シャローヴァナルとの建国記念祭夕方⑨
今日はちょっと時間が無くて短めです
ミュージックはまだもうちょっと続きそうなので名残惜しいが、外が夕日で止まっているとなっては早めに時計塔に向かったほうが良さそうだ。
なので、すぐにでもテントから出て時計塔に向かいたいのだが……座席がほぼ埋まっているこの状態で、席を立って外に出るのはかなり難しい。
「ふむ……快人さんは早めに時計塔に向かいたいと?」
「あ、はい」
「一刻も早く私とふたりきりでイチャイチャしたいと?」
「……そ、そうですね」
「なるほど、それなら仕方がありません。移動しましょうか」
俺が頷いたのを確認したシロさんは軽く手を振る。するといつの間にか景色が切り替わっており、俺たちは時計塔の前に居た。転移で移動したということだろう……椅子も無くなってるのに普通に座れているのは、なんか魔法的なパワーかな? とりあえず立ち上がろう。
「シャローヴァナル様、こちらへ」
「あ、クロノアさん……その、大丈夫ですか?」
「ああ、案ずるな。ハイドラ国王が機転を利かせたおかげで混乱はほぼ無い。ミヤマは気にせず、シャローヴァナル様との時間を楽しんでくれ」
「……分かりました」
大丈夫ですかの一言で、それがなにを指すことかを察したクロノアさんが聞きたかったことを説明してくれた。どうやらラグナさんが上手くフォローしてくれたおかげで、国民に混乱は起きていないようだ。その後の口ぶりから察する限り、即座に夕日を沈ませないと不味いとかでもないみたいなので、少しだけ気が楽になった。
「というか、近くに来てみると結構大きいですね……っと、それじゃあ入りましょうか」
「はい」
今回はあくまで特別に開いてもらっており、建国記念祭中は入場不可ではあるのだが、普段はカップル向けのスポットとして紹介されていたりする場所なので、観光向きの造りになっている。
中にはある階段も緩やかで登りやすく、手すりなどもしっかりついているので落下の心配もない。
しばらく階段を上ると、広めの展望フロアに辿り着いた。そこには大きなソファーっぽい椅子が用意されており、その先に大きな窓があって夕日と海がバッチリ見えるようになっていた。
「おぉ、これはまた絶景ですね。丁度……いや、丁度というかそういう風に調整してるんですが、夕日が海に反射して綺麗ですね」
「カップルが見るのにふさわしい景色……ですか?」
「まぁ、ムードはバッチリですよね」
そう、本当に絶景なのでデートスポットとしては最高である。あのソファーに座って、シロさんと一緒に夕日に染まる景色を眺めるというのは、本当にいい雰囲気で素敵そうだ。
ただ、少し気になるのは……これ、夕日っていつ動くんだろう? 夜景も見るとか言ってたけど……シロさんがその気になったら即座に夜になるとか、そんなことは……ないと……いいなぁ。
シリアス先輩「……楽観視フラグの着地点が見えた気がした」




