シャローヴァナルとの建国記念祭夜④
活動報告にキャララフ公開第三弾を掲載しました。
機械製品なども含めて完全に日本風の温泉旅館。テレビも見れたりするので結構部屋の中とかでも楽しめそうではあるが、とりあえずメインの温泉に向かうことにした。
部屋に備え付けてあった浴衣とタオルをもって移動して、脱衣所にやってくる。なんだかんだで富士山を見ながら温泉に入るというのは楽しそうだし、ここまできたのならある程度は開き直ってせっかくの温泉を楽しむことにしよう。
っと、そう思ったのだが……。
「……えっと、シロさん? なんでこっちの脱衣所に? ちゃんと男女別ですよ?」
「ふむ。この温泉旅館を利用しているのは私と快人さんのみであり、他には誰も居ません。もちろん従業員も……そして、私たちはこれから一緒に温泉に入るわけです」
「……つまり?」
「脱衣所を分ける意味とは?」
「……気恥ずかしさとか、その辺じゃないですかね?」
「なるほど」
そう言って頷くシロさんだが、別に納得して移動するというわけでは無いようで、その場でじっとこちらを見ている。
脱衣所を分ける気はないという無駄に強い意志を感じる。
「単純な疑問なんですが、なぜ同じ脱衣所で着替えようと? シロさんならそれこそ着替えは一瞬で終わりますよね?」
「いい質問です。それは『ドキッ、混浴ハプニング作戦』を実行中なので、同じ脱衣所である必要があります」
おかしいな? 質問して答えが返ってきたはずなのに、さっきまでより意味が分からなくなったんだけど? いや、シロさんがなにかを狙っているのは分かるが……おそらく仕掛ける対象であろう俺に対して、大っぴらにそういう作戦を言ってもいいんだろうか? いや、聞いたのは俺だが……。
「ハプニング?」
「はい。今回の作戦は、この参考資料を基に立案しました」
「どう見ても恋愛漫画なんですけど!?」
「まずこの参考資料において、主人公とヒロインが冬の山で遭難して、偶然辿り着いた小さな宿で一泊することになります」
とりあえず、前提からしてだいぶ違うんだけどその作戦大丈夫? マジで宿という部分以外の共通点が無さそうなんだけど……。
「そしてその宿の風呂は時間制で男女が分かれていましたが、疲れていてその注意を聞き逃した主人公は女性が利用している時間帯に風呂に向かってしまいます」
「そしてヒロインの着替えの最中に遭遇したとか、そんな話ですか?」
なんか、強引なお色気シーンって感じである。たぶん都合よく他の宿泊客はいない状況なのだろうが、そうじゃなければ主人公は警察に捕まっていてもおかしくない。いや、ヒロインが着替えている所に入っていってる時点でアウトだとは思うが……うん。まぁ、その辺りはラブコメのお約束というか、ヒロインに怒られて終わる感じなのだろう。
「そして、突然のことに慌ててしまった主人公は足を滑らせてヒロインを押し倒すような形になってしまいます」
「……その、偏見かもしれないですけど……その漫画、あんまり面白そうじゃ……ああいえ、なんでもないです」
ラブコメということを考慮しても割と展開が強引な気がして、「面白くなさそう」と言いかけたが、途中でやめた。いや、まぁ、何というか実際に読んでない状態で決めつけるべきではないと、そう思ったからだ。
うん、一部ちょっと強引なシーンがあっても他が物凄く面白い可能性もあるし、よく知りもしないで悪く言うのはよくない。
「……で、つまりシロさんはなにを求めているんですか?」
「快人さんが私を押し倒してしまうハプニングです」
「ツッコミどころが多すぎて困惑してるんですが、一言だけ……事前にシチュエーションを提案した上で実行するのは、ハプニングでもなんでもないのでは?」
「……………………盲点でした。まさか『ドキッ、混浴ハプニング作戦』にそんな落とし穴があったとは……」
反応的にガチでビックリしてる感じなのだが……むしろなんで、行けると思ってた!?
「反省点は今後に生かしましょう」
「そうですね。まぁ、失敗することもありますよ」
「……」
「……えっと? シロさん? なんで、ジッとこっちを見たままなんですか?」
「『ドキッ、混浴ハプニング作戦』を実行中なので、いまは快人さんの行動待ちですね」
おかしいな? いま、話の流れでその作戦は失敗に終わったとかそんな感じじゃなかったかな? え? まさかこれ、ハプニングでもなんでもないけど、それはそれとして押し倒すような形になるシチュエーションは実行しろ的なやつなのでは?
「その通りです。というわけでよろしくお願いします」
「……」
俺がなんとも言えない表情で天を仰いだのは言うまでもないことだろう。
シリアス先輩「この神、メンタルが猛将過ぎない? 後退の二文字が消え去ってる……」




