シャローヴァナルとの建国記念祭夕方⑩
美しい夕日に照らされた時計塔の展望フロアは、なんとも言えないいい雰囲気だ。ラグナさんの胃の状況とか、夕日がいつまで続くかとかは気にはなるが……とりあえずいまは、シロさんの要望通りふたりで楽しく過ごすことを優先しよう。
「えっと、このベンチ……というか、ソファーに並んで座ればいいんですかね?」
「ふむ……私はイチャラブ感のある姿勢を望みます」
「い、イチャラブ感ある姿勢……とは?」
このムードの中で並んで座るだけでも結構カップル感はあると思うのだが、シロさん的にはそれでは足りないらしい。
「この姿勢を希望します」
「……!?」
シロさんが呟くように言った直後、俺の頭にシロさんが望む姿勢が鮮明に浮かび上がる。俺が先にソファーに座り、シロさんが俺の膝の上に横抱きにされるような形で座る。
な、なんか、洋画とかで見たことがあるポーズだけど……また結構難易度が高いのを要求してきたな。いや、イメージとしては分かるんだ。
要するにお姫様抱っこをした状態で座る様な形であり、シロさんが俺の首の後ろに手を回してもたれ掛かれば、確かにイチャラブ感が凄い姿勢といえるだろう。
仮にこれがオズマさんのような高身長でカッコいい人がやったら様になるんだろうが、俺がやったら結構滑稽じゃないかな? ま、まぁ、他に一目があるわけでもないし……。
「とりあえず、シロさんの希望は分かったんですが……これ、どうやってこの姿勢になるんですかね? 俺が座ってる上にシロさんが座るのか、お姫様抱っこした状態でそのまま座るのか……」
「ふむ、なるほど……正式な手順は知りませんが、私としてはお姫様抱っこもしてもらえたら二度美味しいので、そちらでいきましょう」
「わ、分かりました。で、では失礼して……」
シロさんをお姫様抱っこするというのは、前に遊園地のアトラクションで経験済みなので少し気は楽だ。とりあえずシロさんの要望通りお姫様抱っこをして、そこから慎重に腰を下ろす。
結構バランスがとり辛くて難しかったが、なんとかソファーに座りシロさんが希望した姿勢になるが……こ、これは結構ヤバいかも……。
まず、普通にお姫様抱っこしているより密着の度合いが高い。シロさんが膝の上に座っている形なのでそれは当然でもあるが……。
それよりなにより、相変わらずというべきかシロさんのチートボディの破壊力である。本当にどこもかしこも柔らかくて、指が吸い付くように触り心地もよく、例によっていい匂いも漂ってくる。
シロさんはシロさんでこのシチュエーションを楽しんでいるのか、夕日はそっちのけて俺の首元に顔を擦り付けるようにして甘えるような仕草をしてくるので、俺の心臓は高鳴りっぱなしである。
「……えっと、あの、シロさん? 夕日、見ないんですか?」
「夕日を見るのもいいですが、いまは快人さんを見ていたい気分ですし、快人さんに見てもらいたい気分ですね」
「うっ、またそういうことをサラッと……」
「快人さん、ふたりっきりですよ? いい雰囲気ですよ? そして、私の唇が空いてますよ?」
隠すことなく真っ直ぐに好意的なアプローチをしてくるシロさんの言葉に、思わず顔が熱くなる。いや、シロさんは本当に純粋かつ真っ直ぐに愛情を伝えてくるので、結構気恥ずかしい……いや、もちろん嬉しいのだが。
わざわざ夕日の状態で止めておいたというのに、夕日そっちのけなのはいかがなものかと、頭の中の冷静な部分ではそう考えつつも……なんだかんだで、俺の視線はこちらを見つめてくるシロさんの顔に釘付けだし、キスをしてほしいという要望に抗う意思も無かった。
夕日に照らされて少し赤みがかるシロさんの顔は、また違った魅力があって……軽く苦笑したあとで、引き寄せられるように顔を近づけた。
シリアス先輩「本当にコイツら終始いちゃいちゃしてやがるな!! アリスの時はもうちょっともったいぶってただろ!? くっ、いまので砂糖メーターがかなり溜まってしまった……このままではまた砂糖化してしまう」
???「いや、だから、唐突に謎の設定を出さないで貰えます?」




