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シャローヴァナルとの建国記念祭夕方⑦



 入場券を購入して中に入り席に座る。ぎっりしとまでは言わないが、殆どの席が埋まっている。射的の時もそうだったが、空間魔法で拡張しているのか外から見るより中は遥かに広い。それこそ大き目の劇場ぐらいの広さはありそうだ。

 そして、席数もかなり多いのにこれだけ埋まっているということは、森の英雄を演じる劇団はなかなかの人気劇団なのだろう。

 ちなみに、なんかやけによく見えそうな非常にいい席が空いているのは、つまりは神族のサポートの賜物だろう。


 席に座ってほどなくすると、照明が暗くなりステージ上のみが照らされて演劇がスタートした。


 最初は正直若干不安だった。元ネタが俺であるというのが分かっていながら、果たして楽しむことができるのだろうかと……だがそれはまったくの杞憂だったみたいで、演劇が始まってしまえばその見事な演技にすぐに熱中した。

 というか、元々の本自体かなりあちこち大袈裟に着色されたものであり、そこからさらに変化させるともうほとんど別物といっていい。


 普通に異世界から訪れた主人公の冒険譚というか英雄譚のような話であり、普通に面白く見ることができた。まぁ、途中明らかにブラックベアーらしき敵からエルフ族の街を守るために戦ったり、森を統べる王の元を訪れて破壊されたエルフの街の救済を願ったりという部分は、元ネタが分かるのでなんというかムズムズするが……。


 とりあえず、演劇は本当に見事の一言で魔法を用いた様々な演出に迫真の演技と、時間を忘れて熱中することができた。

 そしてしばらくすると、舞台の照明が消えこれで終わりかと思ったのだが……少しすると、軽快なミュージックが聞こえてきて、ほぼ同時に再びステージ上に明かりが灯る。


「おぉ、まだ続くんですね!」


 出てきたのは先ほどの劇団の人たちのようだったので、演劇はまだ続いているようだ。今度はガラッと雰囲気を変えてミュージカルであり、楽し気な踊りと共に進行していく。

 内容は先ほどの森の英雄をミュージカル風にアレンジしたものみたいで、先ほどとはまた違った感じの雰囲気が非常に面白い。戦いのシーンなどでも歌ったり踊ったりしており、軽快ながらも緊張感があって非常に面白い。


 そして再び時間を忘れて、夢中で楽し……楽しんで……い、いや? さすがに長くないかな? これ本当に1時間? なんか、もっとずっと時間が経過してるような気がするんだが、客席は暗くて時計を見えないので時間がよく分からない。


「時間ですか? 入場してもうすぐ『2時間』経ちますね。ちなみに、いま私と快人さんの会話は周囲に聞こえないようにしてあるので、普通に喋って大丈夫ですよ」

「…………え? な、なんで? この演目って、外の看板には1時間って書いてあったような」

「知りたいですか?」

「し、知りたいです」

「私は、今回のデートに当たって演劇なども調べておきましたので知っています。この劇団は、演劇を行った後に同じ演劇をミュージカルとして再度演じることで有名です。一番初めの公演でサプライズで行ったことで人気が爆発するきっかけになり、その後は定番となりましたが、一番初めの公演と同じようにミュージカルについては演目に書かずに行われるそうです。なのでほら、この劇団の後の劇団の演目までかなり長く時間がとられています」


 そ、そうだったのか……い、いや~シロさんは流石だなぁ。勉強もしてて偉いなぁ……あ、あはは……出来れば、演劇が始まる前にその知識は教えてもらいたかったなぁ……どうしよ。

 1時間であれば、大丈夫だった。ここから時計塔までは10分ぐらいだし、夕暮れには十分間に合うだろう。だが、2時間経過しているとなると話は大きく変わってくる。


 夕暮れがどれぐらい続くか、正確な時間は知らないがそれほど長い時間でないというのは分かる。となるともう最悪日が沈んでしまっている可能性も十分にある。


「……シ、シロさん? その、夜景も綺麗だと思うんですよ。カップルで見るのにふさわしいと……な、なにも夕日に拘らなくてもいいと思いますし、俺が気を抜いてたせいで時間が過ぎちゃったので申し訳ない気持ちはありますが……出来ればその、時間を巻き戻したりとかは無しにしませんか?」

「大丈夫です。時間を巻き戻したりはしません」


 さすがに沈んだ太陽が再び登って来たりすると、ラグナさんとかクロノアさんとかの胃が心配である。なので、なんとかシロさんに夜景で我慢してもらえないかと伝えてみれば思いのほかあっさりと了承してくれた。

 よ、よかった。てっきり雑誌のシチュエーションに拘ってくるかと思ってたが、これなら……。


「こんなこともあろうかと、『丁度いい夕日の状態で止めてあります』ので、時間を巻き戻さなくても問題なく最高の夕日を見れますよ」

「……」


 いきなりドヤ顔でえげつないパワーワードをぶっこんでくるのはやめて欲しい。思考が追い付かないから……。




シリアス先輩「夕日で止めておいたというパワーワード、これ、神族たちは止めようにもシロの邪魔ができないから死んだ魚の目で夕日見つめてそう」

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― 新着の感想 ―
[一言] 巻き戻した方がマシだった
[一言] 神の御業で、胃痛戦士達の胃に大ダメージを与える以上の効果はないと思うけど、地球の自転公転にブレーキかけてると考えたら、他の惑星に対する影響凄そう。
[一言] 更新お疲れ様です!4話続けて読みました!シロさんと快人さんのデートの最中で温泉のことでシロさんが尋ねて富士山のことを話すとマキナさんに追加の話をするw マキナさんも色々としてたから言えない状…
感想一覧
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