表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1732/2408

シャローヴァナルとの建国記念祭夜②



 過去に富士山を見たことがあると言われば、ある様なない様な、なんとも微妙な返答になる気がする。直接足を運んで見たりした記憶は無いのだが、俺が住んでいた場所と母さんの実家の位置を考えると、帰郷に付いて行く際に新幹線の中から見ていても不思議ではない。

 とはいえこれといって印象には残っていないので、それほど興味を持っていたわけではないだろう。俺が富士山を見たのは、主にテレビ番組や雑誌の写真となる。


 そして何の因果か、こうして異世界に来てから富士山を見ることになろうとは……テレビや写真といった媒体を介さずに見ているからだろうか、心なしか富士山は輝いているように……いや、というか……光ってるよね? あの富士山……だって、全体像が見えるってことはここから結構距離がある場所に存在してるはずで、その上完全に夜というシチュエーションなのにハッキリと見えるのは明らかに不自然である。


「……おや?」

「うん? どうしました?」


 すると俺の横でシロさんがなにやら首を傾げるのが見えた。富士山が光っているのが不思議……というわけではないだろう。コレは明らかに夜でも見えるように意図して作られているものだし、どう考えてもシロさんの要望が入っているはずだ。


「クロが来ているようですね。いま、地球神と一緒にいて……ふむ。あの富士山を私たち以外から見えなくしていますね」

「それ、すごく大事なやつですね」


 そのフォローはとても重要だ。だっていきなり光る富士山が出現したりしたら、ハイドラ王国は大混乱だろう。いや、シロさんの口振り的にクロはあとから来たっぽいので、多少は見られているかもしれないがラグナさんやクロノアさんのことを思えば、この段階で見えなくしたのは対応……というか誤魔化しやすいと思う。

 そしてやはり予想通り、富士山を用意したのはエデンさんだったみたいだ。エデンさんがこの手のことでシロさんに協力するということは、なんらかの契約とかを結んでいるのだろうか?


「快人さん、富士山は温泉からも見えるので宿の中に入りましょう」

「あ、そうですね。それにしても大きな宿……温泉旅館ですね。温泉街にあっても不思議じゃないような、かなり日本的なデザインですね」


 例えばブロッサムさんの家のように、どこかズレた感じの日本風ではなくしっかりとした老舗の温泉旅館という雰囲気の建物だった。

 この辺りは流石エデンさんというべきか、完璧な仕事……まぁ、それはともかくふたりで利用するにはあまりにも巨大すぎる気もするが……。


 中に入って、シロさんの案内で部屋に移動すると、そこは畳の敷かれた純和風の部屋であり、窓からは大きく富士山が見えるかなりいい部屋だった。


「おぉ、凄い。かなりいい部屋ですね。景色もいいですし……」


 座椅子とかもあって、本当に温泉旅行に着た気分だ。日本茶とかも置いてあるし、いいなこれ……こういう雰囲気はかなり好みだ。


「シロさん、温泉に行く前にお茶でも飲んで休憩しませんか? なんだかんだで結構歩きましたし」

「はい。では、お茶を用意……」

「あっ、せっかく一式道具があるので、わざわざ創造しなくても俺が淹れますよ」

「ふむ……では、お願いします」


 電子ポットとかもあるし、淹れるのは簡単……うん? なんで電子ポットがあるんだ? 電気はいったいどこから……まぁ、深く考えないでおこう。エデンさんが用意したなら、その辺はなんとでもなるだろいう。









 快人とシャローヴァナルが温泉宿の部屋に到着したころ、宿から離れた富士山の麓では、クロムエイナが呆れた様子でマキナに話しかけていた。


「はぁ、もう……こんな大きな山がいきなり現れたら大騒ぎになるし、認識阻害とか周辺に人が近づけなくなるような配慮をね……」

「なんで私が肉塊に配慮する必要があるの?」

「……本当に来てよかったよ」

「別にこの次元は一種の並行世界のようなものでしょ? 別にどうなろうが本来の次元には関係ないし、いいんじゃないかな?」

「そういう問題じゃないからね……やれやれ、とりあえずボクはラグナちゃんとかに報告してくるから変なことしないでよ?」

「失敬な。私がいままでこの世界で変なことをしたことなんて無いでしょ?」

「してるから言ってるんだよ!?」


 呆れた様子で大きくため息を吐いたあと、クロムエイナは今回の報告を行うために再び王城へと向かった。とりあえず例によってマキナの思考は頭を抱えるようなものであり、少しでも目を離すのは心配だとすら感じていた。


「……あ~クロさん。大丈夫っす。このアホはとりあえず私が見とくんで」

「うん。よろしくね、シャルティア。ボクはとりあえず王城で事後処理を手伝ってくるよ」

「おかしいなぁ、私どっちかっていうと被害者のは――いたたた!? ちょっ、ちょっと、アリス? なんで耳引っ張るの!?」




シリアス先輩「クロとアリスが来てるってことは、対マキナに関しては十分な布陣……うん。マキナに関しては……もんだいはもうひとり、無表情だけどはしゃぎ過ぎてテンション振り切れてる奴がいることぐらいかなぁ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です!連続で読みました!遂に富士山立ってしまう中騒ぎはクロさんとアリスさんのお陰で騒ぎは大丈夫だな マキナさんも一応はシロさんの影響にあった方だから何とも言えないな 次も楽しみ…
[良い点] お茶をちゃんと自分で淹れるカイちゃん [一言] 関東平野に住んでれば基本どこからでも富士山って見えるんだよね… 冬の良く晴れた日に見晴らしのいいところに居れば大抵目に入るんだ クロが来るよ…
[一言] マキナさんのキャラってクロとか知ってたっけ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ