シャローヴァナルとの建国記念祭夕方①
ライブを見たあとも、シロさんとのデートは続く。午後は主にイベント系を中心に回ったが、ライブ以外にも演劇だったりといろいろなものがあってかなり楽しめた。
流行の最先端を行くハイドラというだけあって、まだ流通が少ないであろう映像保存の魔法具などを用いたイベントもあって結構面白かった。
まだまだ、記録した花火の様子を流したりとかそんな程度ではあったが、今後映画とかもできてくるかもしれないと思うとかなり楽しみである。
「そういえば、夕方に時計塔に行くって話ですけど、時間とかは決まってるんですかね?」
「特にないと思います。快人さんのいきたいタイミングでいきましょう。その瞬間が一番夕日が綺麗な時間に『なります』」
「そ、そうですか、それなら安心ですね」
普通ならなにを言ってるんだという発言ではあるが、実際に俺が行ったタイミングで綺麗な夕日になるのは間違いない。なにせ、世界の神がそう言ってるのだから、重みが違う。
……うん。気を付けて、ちゃんと実際に夕日が見える時間に行こう。じゃないと、いきなり時間が巻き戻ったり進んだりってことになりかねないので、それこそラグナさんとかクロノアさんの胃が死んでしまう。
「なんなら先に夕食を済ませてしまうのもいいかもですが、流石に夕日前だと早すぎますかね」
「そうですね。温泉旅館についてから食べるというのも手ですよ」
「ああ、そうですね。ゆっくり食事も……うん?」
おかしいな、気のせいかな? いま物凄くナチュラルに温泉旅館とかって言葉が出てきたんだけど? そんな話どこかにあっただろうか? 全然記憶にないんだけど!?
「以前に、イチャラブ温泉旅行をしようという話になりました」
「なりましたね。ええ、それは覚えてますけど……いつそれが建国記念祭のデートと合体したんですか?」
「いまですね」
凄い、流石シロさん、全然動じず真顔で「いま思いついた」と言ってきやがった。あまりにも潔すぎて思わず頷きそうになってしまったが、そこはグッと堪える。
なにせ、あまりに突発的なので旅行の準備なんて……いや、マジックボックスの中身でどうとでもなるが・……不味いな、断る正当な理由がない。強いて言うなら建国記念祭を2周したあとに、直行で旅行は大変そうだというぐらいだ。
「……シロさん、温泉旅行については改めて別で行きませんか?」
「分かりました。それで構いませんよ」
思った以上にシロさんは俺の提案にあっさりと頷いてくれた。どうやら本当に思い付きで言っていただけみたいで、それほど深い拘りは無かったようだ。
とりあえず、祭り二周から旅行という強行軍は阻止できたので、ひとまずは安心……。
「では、普通に温泉旅館に一泊するだけにしましょう」
「…………う、うん?」
あれ? おかしいな? それ状況ほぼ変わってなくない? それって要するに、旅行は今度にするけど、それはそれとして今日一泊するのは確定みたいな感じでは?
「その通りです」
「……えと、これもう確定のやつですか?」
「アリスとは一泊していました」
「うぐっ……そ、そうですね」
それを言われてしまうとたしかに……アリスとは建国記念祭に来て、一泊して帰った。ならシロさんとの建国記念祭でのデートも、同様に一泊したとしてもおかしくはない。
そもそも別にシロさんと一泊するのが嫌なわけでもないし、ちょっと疲れてるから敬遠気味だっただけ……よくよく考えてみれば、むしろ疲れてるからこそ温泉とかよさそうだ。
あれ? これ、普通にいいかもしれない。温泉入りたいし……。
「あ、えっと、じゃあ、一泊しましょうか」
「はい」
ただ強いて不安点を挙げるならひとつ……温泉旅館……ってどこのやつ?
シリアス先輩「……は? おい、おいおい……待て!? なに温泉一泊決めようとしてんの!! それ、快人が行くなら混浴とか確定であるやつじゃん!!」




