シャローヴァナルとの建国記念祭夜③
個人的に温泉というものは好きだ。やはり日本人だからだろうか? 特に今日はなんだかんだで建国記念祭で結構歩いたし、程よく疲労もあるので温泉に入ると気持ちいいだろう。
まぁ、その前に一休みしながら景色と茶を楽しむのも旅の醍醐味……いや、別に旅はしてないな。旅行に来たわけじゃなくて、建国記念祭に来たんだ。なんかあまりにも旅館が本格的なので、つい温泉旅行にでも着たような気分になってしまった。
「そういえば、なんだかんだでシロさんとは結構温泉に行ってますよね?」
「最初に快人さんが神界に遊びに来た際にも温泉でしたね」
「あの時の旅館もかなり凄かったですけど、よく考えれば温泉入っただけで旅館の方にはいきませんでしたね」
「まぁ、あの時の目的はドキッ、湯煙混浴作戦だったので……」
「そんな作戦名が!?」
俺が淹れたお茶を飲みながら話すシロさんは、パッと見は無表情ではあるがかなり上機嫌なのが伝わってきていた。というか、今日は終始口角が少し上がっており、一日を通して上機嫌だった印象であり、シロさんが楽しんでくれたようでよかった。
いや、その分テンション上がったことによりいろいろとあったのだが、周りのフォローのおかげでなんとなか……いや、まぁ、まだ富士山の問題とかあるが……そこはいまはクロに任せて考えないことにしよう。
例えば俺がエデンさんを説得した方がいい様な感じになれば、クロから声がかかるだろうし、そうなった時にはできるだけ頑張ろう。今回に限って言えば、エデンさんの動機がいまいち分からないのだが……シロさんに協力することで、なんらかの見返りを得ようとしているなら、むしろそっちの方が不安ではある。
「いえ、むしろ逆です」
「逆? というと……」
「地球神が契約違反ギリギリ……ほぼグレーのような干渉をコッソリ行っていたので、それを不問にする代わりに協力させました」
「ああ、なるほど、エデンさんがやらかした側だったんですね」
なんとなくではあるが、そのほぼグレーの干渉は俺絡みではないかと思う。エデンさんがその辺りに踏み込むとしたら、まず俺が関わる内容だろう。ただ心当たりは……あり過ぎてどれか分からない。なにせ、高頻度で暴走する方なので、そのどれかが契約違反ギリギリだったという可能性が否定できない。
「しかし、流石地球神が作っただけあって本格的ですね。そして、なかなか興味深いです」
「そういえば、なんかあまりにも自然で違和感を覚えてませんでしたけど……機械製品がありますね」
先ほどのポットもそうだが、部屋にはテレビなどもある。魔法具ではなく機械製品というところが、なんとも日本の温泉旅館に来ている感じもある。というか、テレビは映像が映るのか? 映るとしたら、どこのテレビが?
そして、シロさんにとっては機械製品は珍しいようで、なにやら興味深そうな様子だ。
「快人さんが先ほど使ったポットもそうですが、そちらのテレビも知識としては知っていても見るのは初めてです」
「魔法具じゃなくて、機械製品にしてるのはなんででしょうね? 間違いなくワザとだとは思うんですが……」
「恐らく、私が本格的な快人さんの世界の温泉旅館を要求したので、魔法具ではなく機械製品にしたのだと思います。実際私にしてみれば新鮮で興味深いですしね」
「なるほど……けどこれ、テレビって映るんですかね? ちょっとつけてみますか……」
少し休んだら温泉に行くつもりなので仮に映ってもゆっくり見る気は無いが、それはそれとして興味はある。普通に考えれば異世界であるここでテレビを付けたところで何も映らないが……なんか普通にニュース番組みたいなのが映し出された。
これ、どういう原理かは分からないけど日本のテレビ番組を受信してるっぽい感じがする。
しかし、ふむ……この感じだと、他にも旅館には機械製品があるのだろうか? だとしたら、シロさんにとっても新鮮で楽しいだろうし、結構いいのかもしれない。
シリアス先輩「ひとつ疑問なんだけど、快人たちが使ったあとの旅館ってどうなるの? 元の次元に戻る際に消えるの?」
マキナ「それでもいいけど、せっかく作ったしちょっともったいないよね。あ、それなら、いろいろ頑張ってたみたいだし、ご褒美として『リリアにプレゼント』しようかな。機械製品だけ魔法具に変更して渡せば大丈夫だよね。一緒に富士山もあげよう」
シリアス先輩「お前、なんかリリアに恨みでもあんの?」
マキナ「……うん?」
 




