスのようになぜか風呂に入るとハプニングを起こすやつもいるが、それは例外と考え……ノインさんも湯船でトラブル起こっていたような?
「快人さん、神域で一緒に温泉に入った時のようにお酒でも飲みますか?」
「あ、いいですね。なんか雰囲気的にも、お盆を湯船に浮かべてお酒を飲むってのが風情があるんですよね」
シロさんが軽く指を振るとお猪口と熱燗が乗ったお盆が現れる。そもそもの始まりとかは知らないけど、温泉でこうやって酒を飲むのはなんかいい。
そんな風に考えていると、いつの間にか夕日が沈んで夜になっており、そんな中でも富士山だけは光って見えていた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
シロさんがお酌してくれた熱燗をグッと飲むと、温かさが腹の奥からじんわりと広がってくるような、なんとも言えない心地良さがあった。
「せっかくですし、シロさんも一緒に飲みませんか?」
「ふむ。では、せっかくなので……」
シロさんが自分の分のお猪口を出現させたのを確認してから、今度は俺がお酌をする。これはこれで、かなりいい雰囲気というか、贅沢で幸せなひと時という感じがする。
そんなことを考えていると、シロさんがふとなにかを思いついたような表情を浮かべた。
「せっかくですし、こうした方がもっと風情があるのでは?」
「おっ、雪ですか……温泉に雪が降る景色ってなんかいいですよね」
温泉と雪の組み合わせは本当にすごくいい。うん……今の季節とか、ハイドラ王国が気候的に雪が全然降らない場所という部分で、本来は心配になるところだがここから見える景色だけを調整しているみたいだし、その辺りは安心かな。
「……いちおう確認しておきたいんですけど、この雪って」
「大丈夫です。この温泉で降っているだけで、他からは見えませんし首都などにも降ってはいません」
「あっ、それならよかったです」
「快人さんがその辺りを気にして、楽しめなくなってしまっては本末転倒ですからね」
なるほど、素晴らしい気遣いだ。素晴らしい気遣い……できれば、今日の昼とか夕方にもその気遣いが発揮されていると、より素晴らしかったかなぁと思わなくはない。けどまぁ、過ぎたことを言っても仕方がないので、とりあえずいまは気にせず絶景を楽しめるということだけを考えておこう。
「快人さん、いい雰囲気なのでは?」
「え? そうですね?」
「恋人の肩などを抱き寄せた方が絵になるのでは? 絵になりますね。そうしましょう」
こちらの返答を一切待たないスピード展開に頭がクラクラしそうだが、とりあえずシロさんの要望としては肩を抱き寄せて欲しいみたいだ……あの、互いに裸なんですけど? この状態で?
い、いやまぁ、こうして一緒に混浴してるんだからいまさらその程度を躊躇してどうする。ここは恋人の希望を叶えてあげる場面だろう。
そう考えて意を決した俺は、シロさんの肩に手を置いてぐっと抱き寄せる。湯の中で肌と肌が触れる感触に、思わずドキッとしてしまう。だが、もちろん不快なわけで話なくむしろ恥ずかしくも幸せというか……顔は少し熱いが、幸福感は凄く大きい。
シロさんはそのまま、どこか嬉しそうにコテンと俺の肩に頭を乗せると、それ以上なにかを要求するわけでもなく穏やかに温泉を楽しんでいる感じだった。
俺も少しして気恥ずかしさも薄れてきたので、またシロさんと時々互いに酌をしたりしながら、なんとも贅沢で幸せなひと時をたっぷりと楽しんだ。
シリアス先輩「……ぐあぁぁぁ、も、もう半身が砂糖に……」
???「え? それ、徐々に砂糖化していくんすか?」




